トワイライトの怠惰な図書室

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ファイアーエムブレム マイユニ×カタリナ小説。

望まぬ戦いを強いられるものと、それを強要する者。
影に寄り添う、もう一つの影 第八章

 ウェルナーと想いが通じ合ったあの日から、一週間が過ぎ去った。
 
「ふぅ…」
 私は日々の業務を終え、ウェルナーと二人で部屋に戻ってきて直ぐ、手近のソファーに腰掛けると思わずため息が出た。さすがにこの一週間は軍議と軍務で目が回る忙しさだったが、明日はいよいよグラ城へ向けて出撃する。
「お疲れ、カタリナ」
 そういって、ウェルナーはお茶の入ったカップを手渡してくれた。
「ありがとうございます」
 温かいお茶を一口飲むと、なんだか心が解れていく気がした。
「いよいよ明日か…」
 そういって、ウェルナーも一口お茶を飲んだ。私は無言でその言葉に頷いた。
「先ほど確認しましたけど、第七小隊の補給は滞りなく終わっています。あとは明日の出撃式を終え、グラに向けて進軍ですね」
「ああ」
「すでにこちらの動きは相手も先刻承知でしょう。あとはアカネイアから援軍が来てない事を祈りだけですね」
 そういって、カップの中身を飲み干した。ウェルナーも無言で頷き、お茶を飲み干した。
「明日も早い、もう休もう」
「はい」
 ウェルナーは手近の机に鎧や剣を置くと、そのまま備え付けのベットに潜り込んだ。私も休もうと同じく手近の机に荷物を置くと、ふと小さなお願いが頭に浮かんだ。そう、明日から出撃すれば、次無事に戻ってこれるかどうか解らない。彼と想いが通じ合ったのなら、少しぐらいわがままを言っても、彼は聞いてくれると思う。誰よりも優しい彼ならば。
「あの… ウェルナー」
 私の声に、彼は振り返った。
「ん?」
「その… 一つ、お願いを聞いてもらえないでしょうか?」
「珍しいな。カタリナがお願いなんて…」
 彼は少しだけ驚いた様子で、ベットから起き上がった。私は顔を真っ赤にしながらも、勇気を出してお願いを口にした。
「い、一緒に寝ても…いいですか?」
「え…」
 彼は驚いた様に目を見開いていた。そんな彼の顔を見て、私は慌てて手を振った。
「い、いえ!何でもないです、忘れて下さい!」
 慌てふためく私を見た彼は、私の一番好きな笑顔を浮かべていた。そして、右手を私に差し出した。
「おいで、カタリナ」
 私は彼の手を握ると、そのまま一緒のベットに入った。横になれば、直ぐそこに彼のたくましい胸があった。
「おやすみ、カタリナ」
 彼は私を抱きしめると、その一言と同時に眠りに入った。私も彼の胸に手を添えると、そのまま眠りに入っていった。組織にいた時では絶対に感じる事の出来なかった人の温もり。それも愛する人の温もりに包まれる幸せは、何よりも代え難い安らぎだった

 翌朝。私は窓から差し込む光に目を開くと、そこには未だ眠りについている彼の横顔があった。海の色を模したと言われる彼の髪をそっと撫でると、彼の目もうっすらと開いた。
「ん…」
「あ、起こしてしまいましたか?」
「いや。おはよう、カタリナ」
「おはようございます、ウェルナー」
 そういって、私たちは一つほほえむ。
「さ、準備をして朝食を済ませよう。いよいよグラに、パレスに向けて出発だ」
「はい」
 私はいつもの服装ではなく、賢者の服に着替え、胸に賢者の称号を身につけた。全身が引き締まる思いを感じながら、彼に振り向くと、彼もまたいつもの服装ではなく、勇者の鎧を身につけていた。胸には私と同じ、勇者の称号が輝いていた。
「いこう、カタリナ」
「はい!」
 そういって、私たちはマルス様の部屋に向かった。部屋を出ると、廊下のあちこちから喧噪が響いていた。恐らく、各小隊が慌ただしく準備をしているのだろう。
「マルス様。ウェルナー及びカタリナ参りました」
「どうぞ」
 部屋に入ると、既に準備を済ませたマルス様とシーダ様、そしてジェイガン様が揃っていた。
「いよいよだね、ウェルナー」
「はっ!」
「この戦いは絶対に負けられない。ウェルナー、そしてカタリナ。君たちの力を貸して欲しい」
 マルス様はそういうと、ウェルナーに手を差し出してきた。ウェルナーはやや遠慮しがちにマルス様と握手を交わした。
「かしこまりました、マルス様!」
「宜しくね、カタリナ」
 シーダ様もマルス様と同じく手を差し出してきた。私も遠慮しがちにシーダ様と握手を交わした。
「マルス様、シーダ様は私たちがお守りします。どうか、ご安心下さい」
「ありがとう。ウェルナーと貴女が側にいてくれるなら、とても安心だわ」
「さあ、行こう!」
 マルス様のその声に全員頷くと、マルス様の部屋を後にした。そして出陣式が用意されている中庭を見渡せるバルコニーにマルス様とシーダ様が姿を現すと、中庭にいる兵士達から歓声が上がった。
『おお、マルス様ー! シーダ様ー!』
「みんな!これから僕たちはパレスに向けて進軍する。みんなも知っての通り、ハーディン皇帝の圧制は止まるところを知らず、アリティア以外の国にもその矛先を向けてきた。アカネイアの一部のみが特権をむさぼり、それ以外のものは全て搾取され、刃向かうものは容赦なく切り捨てられていく。僕は、そんな人たちのために戦いたい!どうか、みんなの力を貸して欲しい!」
『おおーー!!』
 マルス様の演説も終わり、いよいよ出陣となった。先発は第一小隊から第三小隊、中央はマルス様と第七小隊。後方は第四小隊から第六小隊と輸送隊という形となった。どの兵士達も一様に興奮冷めやらぬといった感じで、士気はかなり高かった。

 一方その頃、グラ城玉座の間。
「シーマ王女。アリティア軍が進軍を開始したそうだ」
「そうか… もはやここまでだな」
 玉座に座る女性、シーマ王女はその報告に落胆を隠せなかった。報告をしてきた傭兵、サムソンはその言葉に何も返さなかった。
「サムソン、お前はもう行ってくれ。私はグラの最後を見届けなくてはならぬ」
「シーマ王女、もういいのではないか? お前はハーディンに騙されたのだろう」
「確かにハーディンのグラの民を思う言葉に感じ入って、ここに来た事は事実だ。しかし、あの男はグラを使うだけ使った後、何も残さず見捨てていった。しかし、私は私のために立ち上がってくれた彼らを見捨てる事は出来ぬ!」
「マルス王子は義に厚いと聞く。無用な殺生はすまい。話をしてはどうだ?」
「そんな事、出来るわけありませんなぁ、シーマ殿?」
 突如後方からの声に振り返ると、そこには無駄に肥え太った男が下卑た笑みを浮かべてこちらに歩いてきた。
「もしグラに反意有れば、皇帝陛下は即座に討伐軍を向かわせるでしょう。そうなれば、貴女を慕う彼らはどうなりますかねぇ…ひへへへへ」
「貴様っ!」
 サムソンは剣を抜こうとするが、シーマ王女は手をかざしてそれを制止する。
「小隊長殿。我らは最後までグラの誇りをもって戦う。裏切りなど、有るはずがない!」
「ならば結構。アカネイアのために、貴公達の働きを期待しますぞ。ハハハハハハハ」
 そういい残すと、その男は部屋を後にした。
「くっ… あんな男のいいなりにならなければならぬとは」
 シーマ王女は吐き捨てるようにそういうと、玉座の肘掛けに拳をたたきつけた。

 小隊長と言われていた男は部屋に戻ると、戸棚からワインボトルを取り出しグラスにそそぎ、中身を一気にあおった。
「ふん、グラもこれで終わりだな。さっさとパレスに引き上げるとするか… グラの兵士どもが死にものぐるいで抑えている間になぁ。ワハハハハ!」
 部屋に高笑いが響き渡るなか、扉をノックする音が響いた。
「入れ」
「隊長殿、お呼びでしょうか?」
 一人の兵士が現れると、小隊長は再びグラスに注がれた中身をあおりながら、言葉をつなげる。
「うむ。近日アリティア軍がグラに攻め入ってくる事は知っているな? やつらが攻めてきたら、我らは撤退するぞ」
「は。しかし、宜しいのですか?」
 兵士の疑問の声に、小隊長はあのときと同じ下卑た笑みを浮かべていた。
「なぜ我らアカネイアが、グラごときの為に戦わねばならぬ? 彼らが必死に戦ってくれるだろうさ。なあに、陛下にはグラが裏切ったと報告すれば、我らがパレスに戻ったところで、おとがめなどなかろう? うはははは!」
「畏まりました。小隊の者たちにはその様に伝えます」
 兵士はそう言い残すと、そのまま部屋を後にした。

 望まぬ戦いを強要されるグラの民と、グラから搾取するだけ搾取して逃げおおせようとするアカネイアの者たち。後生の歴史書には「グラの落日」としるされる戦いの火ぶたは、もうすぐ切られる事となる。
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2011.01.10 17:35 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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