トワイライトの怠惰な図書室

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ファイアーエムブレム マイユニ×カタリナSS。

後の歴史書から名を消した影の英雄と、その英雄に付き従った影の賢者。
影に寄り添う、もう一つの影 第五章

 影の勇者の隣にあってこそ、影の賢者は光り輝く。

 マルス様の執務室から少し離れた各小隊の詰め所。第七小隊はウェルナーが近衛騎士に就任した事を受け、主にマルス王子や婚約者であるシーダ王女の警護を主とし、セシルはその中でもシーダ王女の専属近衛として彼女のそば近くに仕えていた。
「今、戻ったぞ」
 第七小隊の詰め所となっている部屋の扉を開けると、そこにはルーク、ロディ、ライアンの姿があった。セシルは不在であったが、おそらくシーダ王女の部屋に行っているのだろう。
「おう、お疲れ」
 ルークが気軽に声をかけてくる中、私はウェルナーの後に続いて入室した。そして私の姿を見た途端、驚きの余り目を見開いていた。
「皆さん…」
「カタリナ、どうしてお前が?」
 無理もない。本来なら今頃地下牢に閉じ込められ、処刑の日を待つ身であるはずの私がここに居るのだから。
「そのことでみんなに話がある。ライアン、悪いけどセシルを呼んできてくれないか?」
「は、はい」
 ライアンは慌てて部屋を飛び出した。そして数分後、セシルとなぜかシーダ王女の姿があった。
「シーダ様、なぜこちらへ?」
「あたしはお部屋でお待ち頂くようにお話ししたんだけど、どうしてもと言われて…」
 セシルがばつの悪い顔でそういうと、シーダ王女は私の前に現れた。
「カタリナ。マルス様から概ね話は聞いたわ。よく戻ってきてくれたわね」
「シーダ様…」
 そういって私の手を取ってくれたシーダ様の優しさに、私は瞳から涙が溢れてきた。
「申し訳ありません。今まで私はマルス様を始め、皆さんに酷い事をしてきたのに…」
「もういいのよ。マルス様やウェルナーが貴女を許すっていったのなら、それでいいの」
「はい、シーダ様」
「おいウェルナー、どういう事なんだ?」
 今ひとつ話しについて行けないルークの声が上がると、ロディやセシルも説明を促すような視線をウェルナーに向けた。
「ああ、今から説明する。今日からカタリナは俺の監視の下、マルス様の警護や第七小隊の軍務を担当して貰う事になった」
「ええっ!ほんとうなのウェルナー!」
 セシルの驚く声が響き渡る。ウェルナーはゆっくりと首を縦に振った。
「この前の戦いでも見たと思うけど、カタリナは優秀な魔導師だし、軍務をはじめとした様々な事に明るい。俺は魔道についてはまったく駄目だから、カタリナにその部分を補って貰う事にした」
「でも、二度もマルス様の暗殺を企んだカタリナをマルス様の警護に置くなんて、大丈夫なのか?」
 慎重を主とするロディもさすがに疑問の声を上げるが、ウェルナーは迷うことなく答えた。
「その為に、常に俺の隣にいて貰うんだ。そうすれば、万が一の場合にも対処できる」
「でもウェルナーさん。その場合、常にカタリナさんと一緒にいる事になりますよね?」
 ライアンはジェイガンと同じ質問をする。
「ああ。だから、カタリナは今日から俺と同じ部屋で寝泊まりし、いつも一緒にいて貰う。さすがに入浴時は無理だけど、その際にはセシル、お前にカタリナと一緒にいてもらいたい」
「いつも一緒って…あんた正気なの!!」
 セシルの疑問というよりは、怒りに近い声が上がるが、ウェルナーは平然と答えた。
「四六時中監視してないと、意味がないだろ。俺はカタリナがもう裏切る事は絶対にないと信じているが、他の兵士達はそうもいかないから、俺の監視という事が必要なんだ」
「あんた、そういう事じゃなくて…カタリナ、あんたからも何か言いなさいよ」
 ジト目をウェルナーに向けながらそういうセシルの声に、私は顔を赤く染めて答えた。
「い、いえ…私はウェルナーさえ良ければ問題、ないです…」
「はぁ…この子は。シーダ様、何とかおっしゃって下さい」
 次にふられたシーダ王女は、にこにこと笑顔を浮かべて話をつなげる。
「マルス様とウェルナーがそう決めて、カタリナに問題がないならいいんじゃないかしら?」
「シーダ様… 解りました」
 もう何を言っても無理だろうという雰囲気に、セシルは肩を落としてそう答えるのが精一杯だった。
「じゃあカタリナさん。また僕たち一緒なんですね!」
 ライアンがそういって私に握手を求めてきた。
「はい、宜しくお願いします」
「まあ、私も隊長であるウェルナーが決めたのなら、これ以上反対するつもりはない」
「ああ、俺もお前の決めた事なら、それに従うぜ」
 ロディやルークもライアンと同じく握手を求めてきた。
「カタリナ。ウェルナーの期待を裏切るような事があれば、私も容赦しない。それだけは覚えておいて欲しい」
「はい。私は何があってもウェルナーの、皆さんを裏切るような事はしません。もしそうなったら、躊躇わずに私を切り捨てて下さい」
「その覚悟、ちゃんと覚えておくぜカタリナ」
 全員と握手を交わした後、ウェルナーの声が響いた。
「じゃあ俺とカタリナは部屋に戻るから、何か用があったらそっちに来てくれ」
「シーダ様、私たちも戻りましょう」
「ええ」
 そういってセシルはシーダ様と一緒に私室に戻られ、私もウェルナーと共に詰め所を後にした。

「ウェルナー。部屋に戻るって、あの詰め所ではないのですか?」
「ああ。城で待機する時は、マルス様の隣の部屋を宛がわれてるんだ。不測の事態でも直ぐ駆けつけられるようにな。進軍中はマルス様の本営隣になるから、覚えていてくれ」
「はい」
 その後、ウェルナーに宛がわれた部屋に入ったが、そこは調度品から始まり、寝台や戸棚など全て一級品の豪奢な部屋だった。
「すごい部屋ですね…」
「俺は別にこんな部屋じゃなくても良いっていったんだけど、マルス様の部屋の隣はここしかないんだってさ」
 そういって手近のソファに腰を下ろし、大きく息を吐いた。
「あ、私お茶入れますね」
 私は備え付けのティーセットを使い、手早く紅茶を淹れていく。
「はい、ウェルナー」
「サンキュ」
 ウェルナーにティーカップを渡すと、彼の隣に腰を下ろした。
「ふう、旨いな…」
「ありがとうございます」
 しばらく無言でお茶を飲んでいたが、やがてウェルナーはお茶を飲み干すと、こちらに視線を向けてきた。
「さて、カタリナ。今後だけど、さっき話した通り、常に俺の目が届く範囲に居て貰うから、そのつもりでいてくれ」
「はい」
「それから警護などについて…」
 そういってウェルナーの予定を聞き、一つ一つを手帳に書き込んだ。
「解りました。私もがんばりますね」
「期待してるよ、カタリナ。さて、今日は暇を貰ったし、城下へ行って買い物と食事でもしに行こう」
「あ、はい」
 慌ててカップを片付けると、そのまま部屋を後にし、城下へ下っていった。アリティア城下町はアカネイアの支配から解放され、マルス様の帰還もあって賑わいを取り戻していた。私はウェルナーの隣で辺りの店を眺めていたが、前から現れた女性兵士達が私たちの横を通り過ぎる時、私に向けられるその視線は、怨嗟に近いものだった。
(ちょっと、今の見た!?)
(ええ、あの女確かマルス様のお命を狙った奴じゃない!)
(どうしてウェルナー様の隣にいるの? 今まで誰も隣に置きたがらなかったウェルナー様が!?)
(しかも、かなり仲良さそうだったじゃない! どうして裏切り者がウェルナー様の横にいて、さらにあんな笑顔で居られるの!)
 その言葉に、私はいささか驚いた。今まで隣に置きたがらなかった… 私はてっきり近衛騎士の任務は危険だから、誰も受けようとしなかったのかと思ったが、今の言葉から考えるに、ウェルナーのパートナーになりたがっているものは沢山居たようだ。なのに、なぜ?
「あの、ウェルナー」
「ん?」
 軒先のリンゴを手にとって眺めていたウェルナーは、先ほどの兵士達の言葉が聞こえなかったようだ。
「一つ、聞いても良いですか?」
「ああ」
「ウェルナーは私が裏切ったあの日以降、パートナーを作らなかったのですか?」
 その言葉に、ウェルナーは少しだけ顔をしかめた。
「どうしてそんな事を聞くんだ?」
「気になったんです。私が居なかったあの時間が」
 その言葉に、小さく息を吐くと彼は言葉を繋いだ。
「マルス様やジェイガン様も俺の事を心配し、何度もパートナーを作った方が良いって言われたんだけどな。なんか、作る気がしなかったんだよ。まあ、今だからその理由もわかったんだけどな」
「え?」
 その言葉に、彼は頬を掻いていた。心なしか顔が赤い。
「何度も言わせるなよ… お前以外隣にいて欲しくないって、言ったろ」
「あ…」
 私もその言葉に顔を赤くした。
「さ、もういいだろ。いくぞ」
「あ、待って下さい!」
 私たちはそのまま手近な店で買い物を済ませ、さらに簡単な食事を済ませて城に戻った。城内への門を潜った時、警備の兵士が声をかけてきた。
「ウェルナー様。マルス様がお探しでした。見かけたら執務室へお越し下さるようにとの事です」
「解った。いくぞ、カタリナ」
「はい」
 この後、マルスの執務室で話し合わせた内容こそ、アカネイア大陸全土の歴史を大きく塗り替える戦いの始まりであった。そして、マルスの影で在る事を望み、歴史書からもその名を消した影の英雄と、その英雄に生涯共に付き添った影の賢者が居たのである。
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2010.12.31 08:41 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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