トワイライトの怠惰な図書室

ここは、トワイライトが書きつづった小説をメインに載せていくblogです。無断転用やお持ち帰り等は全て厳禁です!

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
ファイアーエムブレム マイユニ×カタリナSS。

再び彼と共に居る事が出来る。それは闇を抜け出し、光の中に居る事の出来る喜び。
影に寄り添う、もう一つの影 第四章

 影の勇者の隣にあってこそ、影の賢者は光り輝く。

 戦いの後、先にアリティア城へ戻られたマルス様の後を追うように、私とウェルナーはアリティア城へ向かっていた。名目上、ウェルナーに連行されるという形で、私の左右にはルークとロディ、後方にはセシルがそれぞれ付いていた。アリティア城の城門を潜った時、その物々しい我々を見て、多くの兵士や住民が視線を向けてくる。そして、兵士たちの中には私の事を知っている者も少なくなく、私の姿を見て、小さく侮蔑の言葉を囁いていた。

(おい、あの女…)
(ああ、確か数年前にマルス様の暗殺を企てた女じゃないか?)
(何でも第七小隊に従騎士として所属していたのも、暗殺の下準備をする為って噂だぜ)
(近衛騎士のウェルナー様や近衛隊である第七小隊に連行されてるって事は、今回もまたマルス様の命を?)
(ああ、たぶんな。まったく懲りない女だな。ウェルナー様が常に側にいるのに、暗殺なんか出来るって本気で思ってたのかねぇ)
(ま、これであの女は間違いなく処刑だろうな)
(いくらお優しいマルス様でも、二度も自分の命を狙ってきた者を許すわけないだろうしな)

 あの兵士たちの言う事は正しい。二度も命を狙い、そして自分は裏切り者。どんな理由があったとしても、それは許される事ではない。私は黙って彼の背中を見ながら、そんな事を考えていた。

 しばらくして、アリティア城内へ続く門の手前で、ウェルナーが振り返った。
「みんなはここまででいい。後は、俺がカタリナをマルス様の所へ連れて行くから」
「ああ、解った。俺たちは部屋に戻ってる」
 そういって、ルークたちは馬小屋へと向かっていった。その様子を見て、私は驚いた。仮にも暗殺を企んだ私を自分一人でマルス様の元へ連れて行くというのだ。通常なら、あの三人もマルス様の安全のために同行するはずなのに、彼らは二つ返事でウェルナーの命令を聞いていった。ウェルナーの実力を信じているのか、または自分がもう何も出来ないという事を信じたのか。どちらにせよ、彼らはウェルナーに対し、絶大な信頼を置いている事に他ならない。
「いくぞ、カタリナ。マルス様は執務室でお待ちになっている」
「はい」
 執務室へ向かう際、今度は城仕えの侍女達から怪訝な視線と囁きが響いてきた。

(ねえ、あの子確か…)
(あ、数年前にウェルナー様達の騎士叙勲式で暗殺騒動を起こした子じゃない?)
(どうしてウェルナー様の隣にいるのかしら?)
(ねえ。確か今朝方、マルス様と共に慌てて出かけられた様だったけど、まさか)
(そうか! きっとあの子が再びマルス様の事を狙っているのに気づいたから、今朝出かけられたんじゃない?)
(ということは、また暗殺を企んだって事? 許せないわ!)
(それにしても、二度もマルス様のお命を狙ったあの子を、その場で切り捨てずに連れてくるなんて… ウェルナー様もお優しいというか、何というか…)
(あの子、ウェルナー様がまだ従騎士だった頃、同じ第七小隊に在籍していて、他の隊員よりもウェルナー様が信頼して、常に隣にいたパートナーだったんですって。全女性隊員あこがれの場所よ、ウェルナー様のパートナーなんて)
(噂では、ウェルナー様と共に近衛騎士になる予定だったそうよ)
(そんな信頼を捨ててマルス様のお命を狙うなんて… 馬鹿よねぇ)

 ぎゅっと唇をかみしめ、俯きながら彼の横を歩いて行く。そうだ、私は自分自身でその場所と彼の信頼を裏切ったのだ。そんな嘲笑を聞きながら歩いていると、彼の歩みが止まった。
「ウェルナー?」
 彼の顔を見上げると、彼は怒りを堪えているのが一目で解った。そう、彼は私への嘲笑に対する怒りを必死で堪えているのだ。突如、彼は私の手を取ると、そのまま早足で歩き出した。
「ウ、ウェルナー! ちょっと…」
「前に言った」
「え?」
 その一言の意味が解らなかったが、彼は怒りを堪えて、絞り出すように呟いた。
「お前を泣かせるやつは、俺が許さない」
「ウェルナー…」
 最初の暗殺事件を起こす数日前、森の中で彼と別れる日が近づいている事に涙していた時、彼は私にそう言ってくれた。あんな事があったのに、未だ彼は私の事を守ってくれるというのか… 再び涙が溢れてくるのが解る。
「泣くな。もうすぐ執務室に着くから」
「はい…」
 さらに程なくして、重厚な扉の前にたどり着くと、ウェルナーは扉をノックした。
「マルス様、ウェルナーです。カタリナを連れてきました」
「どうぞ」
 扉を開けると、そこには机にうずたかく積まれた書類をジェイガン様と共に処理しているマルス様の姿があった。
「やあウェルナー。ご苦労様」
「はっ」
 マルス様はウェルナーをねぎらうと、その視線を自分に向けてきた。その視線は鋭いどころか、穏やかな光をたたえていた。
「カタリナ、久しぶりかな?」
「マルス様…」
 私はその一言と同時に、そのまま床に膝をついて頭を垂れた。
「申し訳ありません。いかなる弁明をしようとも、二度もマルス様の命を狙った事実は変わりません。だから…」
 そのまま決意を込めて上を向くと、マルス様とウェルナーが自分を心配そうに見つめていた。
「私を処刑して下さい! この命を持って、償わせて下さい!」
「カタリナ!」
 ウェルナーの非難の声が上がるが、私は首を横に振った。
「いいんです。私は貴方を裏切り、マルス様の命を二度も狙った大罪人です。最後に、貴方に会えて思い残す事は何もありません」
 しかし、マルス様の口から出たのは意外な言葉だった。
「顔を上げるんだ、カタリナ。僕は君の命を奪うつもりはないよ」
「どうしてですか、私にはもうこれ以外に罪を償う方法が…」
「それは償いじゃない。君は逃げたいだけだ」
「!」
 その言葉にまさしく衝撃を受けた。逃げたい… たしかにそうかも知れない。闇に落ち、世界のクズと呼ばれた自分は、もうこの世界にいる価値など無いのだと思っていた。
「だから、君は生きるんだ。今までの事を悔やんでいるなら、生きて君の出来る償いをするんだ」
「償い… でも、私はどうしたらいいんでしょうか」
「それは君が考えるんだ。それが、僕が君に与える罰だ」
「マルス様…」
「よかったな、カタリナ」
 余りにも優しい温情に、私は再び頭を垂れた。ウェルナーからも安堵の声が聞こえた。
「しかしマルス様。マルス様やウェルナーがカタリナを許したとしても、他の者が納得しますまい」
 終始話を聞いていたジェイガン様から、的を得た言葉が響く。
「それについてですが、俺に一つ提案があります」
 ジェイガン様の言葉を繋いで、ウェルナーが声を上げる。
「なんだい、ウェルナー」
「はい。カタリナを俺に預けてもらえませんか? 俺はマルス様の近衛騎士として、平時でも戦場でも常に危険な場所にいますから、そこにカタリナがいれば、兵士達にもその労苦を見てもらえますし、俺の隣にいれば、万が一マルス様の命を狙う事になったとしても、すぐに止める事が出来ます。しかも、カタリナは優秀な魔導師です。剣士の俺では及ばない魔道をサポートして貰えば、よりマルス様の安全を図る事が出来ると思います」
「ふむ、確かにそなたに預けておけば、不測の事態でも問題ないが… その考えで行けば、そなたはカタリナが兵士達の信頼を得られる時まで、公私常に側に居続けなくてはならないぞ? なにせ、その不足な事態がいつ起こるか解らぬのだからな」
「公私に渡って常に…」
 私はこんな場所であるにもかかわらず、顔が赤くなり、胸の鼓動が高まっていく事を押さえられなかった。しかし、等のウェルナーはさも当然とばかりの表情をしていた。
「俺は問題在りません。カタリナを常に監視しているという事を示せば、兵士達も納得できると思いますし、カタリナは従騎士時代から俺のサポートをしてくれましたから、常にいてくれると助かります」
「まあ、君がそれでいいなら僕は構わないけど」
「はい、ありがとうございます。マルス様」
「では、カタリナ。君はウェルナーの監視の下、僕の警護とウェルナーの補佐を命じる。常にウェルナーの指示に従い、今後行動するように」
「はい、この身命全てを持って、今後マルス様にお仕えする事を誓います。二度と、ご信頼に背く様な事は致しません」
「頼りにしているよ、カタリナ」
「では、俺は第七小隊の部屋に一度戻ります。後ほどまた二人で警護に参ります」
「いや、今日は他の者に警護を頼むから、君はカタリナと今後の事について第七小隊の面々と話をして欲しい」
「…お気遣い、ありがとうございます」
 その言葉を残し、ウェルナーと私はマルス様の執務室を後にした。

「ウェルナー。その、ありがとうございます」
「お礼を言われるような事じゃない。俺と共に居る事で、お前の誠意をみんなに見て欲しいし、それに魔道やそれ以外の事もお前が居てくれると助かる。お前が居なくなった後、第七小隊の事務処理や補充などがいかに大変だったか良く解ったから」
(そういう意味以外にもあるんです。その、再び貴方の隣に居られる事を、貴方自身から言ってくれた事、すごく嬉しかったです。またこうして貴方の隣にいられる事が、これ以上ないほど幸せです)
「それに、お前以外に俺の隣にいて欲しくなかったから…」
 聞き逃してしまいそうなほど小さな小さなその言葉。その言葉と同時に振り向くと、彼は顔を赤くしてそっぽ向いていた。初めて見た、彼の照れている顔。自分もきっと、顔を赤くしてしているだろう。
「さ、さあ行こう。ルーク達にも今回の事を話さないとな!」
「…はいっ!」

 再び彼と共に居る事が出来る。そう、今までのような闇の中ではなく、光の中に居る事が出来たから。
 
スポンサーサイト
2010.12.29 15:56 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。