トワイライトの怠惰な図書室

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ファイアーエムブレム マイユニ×カタリナSS。
光に救いを求めた闇は、その光によって救われた。
影に寄り添う、もう一つの影 第三章

 再会、そして闇との決別。

 アリティア城まであと半時という山に挟まれた場所で、前方から一隊が現れた。向こうもこちらに気づいたのか、ちょうど盆地の対面で立ち止まると、その中から二人がこちらに向かって歩いてきた。
 そのうちの一人はマルス様、そしてもう一人は、片時も忘れたことのなかった人。少し伸びた蒼い髪、あの時よりもさらに逞しくなった身体、そしていつも自分を見てくれていた強い光を秘めた瞳。そして胸には勇者の称号が輝いていた。
「カタリナ…」
 ウェルナーは私を見ると、私を呼ぶ声に驚きというよりはむしろ、ようやく会えたという意味を含んでいた。
「マルス様、ウェルナー…」
「カタリナ。事情があるなら話して欲しい。戦う以外の道がきっとあるはずだ」
 マルス様の言葉に、私は小さく首を横に振った。
「ごめんなさい。私には、こうするしかないんです…」
 そういって、左手にある魔導書を強く握りしめ、右手を掲げる。
「狙いはマルスの首のみ!かかれっ!」
 号令と共に、右手を振り下ろす。直後、連れてきた友達は一斉にマルス様めがけて襲いかかるが、ウェルナー指揮の下、ルークやライアンなどの第七小隊が次々と襲いかかる友達を打ち倒していく。

(所詮、エレミア様の術で強化されたものと、幾多の激戦を潜り抜けてきた彼らとでは、実力は雲泥の差、ですか…)
 前方で繰り広げられる戦いを見つめながら、そんな事を考えていた。最初から玉砕同然のこの戦いに、勝敗など決まりきっていた。勝てない戦いに巻き込んでしまった物言わぬ友達に申し訳ないとは思うが。

「カタリナ…」
 振り向けば、そこにはウェルナーが悲しい目をしながら私を見つめていた。
「ウェルナー… 私、夢を見ていたんです。とても幸せな夢を… ウェルナーと二人、近衛騎士になって、マルス様やみんなの役に立って、そしてみんなに喜んでもらう。とっても幸せな夢でした」
 その言葉に、ウェルナーは首を振った。
「違う。それは夢なんかじゃない! それは、これから俺と二人で歩んでいく現実だ!」
 その言葉に胸が高鳴る。しかし、自分は裏切り者で、世界から捨てられたクズ。マルス様の横で名声と栄光を手にできる彼の横にいることなど出来るわけがない。だからこそ、自分は忘れていた光をくれた他ならぬ彼の手で、この呪われた運命に終止符を打って貰うためにここに来たのだから。
「ごめんなさい。こんな事を話しても、もうどうにもならないのに… さあ、始めましょう」
 そういって、私は魔導書を構え、詠唱を始める。しかし、彼はその場から動こうとしなかった。彼の腕なら、私が詠唱を終える前に切り捨てることも出来るだろうに。
「光よ、敵の力を我に… リザイア!」
「ぐぅ…」
 力ある言葉と共に、ウェルナーの身体を吸生の光を包み込んだ。同時に彼の口から苦悶の声が響く。
「ウェルナー!」
「来るなっ!」
 後方で戦いを終えた第七小隊の面々が先ほどの光景に声を上げ、慌ててこちらに向かってこようとしていた。しかし、ウェルナーの声がそれを止める。
「カタリナの事は俺がちゃんとケリをつける。だから来るな!」
「馬鹿野郎!そんなこと言ってる場合か!」
 その言葉にルークの声が上がり、再びこちらに向かってこようとしたが、その前にマルス様の手がそれを遮った。
「マルス様!」
「ここは彼に任せよう。カタリナをどうするかは、彼自身にしか決められないのだから」
「マルス様…」

 それから数回、彼に魔法攻撃を行うが、彼は一向に攻撃してこようとしなかった。
「お願いです! 戦って下さい、ウェルナー!」
「それが、本当におまえの望みなのか?」
「!」
 その言葉に、私は思わず息をのんだ。彼はそんな自分を見つめると、あの時と変わらない優しくも力強い言葉で語りかけてきた。
「話を聞いてくれ!カタリナ!」
「どうして、どうして戦ってくれないんですか。このままでは、あなたが死んでしまうんですよ?それなのに…」
「…仲間だからだ」
「…」
「覚えているか? 初めておまえと会った時。そして第七小隊でルークやロディ、ライアン、セシルと共に過ごした日々を」
 暖かい言葉が心を満たしていくのが解る。そう、忘れることなど出来るはずのない、本当に日々が幸せだと感じていたあの時間を。
「あのとき、お前は俺と共にマルス様をお守りしたい。そう話してくれたな」
「あれは… あれ、は全部あなたを騙すための… ウソ、だったんです。本当は… ほん、とは貴方の事なんて」
 声が旨く出ない。こんな事、いいたくないのに… でも、頭がいくら否定しても、心がそれを許さない。そう、闇に落ちてしまったこの心が。
「だったら…」
 ウェルナーの声に顔をあげると、彼は今までで最も悲しい表情で一言だけこう言った。

「どうして、お前は泣いているんだ?」

 その言葉に思わず頬を拭うと、そこには確かな落涙の痕があった。闇に落ち、彼によって倒される事を望んだこの心は、まだ最後の希望を捨てていないのか。そう、再び彼の横に立つ事を望む希望を。涙は、そんな未来を渇望する心の体現。
「わ、たしは…」
 上ずった声でそう呟くのが精一杯だった。その声に、彼は一つ微笑みながら言葉をつなげていく。
「カタリナ。お前がいるべき場所はそこじゃない。俺と一緒に、マルス様をお守りして戦うんだ。お前もそう望んでいるはずだ」
「今更、無理です。私は、生きているだけで罪なんです。いままでも、そしてこれからも…」
 その言葉に、彼は再び首を横に振る。
「そんな悲しい事を言うな。罪はこれから償えばいい。アリティアからも、お前の組織からも白い目で見られるだろう。だけどこれだけは約束する」
 まっすぐに自分を見つめる彼の瞳は、強い光をたたえて私が一番欲しかった言葉を繋いでくれた。

「たとえ何があっても… 俺は、お前の味方だ」

「ウェルナー…」
 その言葉に、自然と足が一歩前に歩き出した。闇に捕らわれた心に光が満ちていくのが解る。次々と涙が落ちてくる。
「おいで、カタリナ」
 もう誤魔化せない、嘘はつけない。 最初に出会ったあの微笑みと共に、両手を広げて迎え入れてくれる彼の胸に、私は迷わず飛び込み、声を出して泣き出した。
「う、うっ… ウェルナー… ウェルナー…ウェルナー!」
「…おかえり、カタリナ」
 ずっと欲しかったその言葉。誰かに必要とされ、帰ってきた自分を暖かく迎えてくれる「おかえり」という言葉。優しく自分を抱きしめ、泣きじゃくる自分にそういってくれる彼の優しさが、何よりも嬉しかった。

 もう、私は迷わない。たとえこの先、幾千の嘲りも幾万の憤怒も彼が横にいてくれる限り耐えていける。だけど今だけは、彼の胸の中で、その温もりと優しさを感じさせて欲しい。そう思いながら、いつまでも涙を流し続けていた。

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2010.12.19 08:41 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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