トワイライトの怠惰な図書室

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ファイアーエムブレム マイユニ×カタリナSS。
彼女が最後に求めたものは、もう一度光に会うことだった。
影に寄り添う、もう一つの影 第二章

 求めた光を自ら手放したのに、
 やはりその光を忘れることは出来ない。

 飲み水に痺れ薬を入れ、城内の兵士たちを無効化させたが、やはり最大の誤算は彼の存在だった。ローローが連れてきたという手下、つまりかつての友人たちは命じられるままに襲いかかっていったが、ウェルナーがその悉くを打ち倒していった。
(やっぱり強いですね、ウェルナーは。ローローが連れてきた人たちでは、到底無理ですね)
 目の前で繰り広げられる激戦を、私は予想以上に冷静な目で見ていた。そしてウェルナーたちが目前に迫って来た時、私は踵を返していた。
「ローロー。今の状況では私たちは勝てません。引きますよ」
「ありり、そなの。じゃあ逃げろ逃げろー」
 私とローローは早足でその場を後にしようとしたその時、私の一番大切な人の声が響いた。
「カタリナ!」
「っ…」
 私はきつく瞳を閉じると、そのまま振り返らず走り出した。


「そう、それで失敗して戻ってきたのね」
 闇しかない部屋に、響き渡る女性の声。一切の感情が込められていない声に、私は何も言わず跪いていた。
「申し訳ありません、エレミア様」
「まったく… 役に立たないくずね」
「…」
「エレミア様。今度は私にお任せ下さい。こんなくずより、よっぽど旨くやりますから」
「まあ、クライネは本当に良い子ね。頼みましたよ」
「はい、お任せ下さい」
 エレミア様とクライネの会話を、正直ほとんど聞いていなかった。今頭の中にあるのは、アリティアで別れた彼の顔だけ。最後にみたあの悲しみに満ちた顔。彼は私を信じ、近衛騎士として共に居ようと言ってくれた。それなのに、私自身がそれを手放した。ずっとほしかった光を。
「アイネ」
「! は、はい」
「お前は当分の間、ここにいて奴らについての情報収集をしていなさい。そして逐一動きが在ればクライネに報告すること。いいわね」
「はい、エレミア様」
 その言葉と同時に、エレミア様とクライネは部屋を後にし、私も与えられた部屋へと戻っていった。

 それから一月。私はエレミア様に命じられたとおり、アリティア軍の行動を探っていた。ウェルナーはあの後すぐに近衛騎士に命じられ、マルス様の第一騎士として常に共にあり、警護に当たっているという。あの事件があって以来、アリティア城周辺は厳戒態勢が取られ、とても同じ事は出来そうになかった。
「ふぅ…」
 陽光差さぬ部屋に輝く一つのランプ。その光を見ながら、私は毎日のように彼のことを考えていた。彼は近衛騎士となっても、日々の研鑽を怠らず、近々勇者の称号を受けるとも聞いていた。彼が側にいる限り、マルス様の暗殺なんて絶対出来ない。三ヶ月という短い期間だったけど、第七小隊の中で誰よりも彼の隣にいた自分だから解る。現に何度かエレミア様の命令で動いているクライネと共に、先の大戦で仲間だった者たちを暗殺する役目を行ってきたが、その悉くをアリティア軍、いやウェルナーの力で覆されているのだ。
「これからもマルス様とその仲間たちを暗殺する為に、友達が次々と送り込まれ、倒されていく… どうして、こんな無益な事をやっているんでしょうか」
 誰に言うでもなくそう呟き、胸に輝く賢者の称号を握りしめた。彼の叙勲式はきっと盛大に行われるだろう。しかし、私は突然エレミア様に呼び出されてこの称号を渡され、一言こう言われただけだった。

「これでお前も少しは役に立つ道具になるわね。さっさとマルスたちを暗殺する事、いいわね」

 高位魔導師の称号、賢者。しかし、私にとっては少しだけ使いやすくなった道具になったと言うことだけ。喜びも、悲しみもその時沸いては来なかった。

「ウェルナー… あなたなら、喜んでくれたでしょうか?」
 その言葉と同時に、ランプの明かりは消え、言葉は闇に消えていった。


 それからまたしばらく経ったある日。私は信じられない事を聞かされた。クライネが重傷を負ったと言うことだった。
「エレミア様、いまなんと?」
「クライネが失敗したそうよ。まったく、ローローに続きあの子まで役立たずだったなんて…」
 私はその言葉を半分聞き流し、慌ててクライネの元へ向かっていった。
「クライネ! どこですか!」
 吹雪舞う中、必死に彼女の名を呼び続ける。そしてようやく、木の根もとで血まみれになっているクライネを発見した。
「クライネ…」
「な、なによあんた… 失敗した私を笑いに来たの」
「さあ、私につかまって下さい。帰りましょう」
「どうして… どうしてそんな事言えるのよ。私は今までさんざんあんたのこと…」
「貴女は私の妹ですから…」
「…」
「私は失いたくないんです、貴女を」
「ふん… お節介なあんたらしいわね… まあ、今だけ姉って事にしとくわ」
 どうにか組織へ戻ってきた私たちは、急いでクライネの手当をエレミア様にお願いしたところ、帰ってきた言葉はこれ以上ないほど非情な者だった。
「捨ててきなさい。もう使えないでしょう、あの子は」
「しかし、しかしエレミア様!」
「何度も言わないわよ。いいことアイネ、捨ててきなさい」
「…はい、エレミア様…」
 非情な命令にも、私の心は拒否することを許さなかった。闇に縛られた私の心は、もはや人とは言えないのだろう。
「クライネ…」
「なんであんたが泣いてるのよ。任務に失敗した私が死ぬのは、当然でしょう…」
「…」
「あっちいってよ。あんたなんかに見られて死ぬなんて、真っ平だわ」
「はい…」
 そういって、私は来た道を戻ろうとした時、か細い声が聞こえてきた。それが彼女の最後の言葉になってしまった。
「ありがとう… アイネ姉さん…」
「っ!」
 私は脇目もふらずに部屋に戻り、ベットに顔を埋めて泣き出した。何度も何度も彼女の名を呼び続けながら。
「クライネ!クライネ! あああああああっ!」
 ローローがいなくなり、今度はクライネがいなくなった。もうこの孤児院に残っている友達もわずかだけ。だけど、その友達は全て、エレミア様の命令に従うだけの心なき人形。もう、私は独りぼっちになってしまった… 闇よりも尚深き場所に落とされた私に残されたのは、罪無き命を奪い続けた血塗られた手と、友達を無謀な死地に向かわせた罪過だけ。ならばせめて、虚ろな夢でも良いから、見続けたい。彼と共に居ることが出来たであろう未来を…

 それから二月後、ついにマルス様がアリティア城を奪還したという報告が入った。その報告が入ったと同じ時、エレミア様に呼び出された。
「アリティア軍がアリティア城を奪還したそうね。ガーネフ様はたいそうご立腹よ」
「エレミア様…」
「なのにアイネ、お前はどうして何もしないの? 生きていて恥ずかしいと思わない? お前は私のために死ぬのが当然でしょう?」
「…はい」
「アイネ、お前は生きる価値のないクズ。世界から捨てられた子よ。 そんなお前を救ってあげたのは誰? お前が今生きていられるのは誰のおかげ?」
 非情な言葉が心を支配していく。決して反論できない呪詛の様な言葉が。
「エレミア様のおかげです…」
「奴らを殺しなさい」
 聞きたくない言葉が耳に入った。私は反射的に叫んだ。
「でも、エレミア様! 私はっ!」
 しかし、帰ってきた言葉は変わることのない冷徹な言葉だった。
「口を閉じなさい、この人形が。お前は私の命令には逆らえない。幼い頃から今までそう「教えて」きたものね。幼いお前の奥底に刻んできた私の言葉は決して消えることはない」
 頭では反対しなくてはならないと思っているのに、心がそれを拒絶している。そう、エレミア様の言う言葉は全てに優先するのだと。
「ふふふ、壊れるまでは使ってあげるわ。私の人形」
 その言葉と同時に、エレミア様の気配が消えた。私はしばらくその場に座り込んでいたが、やがて一つの決意と共に立ち上がった。
「ウェルナー、私は…」
 その言葉を最後に、私は僅かばかりの物言わぬ友達を連れて、アリティア城へ向かった。

 世界に捨てられたクズは、やはり消えるしかないのだ。
 ならばせめて、最後は自分で望んだ場所で消えよう。そう、光をくれた彼の元で…

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2010.11.22 21:34 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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