トワイライトの怠惰な図書室

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 ファイヤーエムブレム聖魔の光石 カイル×ルーテ小説。ようやく倒した皇帝は、すでにこの世の者ではなかった事実。

 城内に突入したエフラム達は、脇目も振らず玉座の間へむかっていた。途中、どこからも敵兵が出てくることはなく、程なくして白の大広間へ続く扉にたどり着いた。
「この先に、ヴィガルドが居るんだな」
 エフラム王子は呟くようにそう言うと、愛槍を強く握りしめた。
「この大広間を抜ければ、玉座の間へ繋がる扉がある。しかし、この広間は侵入者がたやすく玉座の間へ進入できないよう、左右二手に道が分かれている。片方だけで進んでいけば、途中で挟み撃ちにあうという形だ」
 デュッセル将軍がそういうと、ルーテがその後をつないだ。
「では、二手に分けましょう。扉をくぐり、左手に向かうのは私とカイル、マリカ、ユアン、ネイミー、コーマで。右手はエフラム王子、ラーチェル王女、ゼト将軍、ナターシャ、デュッセル将軍、ガルシア殿でどうでしょうか?」
「よし、それで行こう。最終合流場所は、玉座の間の扉前で!」
 その言葉と同時に、白の大広間の扉を蹴破った。そこには、皇帝の親衛隊が既に臨戦態勢を整え待ちかまえていた。
「流石に素通りというわけにはいかない様ですね」
「敵襲! ルネス軍が現れたぞ!」
 敵兵の一人が声を上げると同時に、左右から戦士や魔導師、騎馬兵が襲いかかってきた。
「迎え撃ちながら、玉座の間を目指すぞ! ルーテ、全体の指揮は任せた!」
「はい。エフラム王子も気をつけて」
 そういって、先程の面子に別れ、突撃した。

「カイルとマリカ、コーマは前衛で敵の進撃を食い止めて下さい。私とユアン、ネイミーで支援します」
「了解」
「わかった」
「任せとけって」
 ルーテが雷の魔導書を構えながら、手短に指揮を出す。その言葉と同時に、カイル達は襲い来る敵兵を次々となぎ倒し、切り捨てていく。
「雷よ」
「闇よ!」
 ルーテのサンダーと、先日闇魔導師にクラスチェンジしたユアンのミィルが炸裂し、こちらも襲い来る敵を打ち倒していった。ネイミーは高台から矢を放つ敵弓兵を確実に倒していった。
「どうやら最初の敵兵達はこれで終わりのようですね。傷の手当てを含め、休憩しましょう」
 ルーテの言葉に、周囲を警戒しながらも全員が腰を下ろした。ルーテはその間にライブの杖を振るい、軽傷者は自らの傷薬で治療をしていた。
「ルーテお姉ちゃん。あとどれくらいで玉座の間かなぁ」
 ユアンの言葉に、ルーテはいつもの抑揚のない声で答える。
「そうですね。デュッセル将軍の話ですと、この先の扉を抜ければ、もう目の前だそうです。迎撃の時間も入れれば、あと1時間ぐらいでしょうか」
「解った! 僕、頑張るよ!」
 ユアンの明るい声に、全員が微笑んでいたかに思えたが、ただ一人ルーテは先程倒した敵の遺体を見ながら、ある事に気を取られていた。
(しかし、大陸最大の軍事力を誇るグラド帝国の、皇室警護を行う親衛隊の力がこの程度なのでしょうか… 確かにいままで相まみえてきた敵よりは手強いですが、セライナ軍に比べれば二つ下ぐらいにしか感じられない気がします。何か別の手が働いている、もしくは既にグラド帝国は…)
「…テ、ルーテ!」

 はっ!

 自分の名を呼ぶ声に、ようやく思考から現実に引き戻される。呼ばれた声に振り向くと、カイルや他の仲間が、心配そうに自分を見ていた。
「どうしたんだ、ルーテ。ぼーっとして」
「…いえ、すみません。少し考え事をしていました」
「考え事も良いが、今は戦闘中だ。気を抜くと危険だ」
「はい、すみません」
 ルーテは一時の思考を頭の隅に置き、再び前に進み出した。

「俺とゼト、デュッセルで前衛を固める。ナターシャとガルシアはそれぞれ光魔法と弓で援護してくれ。ラーチェルは下がってろ!」
「はっ!」
「はい!」
「承知!」
 こちらも同じく、向かい来る敵を迎撃しながら進軍していた。流石に皇帝直属の親衛隊だけあって、今までの敵よりも強かったが、セライナ軍を打ち倒した連合軍最強ともいえる、エフラム王子やゼト、デュッセル将軍、そしてナターシャとガルシアの援護がそれに加わって並み居る敵を退けていた。
「ふう、どうにか一段落付いたな。一度傷の治療を併せて休憩するか。ラーチェル、ナターシャ頼む」
「解りましたわ」
「はい」
 ナターシャとラーチェルの癒しの杖が輝き、次々と傷口がふさがっていく。
「しかし、手強いには手強いが、敵わないという相手ではないな」
 エフラム王子が愛槍の状態を確認しながら口を開いた。しかし、デュッセル将軍だけは渋い顔をしていた。
「どうしたんだ、デュッセル?」
「うむ…この者達は、今まで陛下の御側を警護していた兵達の中には居なかったような気がしてな。親衛隊は陛下が直接指揮をなされているため、儂でも全ての親衛隊の顔を見たわけではないので、はっきりとは言えぬが」
「もしかしたら、親衛隊ではないと?」
 ゼトの言葉に、デュッセル将軍が顔を歪める。
「確証がないので、何とも言えぬ… 少なくとも一般兵よりは遙かに鍛錬されているので、絶対に親衛隊ではないと言えぬ…」
「何にせよ、玉座の間まで立ちふさがるなら、倒して通るだけだ」
 そういって、エフラム王子は立ち上がり走り出した。他のものもその後を追った。

「ここが玉座の間ですね」
 他の扉とは明らかに違う豪奢な造りの扉の前で、一足先にたどり着いたルーテ達は、エフラム王子達の到着を待っていた。
「エフラム様はご無事だろうか…」
「あちらにはゼト将軍とデュッセル将軍が付いています。心配いりません」
「そうだな… ! 伏せろ!」
 カイルが慌ててルーテを抱きかかえて床に転がると、その上を大火球が通り過ぎ、壁にぶつかったと同時に、熱波をまき散らしながら弾け飛んだ。
「ルーテ、大丈夫か!」
「大丈夫です。しかし、爆炎魔法とは… 油断していました」
「迎撃するぞ!」
 カイルは立ちあがって槍を構えるが、ルーテの手がそれを制した。
「魔導師相手に重装騎士のカイルでは不利です。ここは私たちに任せてください。ユアン、行きますよ」
「うん!」
 そういってルーテとユアンは魔導書を片手に駈けだした。そして向かった先には数十人の魔導師が爆炎魔法の魔導書を手に、詠唱を開始していた。
「玉座の間には入れさせんぞ!」
「ユアン、闇魔法で詠唱妨害をして下さい。私は爆炎魔法を詠唱します」
「解った!」
 敵魔導師の爆炎魔法が放たれる前に、ユアンは闇魔法をぶつけ詠唱を妨害していく。そして、かつて魔物の一団を壊滅させたルーテの爆炎魔法が放たれた。
「爆炎よ!」

 ドゴォォォォン!

 灼熱の大火球は敵魔導師の中心で炸裂し、断末魔の悲鳴すらかき消して、その身は灰と化した。
「…やっぱりすごいね、ルーテお姉ちゃんは」
 ユアンの一言に、ルーテの返答は決まっていた。
「私、優秀ですから」

「バーサクの杖による攻撃は予想していなかっただけに、厳しかったな…」
 ようやく前扉を開けて中に入りながら、そう呟くエフラム王子。その横で、デュッセル将軍が申し訳ないように萎縮していた。
「すまぬ…」
「あらあらお気にしてはいけませんわ。幸い私がレストの杖を持っていたので、被害はなかったのですから」
 コロコロ笑いながらそういうラーチェルは大活躍であった。敵の闇神官によるバーサクの魔力を受けたデュッセルが暴れ出す前に、ラーチェルは急ぎレストの杖を使い回復したため、実質的な被害は出なかった。しかし、レストの杖がなければ大変なことになっていたのは言うまでもない。そんな会話の中、周囲の様子を見てきたゼトが一人の男を、縄に縛って連れて戻ってきた。
「エフラム様。先程宝物殿付近に盗賊がおりました。抵抗する様子がなかったので、そのまま縄をかけて捕まえております」
 そういってゼトがつきだした盗賊の顔を見ると、ラーチェルは驚いたように声を上げた。
「まあ、レナック! どこにいっていたのかと思えば、こんな所におりましたのね」
「げっ、ラーチェル様」
 レナックと呼ばれた盗賊は、その顔を見るやに嫌そうに声を上げた。
「知り合いか、ラーチェル?」
「ええ、私の連れですわ。さあレナック、行きますわよ」
 縄を解かれたレナックにそういうと、さっさと玉座の間へ向かっていった。その後レナックが何か言っていたが、ラーチェルは一切聞かなかった。
「ナターシャ、私たちも行こう」
「はい… !」
 ゼトの声にナターシャは振り返ったが、後ろから闇魔法の気配を感じ、再び振り返ると、敵の闇魔導師がゼトに向かってミィルの魔法を放った所だった。
「ゼト様!あぶない!」
 慌ててナターシャが声をかけ、全力でゼトを突き飛ばした。
「ナターシャ!」
 ナターシャが倒れた場所に、ミィルの闇が弾けた。しかし、ナターシャは何事もなかったかのように立ちあがった。
「大丈夫ですか!」
「はい。これでも司祭ですので、闇魔法には耐性が強いようです」
 ゼトの手を取って立ちあがったナターシャは、そういって微笑んだ。しかし、ゼトの表情はどちらかと言えば苦渋に満ちていた。
「ゼト様?」
「ナターシャ…心配していただけるのは嬉しい。しかし、自分の身を第一に考えて欲しい」
「ゼト様…心配をおかけしました」
 沈んでしまったナターシャに、ゼトは今度は困ったような表情を浮かべ、彼女の細い肩に手を添えた。
「いえ、私も少し言い過ぎました。さあ、敵の闇魔導師を倒しましょう」
 そういって剣を構えるゼトに、ナターシャは杖を掲げて制した。
「お待ち下さい、ゼト様。闇魔導師ならば私がお相手します。ゼト様は万が一に備えて、私の御側にいて下さいますか?」
「解りました」
 そういって先程の宝物殿付近にいくと、既に数十人の闇魔導師がおり、その闇魔導師達はこちらに気づくとミィルの詠唱を開始した。
「聖光よ!」
 ナターシャは聖光の魔導書を取り出すと、杖を振り下ろしていった。振り下ろされるたびに光の束が闇魔導師達を打ち付け弾け、次々と床に倒れていった。
「光魔法の腕も、ずいぶん上達しましたね」
 全ての闇魔導師を打ち倒したナターシャの光魔法をみて、ゼトは包み隠さずそう答えた。しかし、その言葉を聞いたナターシャの表情には陰りが見えた。
「聖職者として、本来人を救わなくてはならない身としては、攻撃魔法の腕が上達する事に、些か抵抗を感じてしまいます」
「…そう、ですね。申し訳ありません、貴女の気も知らずに」
 ゼトのその言葉に、ナターシャはいつもの微笑みを浮かべていた。
「いいえ、私も出過ぎたことを申し上げました。行きましょう、ゼト様」
 ナターシャの手を取り、ゼトは玉座の間の扉へと向かった。

「エフラム様、ご無事でしたか!」
 駆けつけてきたエフラム王子の姿を見たカイルは、喜びの声を上げた。
「ああ、こっちは全員無事だ。そっちも大丈夫なようだな」
「はい。幸い大きな怪我をした者もいません」
 ルーテの言葉に、エフラム王子は大きく頷いた。
「では、いよいよだな」
「コーマ、お願いします」
 コーマは無言で頷くと、愛用の解錠道具を取り出し、鍵穴に差し込んだ。数秒後、カチッと言う音と共に玉座の扉は開かれた。直後、玉座を守る二人の闇神官が襲いかかってきたが、ナターシャの光魔法によって闇神官は地に伏した。
「ヴィガルド…」
 エフラム王子は目の前の玉座に座る者をにらみ据え、絞り出すような声でその名を呼んだ。
「何故だ!何故ルネスを侵略した!」
「……」
 しかし、その問いかけにも何の反応も示さなかった。それがエフラム王子の怒りをさらに煽った。
「答えないなら、力尽くでも答えさせてやる!」
 エフラム王子が愛槍レギンレイブを振り上げてヴィガルドに向かった。ヴィガルドもそこでようやく立ちあがると、立てかけてあった槍を一閃した。直後、衝撃波が巻き起こり、突撃したエフラム王子はその衝撃波を正面からまともに受け、手近の壁まで吹き飛ばされた。
「ぐあっ!」
「エフラム!」
 真横にいたラーチェルが、急ぎ回復の杖を振るう。
「まさか、槍を振ったときの風圧だけで人をはじき飛ばすなんて…」
「人間業じゃないぜ、あれ」
 ネイミーとコーマは余りの出来事に目を丸くしていた。しかし、果敢にもエフラム王子は向かっていった。
「まだだ、まだ!」
 そういって、エフラム王子は愛槍を振るい、ヴィガルドを攻撃していく。一撃一撃が確かに決まっているはずなのに、ヴィガルドは悲鳴処か、声一つあげない。そして、致命傷とも言える一撃が加わったとき、その異様さにルーテは気がついた。
「決まったか!」
「…いえ、まだです。あれを見てください」
 カイルの声に、ルーテはレギンレイブが刺さった胸を指刺した。生きている者なら、そこからは夥しい血が流れているはず。しかし、そこから流れ出したのは…
「なんだ、あれは…」
 そう、そこからあふれ出したのは闇。闇が霧状になって流れ出したのである。
「人間じゃ… ない」
「恐らく… 死者です」
 余りの出来頃に全員が声を失ったとき、ヴィガルドは先程同様に槍を一閃した。しかし、今度巻き起こった衝撃波は先程の比ではなく、周囲の柱などを打ち壊すほど強力なものであった。全員部屋全体を吹き飛ばすほどの衝撃波をまともに受け、全員壁や床にたたきつけたれた。
「ぐうう…」
「くっ…こんな事も有るかと思い、持ってきて正解でしたわ」
 ラーチェルはそういうと、懐から赤い宝玉の付いた杖を取り出した。そして、杖を掲げると、その魔力を解放した。
「リザーブ!」
 全員に癒しの光が届くと、ラーチェルはそのまま気を失ってしまった。
「ラーチェル! おい、ラーチェル!」
 エフラム王子は急ぎ抱き起こし揺すったが、その瞳は固く閉ざされたままであった。
「ナターシャ、来てくれ! ラーチェルが!」
 その声にナターシャが駆け寄り、ラーチェルの容態を確認する。しばらくして、ほっとため息をついた。
「大丈夫です。恐らく、先程の杖魔法に全魔力を使った為でしょう。今は気を失っているだけです」
「そうか…」
 
 別の場所では、ルーテが皇帝攻略の手段を考えていた。ヴィガルドはその間も執拗に周りの仲間達を攻撃しているが、幸い先程の攻撃で力をかなり使ったのか、驚異的な攻撃はなくなっていた。
(どうやら、物理的な攻撃は余り効果をなさないようですね。ならば、私とユアン、ナターシャの三人による攻撃魔法が有効でしょうか。しかし、詠唱中にあの衝撃波を繰り出されては、魔法を使うことも…どうしたら)
 そんな事を考えていたとき、カイルの手がルーテの肩に添えられた。
「どうしました、カイル?」
「私が詠唱時間を稼ぐ。一撃で決めて欲しい」
 その言葉は、同時に近距離であの衝撃波を受けるという事であった。流石のルーテも声を上げ、彼の腕を掴んだ。
「駄目です!あの攻撃をまともに正面から受けたら、身体がバラバラになってしまいます!」
 その言葉に、カイルは一つ微笑んだ。
「私は君を信じている。私たちは一心同体のパートナーだからな」
「カイル…」
「頼むぞ!」
 そういって、カイルはルーテから優しく腕を放し、ヴィガルドめがけて突撃した。その行為に覚悟を決め、ルーテは再び声を上げた!
「ナターシャ! ユアン!」
 その言葉とカイルが突撃していくのを見て、二人はルーテの意図を察した。そして、ゼトとデュッセル将軍もまたカイルが突撃していくのを見て、術者二人の為に突撃していった。
「カイル!我々もいくぞ!」
「陛下!」
「……」
 ヴィガルドは突撃してくる三人を、興味なく見据えると手にする槍を握り直した。
「灼熱の業火よ、爆炎となりて敵を焼き尽くせ…」
「聖なる光よ、汚れし者に裁きを…」
「集え、闇よ…」
 三人の詠唱も同時に響き渡る中、ヴィガルドの槍が一閃した。カイルとゼト、デュッセルは術者達を守る為、衝撃波の渦中に身を置き、まさしく身を盾にして衝撃波を受け止めた。
「ぐわぁ!」
「がふっ!」
「ぐおおっ!」
 三人が倒れ伏す中、ルーテとナターシャは必至に駆け寄りたい気持ちを抑え、全魔力を込めて詠唱を唱え続け、遂に詠唱は完成した。
「爆炎よ!」
「聖光よ!」
「闇よ!」
 放たれた爆炎魔法と聖光魔法、闇魔法は同時にヴィガルドに炸裂した。今まで声一つあげなかったヴィガルドから、初めて絶叫が響き渡った。
「ガアアアアアアッ!」
「王子! 止めを!」
 ルーテの声に、エフラム王子が愛槍を再びヴィガルドの胸に突き立てた。突き立てた場所から鎧がひび割れ始め、ついに全身から闇の霧があふれ出した。
「ゴォオオオオオオ!」
 最後の断末魔が響き渡ると、ヴィガルドはそのまま灰となって崩れ落ちた。
「な、なんだ…これは」
「おそらく、闇魔法の類ですわ。死者の蘇生などと言う禁忌を犯すとは、術者はかなり高位の闇魔導師ですわね」
「! ラーチェル、もう大丈夫なのか!」
「ええ、ご心配をおかけしました。もう大丈夫ですわ」
 そういってにっこり微笑むラーチェルを見て、エフラム王子は周囲を気にせず彼女を抱きしめた。
「え、エフラム! 皆さん見てますわ!」
「良かった… 本当に…」
「エフラム…もう」
 そんな恋人同士の情景のなか、ルーテとナターシャも目の前で倒れる恋人達に杖を振るっていた。
「カイル、しっかりしてください!」
「ゼト様!」
「デュッセル将軍!」
 三人共に纏っていた鎧は砕け、鎧で覆われていなかった至る所から出血が止まらなかった。

「ぐ… ルーテ、皇帝は、倒した、のか…」
「はい、もう大丈夫です。だから、しっかり気を持って下さい!」
 リライブの杖を振りながら、必至に声をかけ続けるルーテに、カイルはふっと一つ微笑むと、そのまま瞳を閉じた。
「カイル!」

「ゼト様!ゼト様!」
 ナターシャも隣でリライブの杖を振り続けながら、懸命にゼトに呼びかける。重装騎士だったカイルやデュッセルよりも纏っていた鎧が薄い為、怪我の度合いはゼトの方が酷かった。
「ナターシャ… 無事、ですか」
「私は無事です。皇帝も倒れました。だから、しっかりなさって下さい!」
「そう、ですか… よかった」
 ゼトもまた、そういって瞳を閉じた。
「ゼト様!」

「デュッセル、しっかりするんだ!」
 エフラム王子の声に、先程まで閉じていた瞳が薄く開かれる。エフラムの隣では、ラーチェルがリライブの杖を振るっていた。
「ぐう… 陛下は、どうなったのだ」
「ヴィガルドは倒れた。これで、戦争は終わったんだ」
「そうか、ならばこれで悔いはないな…」
「馬鹿なことを言うな! 貴方にはまだまだやって貰うことがあるんだ!」
「ふふ、これは手厳しいな…」
 そういって、デュッセルも瞳を閉じた。
「デュッセル!」

 三者が重傷で倒れる中、皇帝を倒した旨が伝令によって伝えられ、城外で待機していた全ての兵士達から歓声の声が響いた。今回のグラド帝国による世界侵略は、ひとまず終焉を迎えたのだという事を。
「エフラム王子、ばんざーい!」
「ルーテ軍師、ばんざーい!」
「これで終わったんだー!」
 誰も彼もが喜びに声を上げ、涙していた。

 至近距離で攻撃を受けた三人は、ルーテ、ナターシャ、ラーチェル三人がそれぞれ付きっきりで杖を振るい、看病を続けた結果、皇帝を倒してから三日後には意識を取り戻した。カイルの意識が戻ったとき、ルーテは涙を流して恋人の胸に飛び込んだ。
「ルーテ… 心配をかけたな」
「はい!はい!本当に、本当に心配しました…」
 いつもの落ち着いた口調ではなく、感極まった口調で胸の中で叫ぶルーテを、カイルは横たえたベットの中でそっと抱きしめた。
「ずっと君が、回復の杖を振るってくれてたんだな」
「貴方の怪我を治すのは、他の誰にも任せられません…か、ら」
 そう言うと、今度はルーテがカイルの胸の中で寝息を上げ始めた。皇帝に放った爆炎魔法と、その後今日まで杖魔法と看病で、体力・精神力共に尽き果ててしまったのだろう。
「ありがとう、ルーテ」
 そういって、カイルは自分のベットにルーテを引き入れ、共に寝息を上げ始めた。
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2009.10.12 09:41 | 未分類 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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