トワイライトの怠惰な図書室

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 スターオーシャン3フェイマリ小説。愛する事と疑う事、天秤に載せて…


「マリアさん、お見合いをしてくださいませんか?」
「は?」
 シランド城、マリア客室。
 突然前触れもなく訊ねてきたロメリア女王を、客室内に招き入れた後、お茶の用意をしている最中、後ろからかけられた最初の言葉がそれであった。
「あのー。すみません、もう一度言って下さいませんか?」
「よく聞き取れませんでしたか? お見合いをしてくださいませんかと申し上げたのですが」
「やっ、やっぱり私の聞き違いではないのですね…」
 マリアは頭をかかえて項垂れた。
 それはそうだ、いきなりそんな事を言われれば、誰だってこうなる。
「でも女王陛下、私には既に想い人が」
「わかっています。フェイトさんのことですね」
 女王はアールグレイの香りを楽しみながら切り返す。
 表情から、何を考えているのかは読みとれない。
「そこまでご存じなら・・・」
「もちろん本来なら、お断りするのですが、なにぶん今回は…」
 言葉を濁す女王に、マリアは探り出す様に言葉をつなぐ。
「今回がどうかされたんですか?」
 女王はとりあえず、持っていた一枚の肖像画をマリアに渡しながら、事情を説明していく。
「彼の父親は、シーハーツの有力な貴族の一人で、多数の金鉱や銀鉱を有しております。先の戦争で我が国の財政は逼迫し、彼の父が所有する金鉱などが最後の財源なのです。そんなおり、彼らがシランドへ来た際、偶然あなたの事を見かけ、子息が一目惚れしてしまったそうなのです」
 そこで一度話しを区切った女王は、紅茶をひとつ飲んだ。
 マリアは肖像画をじっと見ながら、何かを考えていた。
 肖像画に描かれている男は、いかにも優男といった感じがある。
「つまり、この見合いを断れば、今後その貴族からの援助は得られない、と?」
 目だけを女王に向ける。女王はその察しの良さに、感銘を抱いていた。
「ええ、そういう事です。どうか私の顔を立てると思って、御願いできませんか?」
「…」
 マリアは肖像画を女王に返すと、瞳を閉じ、顎に手をあてて考え出した。
(ここで断るのは簡単だけど、そうすると今後、私たちのシーハーツ内での行動に制限が出る。現在の私たちの事を考えると、それは得策じゃない …はぁ、しょうがないわ)
 やがて瞳を開くと、まっすぐに女王を見据えて口を開く。
「わかりました。今回だけはお受けします」
「そうですか。では、明日にでも場を設けますので。あ、それとフェイトさんたちには言わないでくださいね。みなさんと相手に在らぬ誤解を招きますので」
 そういうと、女王はそそくさと部屋を出ていった。

「ごめんなさいね、フェイト…」
 ここにはいない想い人に、マリアは心から謝罪していた。


 そんなこんなで当日。
 マリア以外のメンバーは、女王からの依頼でペターニへ向かっていた。最初、メンバーの知恵袋であるマリアが抜けるのを不審に思っていたが、その代わりにとクレアが同行する事になった為、一行は用意を済ませた後、シランド城を後にしていた。

 そのころ、マリア客室では

「はぁぁぁぁ…」
 蒼のフォーマルドレスに身を包み、用意を既に整えていたマリアが、盛大なため息をもらしていた。
「マリアさん、準備はよろしいですか?」
 ノックと同時に入ってきたのは、今回の話しを持ってきたロメリア女王。
「はい、大丈夫です」
「では参りましょう。既に先方は、白露の庭園でお待ちになってますよ」
 そういって、気の乗らないまま白露の庭園に向かった。

 白露に庭園には、既にお茶会の用意がなされていた。
 そして、そのテーブルには二人の男性が座っていた。片方は見覚えのある優男。もう一人はおそらく彼の父親である有力貴族であろう。黒いスーツに身を包み、髪と髭は真っ白である。
「やあ、マリアさん!こうしてお茶会にお招き下さって光栄です」
 優男はマリアの姿を見ると、そういって席を立ち、こちらに近づいてくる。
「はじめまして。マリアと申し・・・!」
 その優男は、あろうことかマリアの左手を取ると、その手にキスしようとしてきた。それに慌てたマリアは、取られた左手を強引に引っ込めた。
「マリアさん?」
「あ、ごめんなさい… こういう挨拶にはなれてなくて、ほほほ」
 強引にその場を取り繕うと、自分も席に着いた。正直、その時には全身に悪寒が走っていた。フェイト以外の人間に、たとえ手とはいえキスされるなど、耐えられるものではない。
「ははは、純粋な方ですね。ますます貴女の事が好きになりましたよ」
 相手の優男もそういうと、再び席に着いた。女王が内心穏やかではなく、彼の父親はそんな二人を実に微笑ましく見ていた。
 それからしばらく、マリアはお茶を片手に話しをしていた。話しと言うよりも、一方的に男が話しているのを聞いていたり、曖昧な返事をしているだけであったが。
「さて、そろそろ我々は席を外しましょうか」
 父親がそういうと、女王もそれに同意して席を外した。それが、ある意味悲劇の始まりであった。もちろん、優男のである。

(どうにか早い事話しを終わらせてしまわないと)
 マリアがそう考えている時、ふいに相手の口調が変わってきた。
「マリア、おまえには選択する権利はないんだよ」
 いきなり呼び捨てである。さすがのマリアもカチンと来たらしく、穏やかな口調ではなく詰問する様な口調で話を続ける。
「それって、どういう意味かしら?」
「おまえがこの話を断れば、親父は援助をしないというだろう。この国が元通りになるには、お前が俺の妻になるしかないんだよ。へっへっへ」
 下卑た笑いを上げながら、マリアの胸や尻を凝視していた。すでにマリアは悪寒と通り越して、冷徹な怒りがわいてきた。
「さあ、ここで誓いを上げようぜぇ」
 そういって近づきマリアを抱きしめると、強引に唇を奪おうとしてくる。必死にそこから逃れようとするが、いつもの動きやすい服ではないため、どうしても旨く抜け出せない。
「や、やめて!」
「さあ、もう諦めようぜぇ…ん~」
「ヴァーティカル・エアレイド!!」
 優男の口がまさにマリアの唇に触れようとしたその時、聞き覚えのある声と共に、すさまじい衝撃が優男をテラスの淵にはじき飛ばした。
「ごげはぅ!」
「ふぇ、フェイト」
 そこにいたのは、まさしく彼女の想い人フェイトであった。
 その形相は、いつもの穏やかな微笑みを浮かべる彼とはかけ離れた、怒りそのものであった。
「貴様、マリアに何をしようとしていた!」
「ひ、ひぃぃ… なんだよ、お前はぁ」
 その余りの形相と迫力に、優男は失禁していた。
「答えろ、何をしようとしていたんだ!」
 剣の切っ先を相手の喉元に突きつけながら問いつめるフェイト。
「そ、その女は俺の者になるんだよ。キスしようとして何が悪いっていうんだよぉ」
「!!!!」
 その言葉に、フェイトの頭は真っ白になり、喉元に当てていた剣をそのまま突き刺そうとしたその時、威厳ある声が響いた。
「お待ち下さい、フェイトさん」
「女王陛下…」
 そこに現れたのは、先程の衝撃音を聞きつけたロメリア女王と、優男の父親である。父親は顔を真っ青にして優男の元へ向かった。
「どうしたんじゃ、この有様は」
「パパぁ… こ、こいつが僕を」
 ぼろぼろ涙を流しながら、父親にしがみつく優男を見て、マリアは心底こんな男にキスされなくて良かったと、場違いながら思っていた。
「女王陛下!今回の件、相応の手段を取らせて頂きますぞ!!」
 そう吐き捨てると、有力貴族達は白露の庭園を後にした。
「マリア、女王陛下。どういう事か説明してくれるんだろうね?」
 いまだ怒りが静まらないフェイトは、二人に向かってそういった。ばつの悪そうなマリアに変わって、ロメリアが説明した。やがて事情を聞き終えたフェイトは、いつもの穏やかな微笑みを浮かべていた。
「なんだ、そういう事だったのか…」
「ごめんなさい、フェイト。あなたに黙っていたばかりに…」
「いえ、悪いのは私です。いくら財政難を立て直すためとはいえ、この様な事をしてしまったのですから」
 女王はそう謝罪すると、そのまま庭園を後にした。残った二人はしばらく外を眺めていた。
「でも、僕も酷い男だよな」
 何気なく漏らしたその言葉に、マリアは驚いて彼の顔を見た。
「いつも君のことを信じているはずだったのに、さっきの男の言葉で君に猜疑心を持ってしまった。最低だよな」
「そんなことないわ」
 マリアはそんな彼を抱きしめると、彼の胸に顔を埋めて言葉をつなぐ。
「あそこであなたが来てくれて、本気で怒ってくれていた。私はそれだけあなたに愛されているんだなって思った。信頼と猜疑、二つの気持ちを天秤に乗せているからこそ、愛しあって居ることを感じられるのだから」
 マリアのその言葉に、フェイトは彼女の唇に一つキスをした。彼のキスをうけたマリアは、やっぱり自分は彼しか愛せないと、心の底から感じた。
「でも、今回の件で女王陛下には迷惑をかけちゃったよな」
 キスを終えたフェイトは、頭を掻きながら反省していた。しかし、マリアはクスッと一つ笑うだけであった。
「マリア、どうしたんだい?」
「大丈夫よ、フェイト。全部わたしに任せて置いて。私にあんな事しようとしたあいつらに、一泡吹かせてあげるから」
 そういって、二人は庭園の後にした。

 一連の事件のあった庭園には涼やかな風が流れていた。


 その後、あの有力貴族が、女王の指示以上の金を不正に採取して、私腹を肥やしていた事が突如判明し、貴族は財産の全てを没収され、所有していた金鉱と銀鉱は全て国の管理下に置かれることとなった。この一連のスキャンダル発覚の影には、すさまじく頭の切れる蒼髪の少女が居たという。
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2009.10.12 09:34 | 未分類 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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