トワイライトの怠惰な図書室

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スターオーシャン3フェイファリ小説。BMW様へ投稿した分です。
選択

「だいたい、フェイトは女心ってものが解ってないんだよ!」
「そうよそうよ、全然わかってないわ!」
 目の前で二人の女性が、向かいに座っている蒼い髪の青年に愚痴をこぼしていた。その目は酒におぼれており、吐く息も酒臭い。顔は当然のごとく真っ赤だ。
「はぁ…」
 青い髪の青年はそんな二人の女性に、曖昧な返事を返すしかなかった。
(なんでこんなことになっちゃったんだ…)
 
 ことの始まりは数時間前にさかのぼる。

「この猫娘! フェイトは私と出かけるのよ!」
「なんですか、この腹黒女! 勝手に決めないで下さい!」
 アリアスの宿屋で一泊することになったフェイト達一行は、宿について早々、アリアスを見て回ろうと言ったソフィアの言葉に、マリアは真っ向から食いついた。
「マリアさんにはやる仕事があるんでしょう!」
「それは貴女だって同じでしょう!」
 エンドレスに続くと思われるこのやり取りに、終止符を打ったのは、以外にもミラージュであった。
「まあまあ二人とも。これでも飲んで落ち着いて下さい」
 そういって差し出したのは、透明な液体の入った二つのグラス。興奮状態で延々と罵声を浴びせていた二人は、喉の渇きを潤す為に、一気に中身を煽った。しかし、中に入っていたのは水ではなかった。
「! げほっ!」
「これ、お酒じゃない!」
「ええ。興奮状態のお二人には、ちょうど良いかと思いまして」
 さらっととんでもないことを言い放つミラージュ。しかし、一気に飲んだ反動はすぐさま顔に表れた。
「ふにゃぁ…」
 ソフィアはあっという間に酔って、そのままもたれかかる様に座り込んでしまった。
「これ、ものすごく強烈なんじゃ…」
 振り向いたマリアの声に、ミラージュは店の人にたずねていた。
「先程のお酒、何度なんですか?」
「え。ああ、60度だね」
 酒瓶のラベルをみながら言う店員の声に、流石のマリアも一気に腰に来たのか、真っ赤になってへろへろのソフィア同様座り込んでしまった。
「さあ、フェイトさん。今の内に」
 そういって囁くミラージュに感謝の声を一つかけ、早々にその場を後にしようとしたが、事はそう簡単にはいかなかった。
「待ちなさい!」
「まだ話は終わってないよ!」
 がしっと二人の女性に腕をつかまれ、そのまま向かいの椅子に座らされてしまった。二人とも目が据わっていた。
「み、ミラージュさん…」
 助けを求める様に視線を向けるが、ミラージュの「ごめんなさい…」という表情で顔の前で手を合わせ、他の仲間は早々にその場からいなくなっていた。もうこれで、逃げ場がどこにも無いという事を悟った。
「マスター! さっきのお酒お代わり!」
「私も!」
 こうして、二人の絡み酒に付き合うことになっていった。

 既に10杯以上は開けていると思われる二人は、尚も酒を浴びる様に飲んでいた。フェイトはマリアもソフィアも、こんなに飲めるとは思わなかったという顔をしているが、おそらく今までの鬱憤が爆発した反動もあるのだろう。
「いい加減にしてくれ…」
 フェイトは若干泣きの入った声でそういったが、目の前の二人は尚も愚痴をこぼし続ける。
「ちょっと、聞いてるのフェ… イ、ト」
「そうだよ! ちゃんと、聞い… て…る」

 バタン!

 突然二人は、グラスを握りしめながらテーブルにうっつぶしてしまったかと思うと、そのまま寝息を上げ始めた。
「なんで急に…」
「こんばんわぁ、フェイトさぁん」
 突然第三者の声が上がり、声が上がった宿の入り口に目を向けると、そこには紫水晶の色を摸した髪を揺らしながら、にっこりと微笑む一人の少女がいた。
「ファリンさん!」
「はぁい」
 そのままフェイトの隣に座ると、うっつぶして寝ている二人を見て笑っていた。
「フェイトさんが困ってる様なので、睡眠の施術で無理矢理寝かせちゃいました」
 仮にも銀河系最強の実力を誇る二人を施術で寝かせるとは、なかなか出来る事ではない。まあ、かなりのアルコールが入っていたことで、あっさりかかったとも言えるが。
「ありがとうございます。助かりました」
「いいえー。それはそうと、どうしたんですかぁ?」
「実は、この宿について早々二人で喧嘩を始めて…」
 フェイトはこの次第をファリンに説明しだした。
「そうだったんですかぁ」
「まったく…」
 フェイトはため息を吐いて言葉を句切るが、聞いていたファリンは何か考える様に目を閉じていた。そして、おもむろにこう切り出した。
「…フェイトさん。ちょっと表に行きませんかぁ?」
「ええ、いいですよ」
 フェイトは宿の人に、二人を部屋に運んで貰う様にお願いすると、少し多めの金貨をテーブルにおいて宿を出た。

 二人はしばらく黙って歩いていたが、やがてアリアスでも一番大きな木の下にたどり着いた。
「ん~ ようやく一息付けた感じですよ」
 フェイトは大きくのびをし、木の幹に腰を下ろした。ファリンはその隣で微笑みながら、そんなフェイトを見ていた。
「いくら世界を救う為とはいえ、毎日が激戦ですからねぇ」
「ええ。でも、もう少しで終わりそうです」
「そうですか…」
 しばらく黙って風を感じていたが、やがてファリンは立ちあがると、フェイトの前に立ち、おもむろに言葉を紡いだ。
「フェイトさん」
「はい」
「あなたの心には、誰が居るのですか?」
「えっ…」
 突然の言葉に、フェイトもその意味を察することが出来なかった。おもむろに見上げると、ふわふわしたつかみ所のない天然な彼女ではない、初めて見る真剣な光をその深紅の瞳に宿した彼女。フェイトは思わずそんな彼女に魅入ってしまった。
「どういう、意味ですか?」
 そう呟くのが精一杯だった。その言葉に、風に靡く髪を手で押さえながら、ファリンは言葉を繋いだ。
「マリアさんもソフィアさんも、そしてネル様やクレア様、タイネーブも貴方のことを想い、愛しています」
「はい」
「多くの女性に想われ、今なお一人を選べずにいる。これは、フェイトさんを慕う女性に取って、残酷なことではないでしょうか?」
 ファリンの言葉は尚も続く。
「あなたに選ばれた女性は、幸福を得ることが出来るでしょう。選ばれなかった女性は一時の悲しみこそあれ、それを乗り越えれば、また新しい愛を探すことも出来ます。ですが、それが決まらなければ、その女性は新しい愛を探すことも出来ず、もしかしたら生涯貴方に選ばれるかも知れないという淡い思いを抱いたまま、暮らしていくことになるかも知れません。そう、思った事はありませんか?」
「…」
 言い返せなかった。確かに自分のしていることは、残酷な期待をいつまでも背負わせていることに他ならないからだ。フェイトは考え込むかの様に、再び視線を下へと降ろしてしまった。
「だから、私は聞きました。あなたの心には、誰が居るのですか、と」
「それは…」
 先程ファリンが上げた女性はみんな魅力的な女性ばかりだ。自分には勿体ないと思うほどに。しかし、誰か一人を選ぶとしたら、それはどうしても出来そうになかった。
「…」

 すっ…

 不意にファリンの手がフェイトの右頬に添えられた、はっとして見上げると、月光を背に紫水晶の髪を靡かせ、その深紅の瞳で優しく自分を見つめながらファリンは微笑んでいた。今度こそ、フェイトはその幻想的な美しさを持つファリンに、自分の身と心、全て惹かれた。
「ファリン、さん」
「今すぐに選ぶことは出来ないと思います。でも、いつか必ず選択するときが来ます。それまでに、どうか決めてあげて下さいね」
「はい…」
「お休みなさぁい、フェイトさぁん」
 いつもの口調に戻ったファリンは、そのまま領主館へと戻っていった。そんなファリンを見送りながら、フェイトの心には、彼女の存在と言葉が大きくなっているのを感じていた。
(ファリンさん… どうして、こんなにも彼女の存在と先程の言葉に強い想いを抱いているんだろう。マリアやソフィア達には感じたことのない、強くて深い想い。ああ、そうか…そういう事なんだ)
 その気持ちに気づいたフェイト。どうして先程上がった女性を選ぶことが出来ないのか。それは本当に想い、愛する事が出来なかったからだ。だけど今は違う。いま、それを見つけることが出来た。唐突に、だけど確かな想いを。

 翌朝、案の定ソフィアとマリアは酷い二日酔いで、とてもではないがベットから起き上がれる状況ではなかった為、もう一日休みとなった。
「さてと… どうしよっかな」
 とくにすることもなかったフェイトは、アリアスをぶらぶらと歩いていると、教会から美しい旋律が聞こえてきた。
「これは… だれが弾いてるんだろう」
 そっと演奏を邪魔しない様静かに中に入ると、祭壇の横にあるパイプオルガンを弾いている一人の女性の姿があった。その女性を見た瞬間、フェイトの心が大きく鳴った。
「ファリンさん…」
 どうやら演奏しているファリンは、フェイトの存在に気づいていない様で、一心不乱にパイプオルガンを奏でていた。
「……」
 フェイトもまた、その演奏を静かに聴いていた。曲名などは解らないが、ファリンの強い願い、想いなどを感じるその旋律は、教会内にいる全ての人の心に響き渡っていた。
 やがて、終焉曲が響き渡ると、ファリンは一つ息を吐いて立ちあがった。

 パチパチパチ!

「フェイトさん」
「凄く良かったですよ、ファリンさん」
「あ、ありがとうございますぅ」
 照れながらもそう返すファリンに、フェイトはお茶でもどうですかと誘い、二人は近くのカフェに行くことになった。
「それにしても、ファリンさん。さっきの曲は何という曲なんですか?」
 その問いに、ファリンは紅茶を一口飲むと、言葉を繋いだ。
「あれはぁ、妖星乱舞という魔王を倒す勇者達を称えた曲ですぅ。私が唯一演奏できる曲なんですよぉ」
「妖星乱舞…ずいぶんと面白い名前ですね」
「いま、フェイトさん達は世界を滅ぼす魔王と戦っていると聞きましたぁ。だからぁ、せめて皆さんの無事を祈る為にと思いましてぇ」
「ファリンさん…」
「…明日、魔王の居る世界へ向かわれるのですよね」
 ファリンのつぶやきとも思える言葉に、フェイトは小さく頷いた。
「無事に、帰ってきて下さいねぇ…貴方を待つ、人の為に」
 儚く微笑むファリンに、フェイトは意を決したかの様に言葉を繋いだ。
「…ファリンさん。昨夜、僕に言いましたよね。一人の人を選ばないのは、残酷なことだって」
「はい」
「だけど、明日創造主の世界へ行き、無事に帰れる保証はありません。だから、今僕の心にいる人へ、明日想いを告げたいと思います」
 その言葉に、ファリンの胸はズキリと痛んだ。昨夜、あの女性達の中に自分の名前を入れなかったのは、選ばれることはないと思ったからだ。しかし、今フェイトは戦いの前にその心にある女性へ想いを告げようとしている。初めて感じたこの気持ちを、忘れようと思っていたが、やはり面と向かってそんなことを言われれば、自分の醜い部分が出ようとしてしまう。
「そう、ですか…」
「はい」
 ファリンは泣きそうになるのを必至に堪え、笑顔を作ってフェイトの言葉に応えた。
「フェイトさんに選ばれる人はぁ、きっと一番の幸せ者ですぅ」
「ありがとうございます、そう言ってもらえると、勇気が出てきます」
 それから彼が何を言っていたのか、正直殆ど覚えていない。頭の中にあったのは、自分の知っている人と結ばれるフェイトを、明日見なければならないのだという事。絶望にも似た悲壮感がいつまでも胸の中に残っていた。

 翌朝。二日酔いから脱したソフィアとマリアを加え、全員はペターニ方面への入り口に集まっていた。
「フェイトさん、皆さん。どうか無事に戻ってきて下さいね」
 クレアはそういって、頭を下げた。隣にいたタイネーブとファリンもまた、それに習って頭を下げる。
「それじゃ、いくか!」
 クリフの声に、全員が歩き出そうとしたとき、フェイトの声が響いた。
「待ってくれ。一つ、言いたいことがあるんだ」
 その言葉に、ファリンの心は震えた。昨夜から忘れようとしていたあの場面を、見る瞬間が来たのだと言うことに。
「どうしたの、フェイト?」
「ああ。創造主の世界へ行けば、正直どうなるか解らない。だから今、自分の気持ちを、はっきり伝えたいと思ってね」
 その言葉に、マリアとソフィアはもとより、クレアやネル、タイネーブの胸も大きく高鳴った。対照的に、ファリンの顔は今にも泣き出しそうだった。
「それって…」
 誰のつぶやきとも解らぬ言葉と共に、フェイトの足はその五人が予想していなかった人物の元へ向かっていった。
「ファリンさん」
『!!!!!』
 その言葉に、ファリンは驚きを顔に貼り付けて、恐る恐るフェイトを見上げた。他の五人は既に石化してしまったかの様に立ち尽くしてしまった。
「フェイト、さん…」
 かすれる様な呟きの後、ファリンの身体はフェイトの腕の中に居た。
「必ず帰ってきます。だから、またあの曲を聴かせて下さい」
「あ、ああ…」
「…愛しています、ファリンさん」
 その言葉と同時に、ファリンの瞳は堰を切った様に涙があふれ出した。フェイトはそんなファリンを強く抱きしめた。
「泣かないで、泣かないでファリンさん…」
「フェイトさん、私、私は…」
「あの時の様に笑って下さい。その笑顔を胸に、僕は行きますから」
 愛しい人の笑顔で言うその優しく甘美な声に、ファリンは涙でぐしゃぐしゃになった顔で必至に笑顔を浮かべた。
「私も、私もフェイトさんを愛してます! だからいつまでも待ってます!」
「はい」
 ファリンはその時のフェイトの笑顔を、いつまでも忘れることはなかった。

 余談ではあるが、フェイトとファリンが想いを交わし合ったその日以降、ファリンの仕事量が激増し、休暇が取れないほど忙しくなったとのこと。しかし、フェイトが創造主の世界へと向かっている時、折を見ては教会であの旋律を奏でていた… 魔王を倒す勇者達を称えたあの曲を。

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2008.10.05 10:28 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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