トワイライトの怠惰な図書室

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 スターオーシャン3フェイファリ小説。バイエルンブルグ様に投稿させて頂いた作品です。
春の祭典

 毎年春、シランドでは咲き乱れる桜並木の下で、盛大な祭典が開かれる。この日ばかりは訪れる旅人にも酒が振る舞われ、街中が新しき春の到来に感謝を捧げるのである。フェイト達一行もたまたまFD世界から戻ってきた日が、祭典の真っ最中であった為、日頃の疲労を癒す為に、この祭典に参加していた。
「うわぁ!すっごく綺麗!」
 盛大に咲き乱れる桜並木を見たソフィアは、その美しさに大声を上げて感動していた。
「なかなか地球では、こういった風景は無かったからね」
 その隣を歩いているフェイトも、一時この光景に見ほれていた。
「今日は街中で無礼講なんだ。食べ物も酒も沢山用意しているはずだよ」
「ほんとか、お姉様!」
「あたし、もう我慢できない! 先に行くねー!」
 ネルの言葉に、真っ先に反応したのはお子様組のロジャーとスフレ。街中に漂う良い臭いをかぎながら走り出した。
「あ、待ってよスフレちゃん」
 その後を慌ててソフィアも追っていった。
「ふふふ。じゃあ、我らは飲み比べと行こうかのう、クリフ殿」
「おっしゃ! アスベルとネルもつきあえよ」
「ふん、仕方ない。つきあってやる」
「しょうがないねぇ、まったく」
 アドレーの言葉に、大人組の大半は近くの酒場に繰り出していった。
「ミラージュ、悪いけど城に行くから付き合ってくれる? 女王陛下への報告と、今後の事を考えたいのよ」
「はい、解りました」
「あれ、マリアはお祭りを楽しまないのかい?」
 不思議そうに訪ねるフェイトに、マリアは苦笑を一つ浮かべていた。
「人混みが苦手なのよ、私。フェイトはゆっくり楽しんでね」
 そういって、ミラージュをつれてシランド城へ向かっていった。

「さて、僕はどうしようかな… あれ、あの人は」
 そう言いながら桜並木の方に目をやると、見慣れた人がベンチに座っていた。どうやら手近のお店で貰ったお花見団子を食べているようだ。
「こんにちわ、ファリンさん」
「ふえっ! ふぇ、フェイトさん!」
 止まることなく次々とお団子を食べ、お茶を飲んでいたファリンは、突然かけられた声に驚いて振り返った。
「ごめんなさい。驚かせちゃいましたか?」
「そ、そんな事ないですぅ…」
 ファリンの横にあったお皿はゆうに十枚以上重なっていた。それをみたフェイトは小さく笑ってしまった。
「花より団子、ですね」
「は、恥ずかしいから、見ないで下さーい」
 真っ赤になって俯いてしまったファリンに、さらに深く笑みを浮かべるフェイト。
「お一人なんですか?」
「えっとぉ、最初はタイネーブと来る予定だったんですけど、急にクレア様と仕事が入ってしまったので、私だけで来ましたぁ。フェイトさんもお一人なんですかぁ?」
「ええ。みんな、それぞれ食べ物やお酒を求めて行ってしまいました。僕はちょっと出遅れた感じなんですけどね」
「そうなんですかぁ」
 ファリンの返事に、フェイトは「そうだ」という感じで切り返してきた。
「もし良かったら、一緒にお祭りを見て回りませんか?」
「え?」
 ファリンの声に、フェイトはばつの悪そうな表情を浮かべた。
「あ、もしかして迷惑でした?」
 その言葉に、ファリンはまさしく飛びつく勢いで切り返してきた。
「そ、そんなこと無いです! 是非一緒に見て回りましょう!」
 少なからず好意を寄せている相手からのお誘い。ファリンはまさしく舞い上がる程の喜びを感じていた。
「じゃあ、行きましょうか」
 そういって、フェイトは左腕をファリンに差し出す。ファリンは一瞬戸惑ったが、その左腕に自分の右腕を絡めた。

 それから二人は桜並木の下をゆっくりと歩きながら、いろいろなお店を見て回った。途中大食い競争に参加していたロジャーとスフレの食べる量に驚き、ソフィアの作る料理に大勢の人だかりが集まり、クリフ達が片っ端から振る舞い酒を飲み干す光景に呆れていたが、自分たちも手近な屋台で出される料理や飲み物に舌鼓を打ち、輪投げなどの遊技に興じていた。そんな中、広場の一角から威勢の良い声と共に、取り囲む人たちの声が響き渡った。
「さあさあ、他に挑戦者はいないかい! この男に腕相撲で勝ったら、この金貨100枚を贈呈するぜ!」
 体格の良い男の隣で、恰幅の良い親父が金貨の入った袋を掲げながら声を上げていた。その声に、力に自信のありそうな男達が挑んでいくが、悉く敗れていった。
「フェイトさんも、参加してみたらどうですかぁ?」
「え、僕ですか…」
 ファリンの無邪気なお願いに、思わずフェイトは素っ頓狂な声を上げた。
「大丈夫ですよぉ。フェイトさんならきっと勝てます!」
「んー… そうですね。解りました」
 そういって、フェイトは腕相撲のテーブルに歩み寄った。
「お、次はお兄さんが挑戦かい?」
「ええ。宜しくお願いします」
 フェイトの細腕を見た男は、グフフと低く笑った。
「そんな棒みたいな腕で、俺に勝てると思ってるのかい、兄ちゃん」
「試してみないと、解りませんよ?」
 そういって、フェイトは腕相撲テーブルに腕をのせる。男もそれに答えて腕を乗せる。
「それじゃ、よーい、始め!」
 親父の合図と同時に、男は精一杯の力を込めてフェイトの腕を倒そうとするが、フェイトの腕は一向に動かなかった。
「ふぬぬぬぬぬぬ… ぐはぁ、はぁはぁ…」
「もうおしまいですか? じゃあ、次は僕の番ですね」
 そういって、フェイトはふっと息を吐くと、一気に力を込めて男の腕を倒しに掛かった。男は精一杯抵抗しようとしたが、ほんの数秒で男の腕はデーブルに叩き付けられ、さらに男もその力の勢いに負けて、地面に叩き付けられてしまった。
「ぐわっ!」
「ああ、すみません… そんなに力を込めたつもりは無かったんですけど」
 そういって、男に手を差し出した。男と親父は余りのことにあっけにとられたが、やがて親父の大笑いの声が響いた。
「は、はは……はっはっはっはっ! お兄さん強いねぇ! あんたの勝ちだ!」
 その声と同時に、取り囲む人たちからも歓声が響き渡った。
「やったぁ! 流石フェイトさんですぅ!」
 ファリンもその凄まじい勝ちっぷりに、フェイトの正面から抱きついた。
「ふぁ、ファリンさん…み、みんな見てますよ」
「もー 格好良すぎですよぉ、フェイトさん!」
 フェイトの声も何のその、ファリンの感激は止まらなかった。
「さあ、もう一度盛大な拍手を!」
 親父の声に応え、全員が拍手喝采を上げた。
「さ、行きましょうフェイトさん」
 二人は取り囲む人たちに、手を振って答えながら広場を後にした。

「それにしても、本当に強いんですねぇ、フェイトさん」
 手近なベンチに腰を下ろした二人は、ファリンが用意したお茶を飲みながら一息ついていた。
「まあ、毎日戦闘をしてますからね。あれくらいは」
 フェイトの力は、既に十人の仲間達の中でもトップクラスの強さを誇っていた。いくら力に自信があるという男であっても、激戦を駆け抜けているフェイトに勝てるはずはなかった。
「本当格好良かったです、フェイトさん」
 そういって笑うファリンの笑顔に、フェイトは思わず顔を赤くしてしまった。
「あ、ありがとうございます…」
「それじゃ、またお店を見て回りましょー」
 再び腕を組んで歩き出した二人は、手近な露天のお店に入った。そこは装飾品を扱っているお店らしく、様々なかわいらしいアクセサリーが所狭しと並べてあった。
「わぁ、可愛いですぅ」
 ファリンは次々と手を取っては、自分の胸や指にアクセサリーを身につけていた。そんな中、ふとフェイトは一つのアクセサリーに目がとまった。それは桜の花を模ったピンクサファイアのイアリングだった。
「これなんかどうですか?」
 そういって、ファリンの耳にイアリングを付けてあげた。ファリンの紫髪の中で一際そのピンクサファイアは輝きを放っているようだった。
「わぁ、これ凄く可愛いですねぇ」
「お嬢さん、凄く似合ってるよ。お兄さん、これでどうだい?」
 そういって、店主はフェイトに指を3本立てた。フェイトは一つ頷くと、先程貰った金貨袋から金貨を取り出し、店主の手に乗せた。
「え、フェイトさん! そんな、悪いですよ!」
「いいんですよ。今日こうして付き合ってくれてるお礼ですから」
「フェイトさん… これ、私の宝物にしますぅ!」
 にこっと笑うフェイトに、ファリンは真っ赤になりながらも、フェイトからの贈り物に感激していた。

 露天商を後にした二人は、さらにいろいろなお店を回り、最後に夕食を取ったときには、既に祭典はクライマックスを迎えていた。
「あ、感謝の舞が始まりますよ」
 先程フェイトが腕相撲をしていた広場では、春の訪れに感謝を捧げる舞が始まった。激しい音楽に合わせて、燃え上がる炎の周りで踊り子達がその音楽に合わせるように踊っていた。
「凄く激しい踊りと曲ですね」
 初めて見るフェイトは、その光景に感動しているようだった。隣にいたファリンはそんなフェイトに声をかけた。
「この踊りは、元々は一人の踊り子が死ぬまで踊り、そして、その踊り子を生け贄に捧げて春の訪れを神に感謝する、というものだったんですよ。最もそんな習慣は水分昔になくなり、今はこうして多くの踊り子さんが踊ることで、その踊りを神に捧げることで、春の訪れを感謝しているんです」
「へー… そんな事が」
 二人はそんな感謝の舞を、最後まで寄り添いながら見ていた。

「楽しかったですね、ファリンさん」
 満月がムーンリットの橋を照らす中、フェイト達は祭りの余韻がまだ消えない街から離れ、二人だけで空を見上げた。幾万の星が空を彩るその光景は、あらゆる芸術作品をも上回る美しさと言えた。
「はぁい。とっても楽しかったですー」
 ファリンもそんなフェイトの声に、笑顔を持って答えた。
「…最後に、こんなすてきな思い出が作れて良かった」
「え…」
 フェイトのつぶやきに、ファリンは思わず声を上げた。
「僕たちは明日、エクスキューショナー達を送り込む張本人、創造主の居る世界へ行きます」
「フェイトさん…」
 そこまで言うと、フェイトはまっすぐにファリンを見つめた。ファリンもその強い眼差しから目が離せなかった。
「生きて帰れる保証はありません。だから、こんな素敵な思い出を作れて、本当に良かったです。ファリンさん、ありがとうございました」
 その言葉を残して、フェイトは宛がわれた宿へ戻ろうとした。そんなフェイトの後ろから、ファリンの声が響いた。
「フェイトさん!」
 その声に振り返ると、ファリンが再びフェイトに抱きついた。フェイトの胸に顔を埋めながらも、うわずった声で言葉をつなぐ。
「帰ってきて下さい… 絶対に、生きて帰ってきて下さい…」
「…ファリンさん」
「私、フェイトさんの帰りを待ってます。私、私はフェイトさんが…」
 しかし、その言葉は最後まで繋がることはなかった。その唇に、フェイトの唇が重なったからだ。
「ありがとう… 僕もファリンさんが大好きです。絶対、生きて戻ります」
「フェイトさん… 約束ですよぉ」
 二人は離れていても、互いのぬくもりを忘れないかのように、静かに互いを抱きしめた。そんな二人に、春風は桜の花びらを纏いながら、二人を包み込んでいた。


 後日、フェイト達は創造主との戦いに勝利できたものの、最後の最後でルシファーは銀河消滅のプログラムを発動し、世界は終わりを告げようとしたその時、フェイトの内に眠るディストラクションの力で、消滅プログラムを破壊し、みんなが望んだ世界を創造した。
 しかし、力の解放にかかった負荷はフェイト自身を飲み込み、フェイトは仲間達の前で、まるで淡雪のように消え去ってしまった。最後に残した言葉は、再会を約束した愛する少女の名であったという。

 彼の帰りを心待ちにしていたファリンに告げられたその事実は、彼女自身の心を完全に破壊し、数日後、彼と再会を約束したムーンリットの橋から身を投げた。
 彼への強い想い故に、彼女は彼の後を追う事を選んだのだと、彼女を知るもの達は皆、悲しみを込めてそう言ったという。
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2008.04.04 06:26 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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