トワイライトの怠惰な図書室

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 スターオーシャン3フェイマリ小説。幸せなプレゼントと、彼の本心。

「幸せ」の誕生日

 もうすぐ近づく地球歴での7月21日。私はこの日が大嫌いだった。だけど、今日この日は今までのそんな嫌な気持ちなど、全て無くなってしまう程素晴らしい日に変わった。あの人のお陰で…

「はぁ… もうすぐ来てしまうのね」
 クォッドスキャナに表示されている地球歴のカレンダーを見ながら、マリアは深いため息を吐いた。
「7月21日」 この日は自分が誕生した日であると母から教えられた。幼い頃のマリアはこの日が来る事を毎年心待ちにしていたが、お祝いしてくれた義理の両親は既に亡く、この日が来るたびに優しかった両親を失った事実を突きつけられるような気がして、いつの間にかこの日が嫌いになっていた。
「お父さん、お母さん…」
 いつの間にか頬に涙が伝っていた。クォークのリーダーとして常に気丈に振る舞う事を自分に科してきたのに、いつからこんなに弱くなってしまったんだろう。その理由は既にわかっている。今まで心の底から頼る事など誰にも出来なかった自分が、初めて頼る事を教えてくれた人。禁忌の力の繋がりと、同じ色の髪と瞳、そして常に前を向いて歩く事を忘れない人。そう、フェイト・ラインゴットの存在である。
「よりにもよって、彼とこの日を迎える事になるなんて… 皮肉ね。再び愛する人を失うかも知れないのに」
 エクスキューショナー達と激戦を迎えている今、元から自分の誕生日の事など言えるはずもなく、そして何より激戦中にお祝いして貰ったとしても、その次の日には別れが待っているかも知れないという事実が、彼女の中の気持ちを閉じこめてしまっていた。
「そう。今までと同じ、7月21日が来て過ぎていく… そう、それだけよ」
 そういってクォッドスキャナをポケットにしまうと、そのままみんなが待つロビーに向かった。

 7月21日。何も変わらない日常の時間が過ぎていく中、一行はペターニに一泊する事になった。全員が各々部屋に戻る中、フェイトも荷物を部屋に置いて外に散歩に行こう思い、ドアノブに手をかけた時、ドアの向こうからマリアとミラージュの話し声が聞こえてきた。
「そういえば、今日は貴女の誕生日でしたね。お祝いしましょう」
「ミラージュ… いいのよ、そんなに気にかけなくても」
「しかし」
 そっけなくそういうマリアに、ミラージュは少し顔をしかめる。
「今は戦いの最中なんだから、お祝いなんて不謹慎よ。だから、みんなにはその事を言わないでね」
「…解りました」
 そのまま二人は同じ部屋に入っていった。その会話を聞いていたフェイトは、ドアの向こう側で固まってしまっていた。
(今日誕生日だって… そんな事、今まで一言も言わなかったじゃないか)
 フェイトはその言葉が頭の中に響き渡り、何時の間にか部屋を飛び出し街へと駆け出していた。

 夕食の時間。本来ならばパーティが開催されて居るであろうその食卓は、いつもと変わらない平凡な食事であった。全員が思い思いに言葉を交わしながら食事を済ませ、クリフやネル達大人組はそのまま酒瓶を開けて酒宴に突入し、ソフィアやスフレなどはそのまま部屋へと戻っていった。マリアも纏めなくてはいけない仕事が残っている為、煎れてもらったお茶のポットを片手に部屋へ戻ろうとした時、呼び止めるフェイトの声が聞こえてきた。
「マリア」
「なに、フェイト?」
「あのさ、ちょっとこれから付き合ってくれないかな?」
「いいけど… どうしたの、こんな時間に」
「うん… とにかく一緒に来てくれないか」
 そういって、フェイトはマリアの手を取るとそのまま街へと向かっていった。その際、大人組の好奇心旺盛な視線が二人を突き刺していた。
「いいねぇ、若いってのは」
「クリフ、なんだかお年寄りみたいですよ」
「ふん、くだらん」
「おやおや、ソフィアの激怒する顔が思い浮かぶよ」
 どうやらあの二人が、格好の酒の肴になりそうである。

 フェイトに手を引かれて着いた場所は、街の中心にある教会であった。この時間だと礼拝に訪れる人は誰もおらず、月の光で輝くステンドグラスの美しさが静かな闇の中にあった。しばしマリアはその美しい光景に目を奪われていたが、隣で佇むフェイトの声に振り返った。
「マリア」
「ごめんなさい、フェイト。あんまりにも綺麗だったから、ついつい見取れちゃったわ」
 その言葉にフェイトはいつもの優しい笑顔を浮かべていた。いつ見ても安心させてくれるその笑顔。この瞬間が何時までも続けばいいと、何度も思う優しい笑顔。
「これ、受け取ってくれないか」
 そういって彼は懐から小さな箱を取り出すと、その蓋を開けた。中にあったのは、自分の誕生を司るルビーをあしらった指輪。その指輪を見た瞬間、マリアはなぜフェイトがこの指輪をくれるのか、その理由が頭を過ぎった。
「どうして、知っているの…」
「昼間、君がミラージュさんと話しをしているのを聞いて、ね。 Happy Birthday maira」
 彼は私の指にその指輪をはめながら、耳元で祝福の言葉を囁いた。信じられない程嬉しい気持ちが込み上げてくるのに、その祝福を拒絶する自分がそこにいた。
「やめて!」
「マリア?」
 突然の拒絶に、フェイトは思わず驚きの表情を浮かべた。その時のマリアの表情は、今まで見た事の無い追い詰められた表情であった。
「おめでとうなんて言わないで! あなたもお父さんやお母さんと同じように、私から永遠に離れてしまうかも知れないじゃない!! あんな悲しい思いをするのはもう沢山よ!」
 零れる涙を拭おうともせず、マリアは今までため込んでいた心の闇を吐き出した。そこにいたのは、気丈で気高いマリアではなく、ただただ悲しい思いをしたくないと叫ぶ年相応の少女であった。
「マリア… そんな事、絶対にないよ」
 マリアの叫びを聞いたフェイトは、静かに、しかし力強く泣き叫ぶ彼女を抱きしめた。その暖かさにマリアはいつしか彼の胸で啜り泣いていた。
「僕は絶対にマリアの側から離れないから…」
「嘘よ。そういってお父さんたちは離れていったわ…」
 尚も信じ切れないマリアに、フェイトは胸で涙を流すマリアの顔を自分に向けると、その涙で濡れた唇に自分のを重ねた。
「あ…」
「マリアの過去に何があったのか、それを聞こうとも忘れてとも言わない。だけど、これから二人で築きあげて行く未来は、信じて欲しいんだ」
「フェイト… それって」
 驚きと期待両方を込めるマリアの瞳に、フェイトは今までで最も優しい微笑みを浮かべると、先程私にはめてくれたルビーの指輪を、左の薬指にはめ直し、真っ直ぐに見つめて想いを告げた。
「好きだよ、マリア。今までも、そしてこれからも君と一緒に歩んでいきたいんだ」
「フェイト… フェイトっ!!」
 目の前に、愛する人がいる。そして自分と何時までも居てくれると言ってくれた。これ以上ない最高のプレゼントを、私は受け取る事が出来た。それが私には何より嬉しかった。
「お願いよ。いつまでも一緒に居るって約束してね」
「君が離れたいっていっても、僕は絶対に君を離さない」
 そういって、再び交わされた彼とのキスは、どんなケーキよりも甘く優しい味がした。

「さ、戻りましょう。あんまり遅くなると、みんなに心配をかけるわ」
「そうだね」
 そういって、どちらからともなく寄り添い、腕を組んで教会を後にした。宿屋では二人が腕を組んで戻ってきた事と、マリアの左薬指にはめられた指輪を見た大人組は、この日最高の肴を手にしたそうである。
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2008.03.27 22:14 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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