トワイライトの怠惰な図書室

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スターオーシャン3フェイマリ小説。彼女の望んだ小さな箱庭こそ、全てを捨ててでも望んだ願望だったのだろうか…

箱庭

「なんて、ことを…」
 目の前で血の海に沈んだ幼なじみの物言わぬ姿を見ながら、蒼い髪の青年は隣で幼なじみを殺害した蒼い髪の少女を見てそう呟いた。少女の手には、フェイズガンが握られていた。
「私は、幸せを手に入れるの。たとえ、どんな事をしてでもよ!」
 呆然としている青年の隙をついて、私は青年の腕に注射器を突き刺した。
「うっ! な、なにを…」
「愛してるわ、フェイト… ただ一人、私だけが貴方を愛するの… ふふ、ふふふふふ」
 その時の私の瞳には、おそらく狂気だけしか宿っていなかっただろう。フェイトは最期に私を見ながら、その意識を手放した。

 創造主との戦いが終わった後、私が愛した青年は幼なじみと共に地球へ戻ろうとしていた。最期の最期まで青年の心は私に向かなかった。どんなに強く願い、想いを伝えても、青年は私から離れていこうとしていた。許せなかった… 彼の隣にいるソフィアが、そして何よりもフェイトが。今まで辛く苦しい生活や境遇をしてきた私なのに、その終焉は無情にも報われない想いという形で迎えようとしている。だから私は再びこの手を血で汚すことになると解っていても躊躇わなかった。それ以外、彼を手に入れる手段は残されていなかったのだから。その結果として、彼の愛を掴むことが出来なくても、側にいてくれれば良いのだから。

「ふふ、フェイト… 愛してるわ、愛してるわ」
 あの後、私はフェイトをつれてシランドの外れにある小さな都市にいる。フェイトは私が打ち続けている薬の影響で生気を失っているが、私はそれでも構わなかった。フェイトに打ち続けている薬は、地球でかつて流行していた覚醒剤。快楽を与える代わりに、常用性があり、打ち続けていないと狂気に取り憑かれてしまうという。しかし、彼に喜びを与えるならば、再び私の元から離れないようにする為ならば、私は躊躇うことなく打ち続けた。その後、彼が求めるままに私も身体を開き、彼の欲望に答えた。食べたいと願うものも必ず与え、そしてかつてぼそっと彼が呟いた一言さえも躊躇わなかった…「血が見たい」という呟きも。

「た、助けてーっ!」
「いやぁぁぁ!!」
 普段は静かな街に、悲鳴が響き渡る。そんな悲鳴を聞き流しながら、私は逃げまどう住民達を無差別にフェイズガンの餌食にしていた。周囲に飛び散る鮮血と肉片。そんな光景を見つめるフェイトは、かつての戦いを思い出しているのだろうか、私の大好きな笑顔を浮かべながらその光景を見ていた。
「いやだぁ… 助けてぇ」
 私の足下で、地面に額を擦りつけて命乞いする中年の男性が居る。その周りには既に頭が吹き飛んだり、お腹から内臓が飛び出ている死体が無数に転がっていた。そんな光景を一瞥して足下に転がる死体を蹴飛ばすと、私は命乞いする中年の頭部に銃口を突きつけて静かに宣告した。
「私は平等主義者なのよ。人種や立場も関係なく、等しく平等に…ね」
「そ、そんなぁ!! ひぶっ!」
 その叫びが最期の声となり、目の前の中年はただの肉のかたまりとなり地面に転がった。
「どうフェイト。喜んでくれたかしら?」
 その言葉に、フェイトは虚ろな瞳を向けて微笑んでくれた。その微笑みを見るだけで、私の心は満たされていった。
「良かった。 さ、帰りましょう。また、薬も私の身体もあげるわ」
「う、ああ… あうああ」
 声にならない返事をしながら、私は彼の手を取って自分の住まいに向かった。


 しかし、そんな生活も長くは続かなかった。街の住人達からは殺戮者と呼ばれ蔑まれ、そして何より彼に打ち続ける覚醒剤の影響は、彼の身も心も犯していた。しかし私は、尚も彼に薬を打ち続けた。そうしなければ、自分の信じた何もかもが全て壊れてしまいそうだから。
「フェイト、フェイト…」
「あ、あうあ… うああ」
 もはや言葉は意味を成さず、その視線だけが何かを訴えている。おそらく、恨み言か、それとも悔恨か…そんな事はどうでも良かった。彼が私の側にいる。私を見ているというその事実だけが全てなのだから。
「さ、食事をしないとね。いま、持ってくるからね」
 それが生きている彼を見た最期の光景となったいた。戻ってきた時、既に彼は幼なじみの居る世界へと旅立ってしまった。不思議と涙は出なかった。代わりに聞こえたのは、改変紋章という目に見えない鎖が断ち切れた音のようだった。
「これで終わりか… あっけないものね」
 そういうと、部屋に置いてあった薪に火を付け部屋中に放っていく。見る見るうちに炎は家中を駆けめぐり、周囲の壁を焼き尽くしている。しかしそんな中、私の心は酷く静かだった。
「ようやくこれで全てが終わる。悲しみも、憎しみも、恨んでいたこの人生さえも… 私もいくわ。貴方の隣だけしか、私の居場所はないのだもの」
 身を焦がす炎さえ、今の私には大した問題ではなかった。彼が隣にいないというその事実は、この世界に私を存在させておく意味が無くなったのだから。
「こ、れで… お、わる… お、わるの…よ」

 いったいいつから歯車が狂い始めたのだろうか。彼のことを純粋に愛していたのは間違いないのに。いつの間にかこんな事になってしまっていた。改変紋章のせい? ソフィアのせい? どれもこれも当てはまらない… 解っていた。こうなってしまったのは、他ならぬ自分自身の心の弱さとエゴであるということに。そのエゴが作った小さな小さな私だけの箱庭… その終焉は、自ら放った罪科の炎によって全て焼き尽くされていった。そこには幸せも安息もない。あるのはただ、彼と共にいられたという事実だけであった。
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2008.03.27 22:01 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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