トワイライトの怠惰な図書室

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 スターオーシャン3フェイマリ小説。彼女の望む世界は、もはや現世には無い。

血がもたらす、望まぬ隔て 後編

カツン、カツン…

 静かな地下牢に靴音が響く。見張りの兵士が足音のする方に目を配ると、マリアが水の入ったボトルを手に階段を下ってきた。
「マリア様。この様な場所に如何なされました?」
「フェイトが投獄されていると聞いたのだけど、ここにいるのかしら?」
「は。先程からこちらにおられます」
 マリアはそのまま見張りの兵士を伴って、フェイトの元へ向かった。

「フェイト…」
 フェイトは牢の壁に背を預け、項垂れた姿で眠っている様だった。だがマリアの声を聞くと、気怠そうに顔を上げた。既に酔いは抜けている様だが、酷く窶れた様に見える。
「ああ、マリアか…」
 フェイトの掠れる様な呟きに、マリアは辛そうに顔を歪めると、そのまま隣の兵士に声をかけた。
「開けて下さい」
「しかし、ネル様から明日まで開けるなと言われておりますが…」
「大丈夫。ネルには私から後で言っておきますから…」
「は…」
 兵士は牢の鍵を外すと、そのまま元の場所へ戻ろうとした。しかし、その前にマリアの声が呼び止める。
「もう一度鍵をかけていって構いません。それと、少しの間だけ席を外してくれませんか?」
 マリアはそういって兵士に金貨を数枚手渡し、彼の気配が完全に消えた事を確認すると、ようやく彼に向き合った。
「余り無茶をしては駄目よ」
 そういって、持ってきたボトルを彼に手渡した。フェイトは一気に水を飲み干すと、ようやく一息付けたかの様に大きく息を吐いた。
「ぷはぁ… ありがとう」
 しばらく気まずい沈黙が流れるが、先に声をかけたのはマリアだった。しかしこの時気が付くべきだったのかも知れない… マリアの瞳の奥底に燻っている、得もいえぬ暗い炎に。
「あの、ごめんなさい…」
「え?」
 フェイトは何故マリアが謝るのか解らず、おかしな返事を返してしまった。しかし、マリアはそんな事など気にせず話しを進める。
「私が、あなたときちんと話しをする時間を設けなかった事が、今回の事件の原因なのでしょう?」
「そんな事は…」
 フェイトが続きを話そうとしたその前に、マリアは彼の胸にすがりついた。既に嗚咽が聞こえる。フェイトは優しく抱きしめ、自分と同じ色の髪を何度も撫でた。
「認めたくなかった… あなたと私が兄妹だなんて! ただ一人、あなただけを愛すると決めたこの気持ちは、絶対に間違いないと言えるのに! だから、あなたと話す事で嫌が応にも突きつけられる現実を認めたくなかったの!」
「マリア…」
 フェイトはマリアのその叫びに、彼女もまた自分と同じ悩みに苦しんでいるのだと知った。いつもの美しく気高く、聡明なマリアはそこになく、目の前にいるのはただただ愛する者を失いたくないと泣き叫ぶ一人の女の子であった。フェイトはそんなマリアを居たたまれなく思い、今までのどの抱擁よりも強く抱きしめた。
「フェイト… 私は、私は…」
「マリア… 僕だって君を妹だなんて思いたくない! そして、君を愛するこの気持ちは絶対に間違いない! 全ての人たちに禁忌を犯していると蔑まれ、その果てにあるものが罪科にまみれた茨の道であろうとも、僕は絶対に君と共に居る」
「フェイト…」
 彼の全てを包み込んでくれる抱擁に、マリアは全てを忘れてその暖かさに身を任せた。そんなマリアをみたフェイトは、彼女の耳元でこう囁く。
「…だから、一緒になろう」
 その言葉を聞いたマリアの笑顔は、今までのどんな笑顔よりも輝いていた。そして、互いにどちらともなく唇が重なり、そして互いの全てを求める為に、衣服も羞恥も、罪科の意識も脱ぎ捨て、有りのままの姿になった。


「…フェイト、寝てるの」
 情事の後、眠りについてしまった二人。先に目覚めたマリアは、未だに横で寝息を立てている愛する人を見つめた。先程自分たちは確かに結ばれた。その事実を改めて確認したマリアの瞳には、暗い炎が浮かんでいた。
 確かに自分たちは想いを確かめ合い、結ばれた。しかし、いくら自分たちの気持ちがそうであったとしても、現実はそんなに思い通りには行かない。銀河最強の力を持つ自分達に、世間は安息の時を与える事無いだろう。このまま一瞬しか味わえない幸せしか手に出来ないならば…
「これ以上辛い思いや悲しい思いをするのは嫌なの。あなたなら解ってくれるわよね」
 そういって、マリアは懐にしまっていた銀の短剣を取り出した。そして、真っ直ぐに自らの横で眠る彼の心臓に狙いを定める。
「だから、自分達で作るの。誰もいない、私たちだけの現実を…」
 その言葉と同時に、銀の短剣は間違いなく彼の心臓を突き刺した。直後、彼の瞳は開かれ、自らを突き刺した相手を見て驚愕の色を浮かべる。
「どう… して… マ、リア…」
 口から込み上げてくる血を吐きながら、必死にフェイトは相手の名を呼ぶ。しかし、当の相手は大粒の涙をこぼしながらも、短剣を手放そうとはしなかった。
「私も直ぐ逝くから… あなたと結ばれる事の出来る、私たちだけの世界で静かに暮らす為に」
 やがてフェイトは、その意味を理解する前に事切れた。マリアはフェイトの胸から短剣を引き抜くと、次は迷うことなく自らの胸に短剣を突き刺した。マリアはその短剣を引き抜くと、口から血を吐き、彼の遺体に倒れ込むと、最後の気力を搾って彼の冷たくなった唇に自らの唇を重ねた。
「もう… こ、れで… ずっと一緒、よね… フェイ、ト… ふふ」
 そして彼女もまた、彼の後を追って旅だった。現世で一人の男女として想い合いながらも、兄妹という事実がある為に結ばれる事が許されない自分達ならば、それが許される世界を作ればいい。現世で作る事が出来ないのならば、そのしがらみを捨ててしまえばいいのだから。きっと自分達を見た人たちは、なんて馬鹿な事をしたんだと思うかも知れない。だけど、自分のした事は間違って無いと言い切れる。フェイトと結ばれる事の出来ない世界に、何の未練も無いから。きっと彼も解ってくれる。誰よりも優しく、そして誰よりも私を想ってくれる人だから…

 その後、先程の見張りの兵が二人の自殺した現場を目撃し、ネルが連絡を受けて駆けつけたときには、既に事切れた後であった。ネルは自らが死ぬその時まで何故二人が自殺したのかという事が解らなかったという。しかし、銀河の英雄である二人が自殺したという事が明るみに出れば、おそらく世界の混乱は避けられないと判断し、二人を病死という事で処理し、シランドの片隅に二人の墓が建てられた。その墓こそが、兄妹であっても結ばれる事が許された、マリアの望んだ世界であるという事を、誰も知らない。
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2008.03.27 21:59 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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