トワイライトの怠惰な図書室

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 スターオーシャン3フェイマリ小説。愛する人を現世に呼びもとすためならば、彼は信頼する仲間さえも手にかけた。
変わらぬ笑顔の為に、僕は手を汚す

「どう、して…」
 親しい少年の剣先が自らの胸を貫いた。貫かれた少女は、何が起こったのかすら理解できぬまま、自らの血で出来た紅き海に沈んた。少女の側にいた他の者も、その現実を理解できなかった。
「おまえ… なんて事を」
 大柄な男が、ようやく紡いだ言葉は風に消えてしまいそうな程小さかった。しかし、他の者やその刃を向けた当事者にははっきりと聞こえる言葉だった。その当事者、先程血の海に沈んだ少女を手に駆けた者… 海色を模した髪の色と、細身の身体ながらも強大な戦闘力を有した少年は、悔恨と後悔の念に苛まれた表情を浮かべながらも、その先にある希望にすがる眼差しは強く輝いていた。
「もう、これしかないんだ…」
 そういうと、先程手にかけた少女の血を拭いその剣先を残る者達に向けた。他の者も臨戦態勢を取るが、先制攻撃するのは気が引けた。今まで一緒に戦ってきた者をいとも簡単に敵に回す事など出来るはずもない。そういう意味で言えば、目の前の少年は既に狂気に憑かれていると言っても過言ではないのかも知れない。
「僕を許してくれとは言わないし、言うつもりもない。僕は絶対に手放したくないものを再び取り戻す為に剣を向ける… だた、それだけだから」
 その言葉が、悲しくも不毛なる戦いの幕開けであった。

 愛する青い髪の少女が死んだ。この事実は、少年を現実から逃避させるには十分すぎる程の事だった。それも敵に殺されたとかの類ではなく、病にかかって死んでしまったのだ。それはシーハーツに流行る風土病の類で、治療手段は未だにないと言われているものであった。急ぎディプロに連絡して駆けつけてもらう予定であったが、ディプロが到着する前に彼女の命は尽きてしまった。最後に自分に言った言葉が今でも頭を過ぎり続ける。

「…あなたに愛して貰って、本当に幸せだったわ…」

 その言葉を残して、彼女は死の世界へと旅立ってしまった。蒼髪の少年、フェイトは枯れる事無く涙を流し、蒼髪の少女、マリアの遺体を抱きしめて叫んだ。三日三晩、力尽きるまで涙した。そしてそのまま現実逃避を行い、酒と悔恨に溺れる日々であった。仲間内は何度も現実をフェイトに突きつけるが、その度に逆上し、疲れ果てて眠りつくまで手に負えない有様であった。
 そしてマリアの死から一月を迎えた時、変わらず酒に溺れるフェイトの耳に、甘い悪魔の囁きがもたらされた。よくよく考えれば許されない言葉であったそれも、既に冷静な判断力が酒で鈍りはてていたフェイトに求められようはずが無く、その囁き一つ一つを聞き逃さない様に耳を傾けた。
「…取り戻したいのか? 愛するその少女を…」
「! 誰だ!」
 フェイトにとって、最も気を引く言葉が耳を掠った。しかし周囲には誰もいなかった。
「誰でも良いではないか。私はただ、お前が望むその願いを、叶えてやろうというのだから」
「願いを… マリアが生き返るというのか!」
 酒で溺れた瞳に、一条の光が戻る。囁く声は尚もフェイトの耳に響き渡る。
「かの気高き魂を持った蒼髪の少女を再び現世に戻すには、強き魂が必要だ。それも一つではなく、六つ程必要だ」
「六つの、魂…」
 そうフェイトが呟くと、目の前に真紅の宝玉が現れた。まるで血の色を固めた様な宝珠で、鈍く輝くそれは、まるで心臓の様であった。
「お前が強き魂を持つものを手にかけ、その宝珠が手にかけたものの魂がふさわしいと認めれば、その魂を宝珠が吸収するだろう。そして六つの魂が揃ったとき、蒼髪の少女は再び現世に戻ってくるだろう」
「強き魂を持つものって、いったい誰が」
 既にフェイトの頭には、その6人が思い浮かんでいるが、最後の理性がそれを否定している。しかし、姿無き声は残酷にも宣告する。
「お前の頭に浮かびしものたちこそ、ふさわしきものではないか?」
「!!」
 そう言い残すと、姿無き声は聞こえなくなり、フェイトの手にある真紅の宝珠だけが、先程の声が夢でない事を示していた。
「マリア…」
 愛した少女の名を呟くと、フェイトは顔を洗い、酔いを覚ますと愛剣を手にみんなの居る場所へと急いだ。懐に、禁忌の宝珠をしまって。

 両者が対峙するなか、フェイトの懐が紅く輝き、同時に先程血の海に沈んだソフィアの身体から白い光が立ち上り、その光はフェイトの懐で輝く紅い光に吸い込まれていった。
「間違いじゃなかった。やっぱり、みんなしかいない」
 対峙するクリフたちには意味さえ理解できないその言葉。クリフ達の認識は、マリアを失った彼が、自暴自虐の果ての行動だと思っていた。しかし、先程の紅い輝きを見て考えを変え始めた。
「何を、考えてるんだい? フェイト」
 ネルが大刀と小刀を隙無く構えながら、フェイトに問いかける。しかしフェイトは悲しく笑うだけであった。
「どっちにしても、このまま黙ってやられる訳にはいかねぇんだよ!」
 そういうと、クリフはものすごい早さで間合いを詰めると、必殺の一撃をフェイトにみまった。
「骨が折れるくらいは覚悟しな! フラッシュチャリオット!」
 数百発の拳撃を相手にたたき付けるその技が炸裂するが、数発放ったところでクリフの腕先に激痛が走り、思わずその場に崩れる。
「ぐあああああっ!」
 その腕先を見ると、まるで何かに食い破られた様にきれいさっぱり消えていた。いや、正確には消滅していたという方が正しいか。そしてその苦痛を堪えながらフェイトを見ると、彼の身体を白い光が覆っていた。
「ディストラクション…だと」
「そう、あらゆる攻撃が僕には通用しない。唯一この光を破る事が出来るものは、もうこの世界にはいない」
 そういうと、フェイトは愛剣を振りかざし、目の前で崩れ落ちるクリフの首に刃を打ち込む。いかに強靱な肉体を誇るクラウストロ人であっても、首に刃を打ち込まれてはひとたまりもなく、そのまま首の皮一枚で繋がっていた頭は、崩れ落ちる際に切れてあらぬ場所に転がる。止めどない鮮血が頭を失った首から溢れ、その周囲にはソフィアとクリフ、二人の流血による血なまぐさい臭いが充満する。
「あんた… もう後には引けないよ!」
 完全にフェイトを敵と見なしたネル。そして、その後に続くスフレ、アルベル、ロジャー。銀河屈指の実力を誇る彼らも、今のフェイトには嘗ての戦友ではなく、愛する少女を現世に呼び戻す為の生け贄にしか写っていない。
「くそ虫が! 調子に乗ってんじゃねぇ!」
「あんちゃん、覚悟!」
 アルベルとロジャーが、それぞれ必殺の間合いで技を繰り出す。しかし、フェイトは大して驚く様子もなく、瞳を閉じ力を溜める。そして…
「無駄だよ」
 その簡素な一言に答えるかの様に、フェイトを覆う白い光はその輝きを増していく。
「なにっ!」
「メラむかつくじゃん!」
 二人の放った技は白い光に吸収され虚空に消える。フェイトの冷たい視線が二人を捉えると、フェイトは再び瞳を閉じ、両手を胸元当たりで何かを集めるかの様に隙間を空けて突き出すと、その隙間に白い光が集まり、閉じたフェイトの目が開かれた後、その光は人一人分の大きさの球になり、再び襲いくるアルベルとロジャーに向かって放たれた。
「ちいっ!」
「うわっ!」
 二人は間一髪で交わすが、後方にいたスフレは反応が遅れ、放った白い破壊球がスフレの全身を捉える。
「キャアアアア!」
「スフレっ!」
 離れた場所で技の準備をしていたネルの悲鳴が響く。しかし、破壊球が消え去った後、スフレの瞳は既に光を宿してなく、肉体は黒く焼けただれていた。
「あんた… どんな理由があろうと絶対に許さないからね!」
 ネルの瞳に本気の殺意が宿る。アルベルとロジャーもそれに同じ殺意が宿っている。
「何度も言わせないで下さい。僕は、許して貰う気も、謝る気もありません」
 そういうと、再び突き出された手の隙間に、白い光が集う。
「くそが… あの光を何とかしねぇと!」
「でも、どうするじゃんよ!」
「とにかく、フェイトの隙を見つけるか、疲れ果てるのを待つしかないよ!」
 そういいながら、三人はフェイトの繰り出す白き破壊球を交わしながら隙を伺っていた。しかし、無限とも思えるディストラクションの力は尽きることがなく、その状況に業を煮やしたアルベルが愛刀を構えてフェイトに向かっていく。
「アルベル!」
「このままじゃいつかあのくそ虫にやられるだけだ! いくぞ、ガキ!」
 同じく手近で隙を伺っていたロジャーの名を呼ぶと、アルベルは技を繰り出した。その後を追う様にロジャーも技を繰り出す。
「くたばれ! 双破斬!」
「いくじゃんよ! ストリームアタック!」
 二つの衝撃の刃と、無数の閃光がフェイトめがけて襲いかかる。しかし、フェイトは臆することなく襲いくる衝撃の刃たちを見据えながら、言葉を吐く。
「無駄だといっている!」
 再びフェイトの前に白い光が現れると、襲いくる攻撃を吸収し、そのままの威力でアルベル達に跳ね返した。さすがに跳ね返ってくるとは予想していなかったらしく、まとも攻撃をうけ、そのまま跳ねとばされる。
「ぐわっ!」
「痛いじゃん!」
「まさか、跳ね返すだって!」
 ネルが驚愕の声を上げる。跳ねとばされた二人は尚も立ち上がり、己が持つ技を再び繰り出していく。
「何度でもやってやる! てめえがくたばるまでなぁ!」
「うおらぁぁぁ!!」
 しかし、どんなに攻撃を繰り出しても、フェイトの白い光を打ち破ることはできず、それどころか跳ね返された技を全身に浴びていくばかりであった。そんな二人を静かに見据えながらフェイトは言葉をつなぐ。
「まだ解らないのか? お前達はこの世界最強の力に対して刃を向けているんだよ? お前達の攻撃が通用するはずが…」
「でりゃあ!」
「だあっ!」
 しかし、幾多の攻撃が跳ね返されても執拗に向かってきたアルベルとロジャーは、渾身の力でフェイトの目前まで迫り、その剣をたたき込んだ。しかし後一歩の所まで来ながらも、やはり白い光に遮られてしまった。
「くそがぁ…」
「うぬぬぬぬ…」
 さすがのフェイトも驚愕の色を隠せなかった。あれだけ攻撃を跳ね返し、打ちのめられているにも関わらず迫り来る二人の力に。
(まさか、僕のディストラクションを凌ぐのか…馬鹿な! そんなことが… しかし)
 最強の力を有しながらも、得もいえぬ恐怖に駆られたフェイトは、さらに自分を守る光を強めるかの様に目を見開く。それに答えるかのように輝きは強さを増し、ついにアルベルとロジャーが持つ武器を粉々に砕き、二人を外壁まではじき飛ばした。壁に衝突した二人は全身に鈍い音が走り、目や口、鼻などいたる場所から血が流れだし、やがて動かなくなった。先ほどまで宿っていた目の輝きは消え失せ、物言わぬ肉のかたまりと成り果てた。
「ふうっ…」
 力の放出が続いていた為か、軽く息を吐くと、最後の生け贄に目を向けた。すでに銀河屈指の実力を有していた仲間が次々と倒れ、残る一人になって死の旋律が間近に迫っていることをネルは感じていた。シーハーツ最強の戦士もまた、人の子である以上、もはや神をも超える力持つフェイトに為す術はなく、蛇に睨まれたカエルの様に動けなくなっていた。
「フェイト… 何が、あんたをそうさせてしまったんだい?」
 掠れる声でネルが問う。しかし、フェイトの返事は手の隙間に集う光であった。
「今までありがとうございました。みんなの死は、無駄にはしません」
 そういうと、白き破壊球がネルに向かって襲いかかってきた。ネルはもはや観念したのか、目を閉じて最後の時を迎えようとした。しかし、いつまで経ってもスフレを打ち据えたあの衝撃がこない為、閉じていた瞳を開くと、自分の目の前に青い光が現れていた。自分もそうだが、それ以上にフェイトは驚いていた。
「この光は… まさか」
「マ、マリア… マリアなんだね!」
 歓喜の声をあげるフェイト。懐の輝きが先ほど以上になっている事を感じると、フェイトはその宝珠を取り出した。五人分の魂を吸収した宝珠は、目も眩みそうな程の紅い光を放っていた。そして、フェイトの呼びかけに応じるかの様に、宝珠がよりいっそう強く輝くと、その輝きの中から青い光が現れ、光はネルを庇う様に集い、一つの形を作り出した。その光が作り出したものは、二人が決して忘れる事のない人の形、マリアそのものであった。
「ああ… マリア… マリア!」
 フェイトは喜びを隠せないのか、その瞳からは歓喜の涙があふれていた。ネルもまた、目の前の出来事が信じられないのだろうか、驚きの表情を隠せないでいた。
「フェイト…」
 マリアは何とも言えない悲しみに満ちた瞳でフェイトを見つめた。しかし、フェイトはもうすぐ自分がどんな罪を犯してでも取り戻したかった愛する少女の、仮初めとはいえその姿を見ると、再び白い光を両手の隙間に集める。
「待ってて、マリア! もうすぐ君を現世に呼び戻せるから!」
 そういうと、白き破壊球をネルに向かって打ち出す。しかし、この時フェイトは気付いていなかった。先ほどの白い破壊球を霧散させた存在が誰であったかを。
「もうやめて! フェイト!」
 マリアの叫びと共に、破壊球は青い光に阻まれ霧散した。今度こそその事に気付いたフェイトは、信じられないといった表情を浮かべていた。
「どうして… どうして君が邪魔するんだよ! ネルさんを殺せば、君は再び現世に戻れるというのにさ!」
 ネルはその言葉でようやく理解した。フェイトの狂気の行動は、他ならぬマリアの復活であるという事に。しかし、その復活を求められるマリアの表情は、悲しみだけであった。
「聞いてフェイト。どんな理由であれ、私は死んでしまった。望まぬ死ではあったけど、これもまた生あるものに定めれた理なのよ! 私の事をいつまでも引きずって、あまつさえこんな狂気に走るあなたを見るのは辛すぎるわ… だから、もう」
 マリアが最後の言葉をつなぐ前に、何もかもを否定するかの様な叫びがあがった。たった一つのものを取り戻す為に、その為ならば神をも殺そうという狂気の叫びが。
「どんな非難を浴びようが、たとえ殺戮者の汚名を浴びようが、僕は君を現世に呼び戻す。どんな事をしてもだ!」
 今までで最も強い輝きがフェイトの手の隙間に集う。その集う光の周辺は、その強大な力による余波で空間さえも歪むほどであった。
「さあ、そこをどいてくれ! あと一歩なんだ!」
 そういうと、最大級の破壊球が空間さえも軋ませてネルに襲いかかる。
「やめてぇぇぇぇ!」
 しかし、その破壊球は彼の愛した少女の力によって打ち抜かれ、その光線はその先に立つ蒼き髪の少年の胸を貫いた。夥しい鮮血と絶叫があがる。
「ぐあああああっ!! マ、リア…」
 フェイトが地面に倒れると、フェイトを覆うディストラクションの光は周囲に霧散して消え去り、そこに残るのは、もはや死神の宣告を待つものだけであった。
「これが… 愛するものを失い、親しかった仲間を殺した報いなのか…」
 ポツリポツリと呟くフェイトのそばに、マリアの姿が現れた。彼女は涙を流している様であったが、すでに瞳には何も映らず、誰かの呼びかけの声さえも、遠くに聞こえてくる様であった。
「僕も、行くよ… マ、リ…」
 フェイトは死んだ。他ならぬ愛する人の手によって。ネルは今まで起こっていた事が夢なのではないかと思っていた。そんな呆然とする中、マリアはフェイトの懐にあった深紅の宝珠を握りしめると、自分の力を宝珠に注いだ。
「ごめんなさい、ネル。フェイトの悲しみがあんなに深かったなんて…」
「マリア…」
「これは、私が起こせる最後の奇跡。後はお願いするわね」
 宝珠から五つの白い光が放たれると、宝珠は粉々に砕け散った。地に倒れ伏す仲間達それぞれに白い光が戻ると、五人は何事もなかったかの様に起きあがった。
「う… どうして、俺は生き返ったんだ」
「みんな! 大丈夫かい!」
 ネルが全員の元に駆け寄ると、マリアが先ほどまでいた方角を指さすと、状況を説明し始める。
「マリアがあんたたちを生き返らせてくれたんだよ、ほら!」
 しかし、その指さす先には何もいなかった。
「何にもいねえじゃねぇか、ネル」
「え…」
 ネルもその言葉に振り返ったが、確かにそこには何もいなかった。そして、フェイトの遺体も消えていた。指さした空間には、枯れ葉だけが舞っていた。
「…ありがとな、マリア」
 ネルは誰にも気付かれない様な小さな声で呟いた。その呟きは枯れ葉舞う風の中に消えていった。後に残るのは愛する二人の執念とも言える気持ちだけであった。
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2008.03.15 21:29 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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