トワイライトの怠惰な図書室

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 スターオーシャン3フェイマリ小説。愛する人を自らの手で殺めた彼女は、正気を失い、狂気への境界線を越えてしまった。
正気と狂気の境界線

 目の前で、愛する人が自らの血で作った海に沈んでいる。そして自分の手には、一本の銀の短剣が握られていた。握られた短剣の刀身から、愛する人の血が大理石の床に滴り落ちている。その滴る音だけが、この空間に響き渡っていた。

 どうして、こんな事になってしまったのだろうか… 私はただ、創造主の手からこの世界を解放し、血の海に沈んだ愛する人と静かに暮らしたかっただけなのに… どうして、自らの手で彼を殺めなくてはならなかったのだろうか… どうして… どうして…

 私は握っていた短剣を手放すと、そのまま床に座り込んだ。不思議と、涙は出なかった。代わりに心の中は、真っ白になっていた。何もかもどうでも良かった。世界が滅びようが、全ての人が断罪の業火に焼かれようと、そんな事は今の自分には些細な事だった。愛する人を自らの手で殺めてしまった自分こそ、この世界で最も重い罪を背負うのだから。

「こんな力さえ無ければ、あなたをこの手で殺す必要なんて無かったのに…」
 そういって、爪が食い込む程強く握りしめる。掌から滴る自らの血が、愛する人の血と交わり、さらに濃い紅へと変わっていく。

 彼は正気を失ってしまった。自らの内に持つ、人が扱うには余りにも強大すぎる力に精神を食いつぶされ、挙げ句の果てにその力は本人の意志とは関係なく暴走し始めた。彼の全身から破壊の極光は流れる様に世界を駆けめぐり、その極光に触れたものは全て跡形もなく消滅していった。そしてその光は遂に一惑星だけでは収まらず、宇宙にまで伸びる様になっていった。もはや為す術は無いように思えたその時、彼女は破壊の極光と対極とも言える自身の力、改変の極光を解き放ち、破壊の極光を押さえ込んだ。しかし、極光の発生源である彼が居る限り、いつかは押さえ込んでいるこの力さえも食いつぶされてしまう。極限の集中力で改変の極光を制御する彼女の耳に、最後とも言える彼の声が聞こえてきた。
「マリア… マリア…」
「! フェイト!」
 思わず彼を見やる。先程から状況は変わって居ないが、それでも自分の心に彼の声が響いてくる。
「マリア… 僕はもう駄目だ。この破壊の極光は、僕の意志など無視して溢れだしてくるんだ…」
「そんな…」
「だから… だから… 君の手で、僕を殺してくれ!」
 悲痛な彼の叫び声に、マリアは一瞬聞き間違いだと思った。しかし、彼の言葉をそのまま形にしたかの様に、目の前に見覚えのある銀の短剣が現れた。
「君から贈られたその短剣で、僕の最後の誇りを護る為に、愛する君の手で僕を殺してくれ!」
「いや! いやよ! そんな事出来る訳ないじゃない!」
 マリアは首を激しく振って否定する。しかし、破壊の極光は尚も威力を増していくかのように、強く光り輝き、さらなるプレッシャーがマリアの全身に襲いかかる。
「くうっ…」
「これ以上、みんなを、愛する君たちを苦しめたくないんだ! お願いだ! マリアっ!」
 最後の叫びが世界に響き渡ると、いよいよ破壊の極光は彼自身さえも食い破り、世界の全てを覆い始めようとしたその瞬間、フェイトの胸に銀の短剣が突き刺さった。顔を真っ青にしながらも、その短剣で胸を突き刺したのは、自分を殺す事を願った愛する少女。完成された美貌とさえ言わしめたその顔も、今は見る影もない程苦渋に歪んでいた。
「う、ああ… あああ… フェイト… わたしは、わたしは…」
 彼の胸に短剣が突き刺さったと同時に、破壊の極光は消滅し、そこに居たのは互いに愛し合った一組の男女。しかし、フェイトの胸からは人の証である赤い血が、大理石の白い床へ滴り落ちていた。フェイトはそんな彼女を、最後の意識と力で優しく抱きしめると、彼女の耳にだけ聞こえる程小さな声で呟いた。

「ありがとう… 生まれ変わっても、きっと、君を…」

 そして彼の身体は、そのまま自らの血の海へと崩れ落ちた。マリアの手から銀の短剣がこぼれ落ち、乾いた音が空間に響き渡り、彼女はそのまま床に座り込んでしまった。マリアの頭に、走馬燈の如く彼と共にいた時の想い出が駆けめぐる。優しい笑顔、自分を守ってくれたあの強さ、そして常に自分を気にしてくれた彼の気持ちも、全てを失ってしまった。そう、自らの手で奪ってしまったのだ。その現実が突きつけられた時、彼女の心もまた、正気を手放し、狂気への境界線を越えてしまった。

「もう嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 その叫びと同時に、彼女は愛する人を突き刺した銀の短剣を手に取ると、彼を殺めた場所と同じく自分の胸に深々と突き刺した。突き刺した胸と口から血が噴き出し、その場に崩れ落ちた。消え去りそうな意識を保ち、這う様に彼の元へ向かうと、その冷たくなった彼を抱きしめ、マリアもまた生を手放した。その死に顔は、ようやく運命の楔から解き放たれたかの様に安らかであったと、二人を発見した仲間達は歴史書に書き記していた。世界を解放し、護るために与えられた力であった筈なのに、皮肉にもその力を持った少年の心を食い破り、世界を崩壊の寸前まで追いやりそうになった。その力を止めたのは、そんな彼を愛した少女。フェイトとマリアは、この暴走の日が来る事を予知し、それを止める為だけに惹かれ合ったのだろうか。今となっては、その答えを知る事は、誰にも出来なくなってしまった。その答えを知っているのは、大理石の床に倒れた、この二人の心の中だけ…
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2008.03.15 21:12 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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