トワイライトの怠惰な図書室

ここは、トワイライトが書きつづった小説をメインに載せていくblogです。無断転用やお持ち帰り等は全て厳禁です!

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
 スターオーシャン3フェイマリ小説。人を愛するが故に、彼は死に急いでいたのか…
死に急ぐ者

「イセリアル・ブラスト!」
 自らの内に眠る破壊の極光が、目の前に迫りくるエクスキューショナーたちに炸裂する。あらゆる存在の完全否定のみを目的に作られた禁忌の紋章「ディストラクション」。その力を望まざるとはいえ持つ事となったその者の名は、フェイト・ラインゴット。二大禁忌紋章を作り出した銀河最高の科学者、ロキシ・ラインゴット博士の実子。彼は今、シランドの街に迫りくるエクスキュショーナー達に、たった一人で立ち向かっていた。

「ここから先には、絶対にいかせない! 消滅を望まないなら、ここから立ち去れ!」
 大地を震撼させるほどの咆吼が上がるが、エクスキュショーナー達は怯むことなくシランド目がけて襲いかかってくる。
「…全ての存在に滅びを、消滅を…」
「…滅びよ、神に逆らいし愚かなる者どもよ…」
 代弁者の執拗な攻撃もフェイトには掠りもせず、手に持つ退魔の聖剣ファーウェルに切り裂かれ、次々と消滅していく。
「絶対に通さない… これ以上、みんなを… マリアの手を血で染めたくないんだ…」
 既に意識すら限界の状態で、なおも剣を振るい続ける今のフェイトは、贖罪を償うために生きている罪人の様であった。

「フェイト… ちょっといい?」
 久しぶりにシランドへ戻ってきた一行は、おのおの休息をとっていた。フェイトはそんな中、部屋のソファに腰掛け、愛刀の刃こぼれをチェックしていた。
「ああ、かまわないよ」
 手にしていた剣を鞘に終うと、いつもの笑顔でマリアの入室を促す。
「で、どうしたんだい? 何かあった?」
 マリアは最近のフェイトに疑問を持っていた。出会った頃より確かに戦いが激しさを増しているのは事実だけど、そんな中でもフェイトは自ら傷を負う様な戦い方を変えようとしない。フェイトほどの剣士なら、もっと相手の行動を読んで急所を的確に攻撃する戦い方だって可能なはずだ。マリアはメンバーの中でも特に策術に長けている事もあって、メンバー各々の戦い方を詳しく分析していた。クリフは格闘技を扱う故に、ある程度は相手の懐に飛び込まなくてはならないが、フェイトやネルは剣を扱う故、ある程度の間合いは取れる。実際ネルは的確に急所を狙って攻撃する事を常にしている。しかし、当のフェイトは間合いなどを考えず、手当たり次第に相手に飛び込み切り裂き、突き刺す攻撃を常にしている。今までも何度かその事を言ってきたが、未だにその攻撃法を変えようとしない彼に疑問を抱いたのは、ある意味当然ともいえる。愛しく思う相手なら、尚のこと。
「うん。実はあなたの戦い方の事なんだけど…」
 そこまでいうと、マリアはちらりと一度だけ彼の顔を見た。彼の顔はいつもと同じ笑顔だった。しかし、何かが違う。言い得ない違和感ともいえる感覚が感じられた。
「僕の戦い方がどうかした?」
「前にも話したかも知れないけど、もう少し間合いを考えて戦った方がいいと思うのよ」
 その言葉を皮切りに、マリアは自分なりに纏めた事を彼に話し始めた。その間、フェイトは目を閉して、じっとその言葉を聞いていた。やがてマリアの言葉が終わると、彼はおもむろに目を開いた。その目には、どことなく嘲笑めいたものを感じる。
「フェイト? ちゃんと私の話を聞いてくれていた?」
「うん、聞いていたよ。君の言葉を聞かないわけないじゃないか」
 にこりと笑いながらそういうフェイトに、マリアはポッと頬を紅く染めた。
「でもね、僕はこの戦い方を辞めるつもりはないよ」
 彼から聞こえたのは、否定の言葉。安全を放棄し、危険を望む言葉。
「どうして!」
 ただただ彼が少しでも無傷で済む戦い方を考え、どうにか彼に解って貰いたいと思って話した事は、その一言の言葉で全て泡と消えてしまった。さすがのマリアも激高して問いつめる。
「マリア。君は、命というものをどう思っている?」
 質問に対して質問を返すフェイト。礼儀としては無礼であったが、今のマリアにはそんな事は些細な事だった。いきなり問いかけられたその抽象的な質問に、マリアも頭を冷やして考え、答えを繋ぐ。
「…人を例えるならば、母の体内から生まれ、その誕生と同時に開始される生命活動が終了するまでの過程、かしら」
 マリアのあまりにも学術的な回答に、フェイトは声を上げて笑い出した。
「ハハハハハ! 君らしい回答だよ」
「な、何が可笑しいのよ」
 マリアはそのフェイトの態度に憤りを覚えた。目の縁に涙を浮かべて笑うほどの事ではないと思うのだが。
「だけど僕が聞きたかったのは、もっと人道的というか、倫理的な意味だったんだけどね」
 指で涙を拭くと、フェイトは再びソファに深く座り直す。その時に浮かべている彼の目は、自分ではない、もっと遠くを見ている目だった。
「僕は、今までこの手で幾つもの命を奪ってきた。それが例え望まなかった事とはいえ、そんな事は言い訳にはならない。どんな形であれ、命というものは最も尊ばなくてはいけないものなのだから。だから、僕はその痛みを忘れないために、傷を負う。それを忘れたら、僕はただの殺戮者になってしまうから…」
 マリアは目を見開いて彼の言葉を聞いていた。命の尊さを忘れないために、自ら傷を負う。そして目的を終えた後、今の彼なら迷うことなく贖罪を償う道、「死」を選ぶだろう。マリアはここまで彼が追い込まれている事に気がつかなかった。そのショックで言葉を失っていた自分を、さらに彼の言葉が追いつめる。
「マリア… 君にはこれ以上戦って欲しくない。君だけじゃなく、クリフやネルさん達みんなにも。手を血で染め、罪を重ねるのは僕だけで十分だ」

 パンッ!

 乾いた音が部屋に響く。マリアの手がフェイトの頬を打つが、彼の顔は驚愕ではなく、そうなる事が解っていたかの様に、打たれた頬を手で押さえる事さえせず黙って彼女を見ていた。
「バカバカバカっ!」
 自分の罵声を黙って聞いているフェイトに、マリアは涙をこらえる事はしなかった。そのこぼれ落ちる涙を拭う事すらせず、マリアは真っ正面から彼を見据えて言葉をつなげる。
「あなたは、あなたは自分の命をもっと大切にしようとは思わないの! あなたが死んでしまった後に残されるものの事を考えた事はないの!」
「残された、もの?」
 以外といわんばかりのその言葉に、マリアはさらに逆上して問いかける。
「そうよ! あなたを慕って今まで一緒に戦ってきた私たちが、何とも思わないと思っているの!」
「……」
 そこまで叫ぶと、マリアはそのまま彼にもたれかける様に座り込んでしまった。しかし、啜り泣く声は止まらなかった。
「お願い… もっと他の人を、あなたを愛する人の事を考えてよ。自分だけ罪を重ねるなんて、まるで死に急いでいるみたいじゃない」
 自分の膝元で啜り泣く彼女の肩に手を置くと、フェイトは意外な言葉を口にした。それは、どんな言葉よりも残酷な言葉に違いなかった。
「そうだよ。僕はきっと、死に急いでる」
「!!」
 啜り泣く事さえその言葉で止まり、マリアは彼を見上げる。しかし当の本人は、寂しげな微笑みを浮かべていた。
「今、何て言ったの… フェイト」
 否定したかった。何よりも否定したかった言葉。だが、彼は首を横に振ると、先ほどの言葉を繰り返す。
「死に急いでいる、といったんだよ。僕は」
「どうして… そんなこというの?」
「それは… !」
 続く言葉を紡ぐ前に、城下の方で爆発音が響いた。あわてて窓に駆け寄ると、そこにはイリスの野を彷徨いているだけだったエクスキュショーナー達が、シランドの街を襲撃している様相だった。
「大変! 急いで行… ぐっ!」
 マリアがあわてて振り返り、ドアに向かって走り出そうとした時、フェイトの拳が彼女の腹を捉えた。余りの事に悶絶し、そのまま床に倒れ伏す。
「な、んで…」
 意識を手放す前に見た彼の顔は、今までで最も消え去りそうな微笑みだった。
「ごめん、マリア…」
 フェイトは彼女をソファに座らせると、そのまま城門へと駆けだしていった。

「あ、フェイト様!」
「他のみんなは!」
 フェイトは手近の兵士に状況を聞くと、兵士は慌てた様子で報告する。
「はっ! ネル様以下、他の方々はまだお見えになっておりません」
「そうか… よかった」
「? フェイト様」
 怪訝な表情を浮かべる兵士に、フェイトは簡素に今後の事を話す。
「他のみんなが来たら、城下の人たちの避難に全力を尽くす様に言ってくれ。決して、前線には駆けつけないでくれと」
「! あれほどの相手を、たった一人で食い止めようと言うのですか!」
 驚愕する兵士に、フェイトは軽く手を挙げると、そのまま前線へと駆けていった。

「ちっ、もう始まってやがる!」
 先頭を走るクリフが、城下の喧噪に舌打ちする。
「はやく行かないとやばいよ!」
 追うようにネルも地を駆ける。そんなとき、城門にいた兵士がネルに気づき声をかける。
「あ、ネル様!」
「なんだい!急ぎじゃないなら、あとにしれくれないかい!」
「いえ、フェイト様から伝言を受けております!」
「フェイトから?」
 彼の伝言ならば、無視するわけにはいかない。ネルたちは立ち止まり耳を傾けた。
「はっ。前線は自分一人で何とかするから、皆様は城下の住人達の避難を優先してくれ、と」
「あの馬鹿!何考えてやがる!」
 クリフは拳を左掌にたたき付けて吐き捨てる。スフレやソフィアなど、顔面蒼白で今にも倒れそうである。
「とにかくいくよ!」
 ネルはそれだけいうと、城下へと駆けていった。他のメンツも慌ててそれに繋ぐ。

 そして城下を駆け抜ける中、逃げまどう住民達に襲いかかるエクスキュショーナー達が現れたが、その悉くをなぎ払っていった。しかし、あれ程の数で襲いかかってきているのに、街にいたエクスキュショーナー達の数は余りにも少なかった。そんな疑問を抱きながらも、メンバーは街の入り口である橋のたもとまでやってきた。全員がそのたもとに現れた瞬間真っ白い閃光があたりを駆けめぐった。
「うわっ!」
「な、なに!」
 その光が収まると、辺り一面が完全に消滅していた。そして先ほどの光の中心と思われる場所には青い髪の青年の姿があった。
「フェイト!」
「……」
 ソフィアが必死に呼びかけるが、彼は何の反応も示さず立ちつくすばかりであった。そしてそんなフェイトを見逃すわけはなく、先ほどの光を免れたエクスキュショーナーの数体が襲いかかってきた。
「グアアアア!」
「滅びよ、神に逆らいしものよ」
 しかし、一瞬瞬間移動したのではないかと見間違う程の速度で襲いかかるエクスキュショーナーの攻撃をさけると、一閃白刃が煌めいた。その煌めきが消え去ると同時に、エクスキュショーナーは切り裂かれ、湖面に沈んでいった。
「あれが、あのフェイトか…」
 クリフの顔には驚愕が張り付いていた。

「…絶対に、通さない… ここは、絶対に通さないぞ…」
「フェイト… もう、何も聞こえないの… 何も」
 そう、今のフェイトは襲いくるエクスキュショーナー達を討ち滅ぼす事だけしか考えなかった。しかし、いかに今のフェイトといえど、全てのエクスキューショナー達を倒すのは到底無理と思えた。
 そんな事を考えているそのとき、ついに業を煮やしたのか、一体の断罪者の咆吼が上がり、その咆吼と同時に、一斉に断罪者、執行者、代弁者がフェイト目がけて襲いかかってきた。
「まずい!」
「フェイトちゃん!」
 全員が慌ててフェイトの元に駆け寄ろうとしたその瞬間、天空から数十本の光の柱が降り注いだ。その光の柱は次々とエクスキュショーナー達を貫き、消滅させていった。
「今度は何だい!」
 全員が一斉にソフィアに振り向いた。これほどの威力を持つ紋章術を使えるのは、メンバーの中ではソフィア以外に考えられなかった。しかし、当のソフィアは自分じゃないと、首を横に振るだけであった。
「…汝、その諷意なる封印の中で安息を得るだろう… 永遠に儚く!」
 ネルの後方から聞き覚えるのある声が響き渡った。驚いてそちらに振り向くと、青い髪の少女が一心に詠唱を唱えていた。そしてソフィアは、その少女が紡ぐ詠唱を聞いて驚愕し、同時にそれを止めようと駆けつけていった。
「だめです! 人の身で、天使の術を行使するなんて!」
 しかし、今のマリアはフェイトと同じく、何も聞こえてはいなかった。ただ一つ、フェイトを救う事だけであった。
「あなただけは死なせない。死ぬのなら、私も一緒よ! セレスティアル・スター!」
 シランド城の禁忌書庫室に封印されていた書の一つに、天使の記述があった。遙かに高位次元の存在である天使の使用する術は、どれも人の身に扱えるものではなかった。しかし、今のマリアはその命を削って天使の術を行使しているのである。力ある言葉と共に、先ほどの光の柱が降り注ぎ、エクスキューショナー達は貫かれ、消滅していった。

「…マ、リア…」
 彼女の声を耳にすると、フェイトは一瞬だけ後方に振り返った。そして、彼女の姿を確認すると、手にしていた剣を地に突き刺し、自らもうちに秘めた力を集中しだした。
「マリアだけは、生きて欲しい。だから、これ以上力を使わせるわけにはいかない!」
 フェイトの最後の咆吼と同時に、彼の身体から先ほどみた光が迸った。その光は先ほどの比ではなく、彼の力ある言葉と同時に、その輝きは頂点に達した。
「イセリアル・ブラスト!!」
 そして、その光が静まった時、襲いかかってきたエクスキューショナー達は、跡形もなく消滅していた。そして、全ての音がなくなってしまったんじゃないと思える沈黙の中、彼が地面に倒れ伏す音が響き渡った。

「フェイト!」
 全員が彼の元に駆け寄るが、既に精神力さえも使い果たしたフェイトの髪は真っ白で、顔色も蒼白を通り越していた。命さえ燃やし尽くしてしまっているのである。
「…フェイト、フェイト…」
 自らも天使の術を強行したマリアの髪も真っ白で、既に動く事さえままならなかった。どうにか彼の元までたどり着くと、彼の手を握りしめて彼の名を呼んだ。先ほどから誰が呼びかけても答えなかった彼だが、マリアの声を聞くと、うっすらと瞳が開いた。
「…マリア。やっぱり、君には迷惑をかけてしまったね」
「フェイト… どうして、こんな道を…」
「いったろ。僕は殺戮者にならない為に、君に幸せになって貰いたい為に、傷を負うって」
「でも…」
「最後の最後まで我が儘だった僕を許してくれとはいわない。だけど、幸せになって欲しい…」
 そして、その瞳が再び閉ざされようとしたとき、彼の最後の本心が口からこぼれた。
「…大好きだったよ、マリア…」
 そしてフェイトは、物言わぬ存在になってしまった。全員が彼の遺体を前に啜り泣く中、マリアだけは彼の手を握りしめて離さなかった。
「私の事を愛していたなら、どうして… ぐふっ!」
 マリアの口から、大量の吐血が吹き出した。天使の術を行使した代償は、彼女の命そのもの。
「ぐふっ、ごふっ!」
「マリア、死ぬんじゃねぇ!」
 クリフが抱き起こし、ネルとソフィアが必死に回復の術をかけ続けるが、一向に容態は良くならなかった。彼を失ったマリアの心が、現世の楔を解いてしまっているからである。
「…いいの。彼のいない世界に、何の未練もないから…」
「マリアちゃん! そんなこといっちゃだめだよ!」
 スフレが必死に彼女を現世に引き戻そうと呼びかけるが、もはやその瞳には何も映ってなかった。
「フェイト… 私も、あなたの事、愛してた…わ」
 そういい残すと、彼女もまた、彼の元へ旅立ってしまった。最後の最後まで、フェイトとマリアの心が通う事はなかった。互いに愛するが故に、幸せを願うが故に、終焉の時さえも共に出来なかった。悲劇と言う言葉で括るには、余りにも悲しい物語である。
スポンサーサイト
2008.03.15 21:06 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。