トワイライトの怠惰な図書室

ここは、トワイライトが書きつづった小説をメインに載せていくblogです。無断転用やお持ち帰り等は全て厳禁です!

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
 スターオーシャン3フェイマリ小説。「永久」に別れる事を拒絶した少女。

「永久」の拒絶

 ゴーン、ゴーン・・・

 シランド城礼拝堂の鐘の音が、静かに響き渡る。新しい契りを交わした夫婦を祝福して鳴り渡る鐘の音は、今は鎮魂の祈りを込めていた。
 銀河全土にエクスキューショナーを放ち、銀河系の消滅を行おうとしていた創造主を倒し、世界を真の解放に導いたフェイト達は、エリクール2号星へ戻ってきた。
 しかし、その時既にフェイトの身体は肉体・精神共に既にぼろぼろの状態で、いかなる治療も受け付けないほどであった。シランド城に戻ってまもなく、フェイトは昏睡状態に陥り、ベットから起きあがることは元より、話しをする事さえままならない程であった。
 フェイトがこんな状態になっていた事に気づかなかった事に、何より悔やんでいたのは、同じ蒼い髪を持った少女であった。
 既に目を開けることも少なくなって来たが、それでも彼の側を片時も離れることなく、賢明に呼び続けた。

「フェイト、今日はいい天気よ。早く元気になって、一緒にピクニックにでも行きましょうね」
 カーテンを開け、外の日差しを部屋に取り込みながら、努めて明るく話しかける。
「うん・・・」
「でも、まずはちゃんと身体を治さないとね」
 起きあがろうとするフェイトを、優しくベットの背にもたれさせた後、手近にあった水差しからグラスに水を注ぎ、医者が調合してくれた薬を飲ませる。
「ごほっ、ごほっ」
「大丈夫、フェイト?」
「うん、平気」
 既に旅を続けていた頃の生気は微塵もなく、顔は窶れていた。そんな状態であっても、マリアには笑顔を向けていた。そんなマリアは何も出来ない自分に苛立ち、ただただ後悔の念だけが募っていくだけであった。
「フェイト・・・私は、私は・・・」
 そんなフェイトの気遣いを感じ、今まで押さえていた気丈な心がついに崩れ、マリアは両手で顔を覆い、止めどなく涙を溢れさせた。そんなマリアを、フェイトは優しく抱きしめ、彼女の髪を撫でてあげた。
「泣かないで、マリア」
「でも、私は何も出来ない。あなたはこんなになるまで必死に戦っていたというのに、私はそんな貴方の事を少しも解っていなかった。貴方に愛されていたその事に溺れ、ここまで酷い状態になっていた貴方のことを・・・」
 自分の弱さを訴え続けるマリアのその言葉を、フェイトは首を横に振って否定した。
「それは違うよ、マリア。僕は君が愛してくれたからこそ頑張ってこれた。君が居なかったら、僕は自分の出生の秘密も、この破壊紋章ディストラクションの意味も解らず、ただ父さんを目の前で失った事を後悔するだけの日々を送っていたかも知れない」
「それでも・・・それでも!」
「僕は、こうなってしまった事を後悔してない。世界は解放され、誰もが笑って暮らしていける時代になった。君が再び改変紋章アルティネイションの力を使うことなく、一人の普通の少女として過ごしていける。その世界を作れたことに、むしろ満足しているよ」
「フェイト・・・」
 二人は、もう残されたわずかな時間を、少しでも多く感じるために強く、強く抱きしめあった。

 それから二ヶ月後、フェイトの状態は悪化の一途をたどり、頻繁に発作が起こるようになっていた。フェイトの診断を行っていた医者が、部屋の外で待っている全員を部屋にはいるように呼びかけた。
「先生、どうなんですか?」
「次に、発作が起こったとき、彼はもう・・・」
 為す術のないといった表情を顔ににじませながら、首を横に振る医者を、クリフは苦々しく思っていた。ネルやアルベル、ロジャーは目を伏せて現実の悲しみ耐え、ソフィアやスフレはもう後がない彼の終焉にただ涙し、マリアは彼の手を握りしめて悲しみをこらえていた。
「みんな・・・」
 ベットに横たわる彼の声が、か細く部屋に響く。全員が彼の側に駆け寄った。既に死者と見間違え程青ざめたフェイトの顔は、驚くほど穏やかであった。
「クリフ・・・おまえとはヴァンガードで知り合って以来、ずいぶん迷惑駆けちゃったな」
「気にすんな、そんな事」
 クリフは今のフェイトを直視することが出来ず、顔を逸らしていつもの口癖を言う。
「ネルさん。最後の最後まで迷惑をおかけしてすいません。後はお願いします」
「バカいうんじゃないよ。あんたにはまだまだやって貰うことがあるんだからね!」
 ネルは弱音を吐くフェイトに怒鳴りつけた。しかしその瞳は涙でにじんでいた。
「アルベル、ロジャー。色々と助けて貰ってありがとう」
「ふん・・・阿呆が」
「兄ちゃん・・・」
 二人はただ黙ってフェイトを見ていた。
「スフレ。君の初デビューをみれなくて残念だよ。でも、スフレなら銀河一の踊り手になれると、僕は信じているからな」
「フェイトちゃん・・・」
 スフレは何も出来ず、ただ彼の終焉を見送る事しかできない事に涙しているだけであった。
「ソフィア。お前には世話になってるばかりだった。そして、何もしてやれず、あげくにお前の想いにも答えてあげられなかった。恨んで居るだろう・・・本当にごめんな」
「そんな事無いよ。フェイトと共に居られた時間は、私にとって忘れることの出来ない日々だから。だから、そんな事言わないで」
 あくまでも優しく、彼に語りかけるソフィア。流れる涙を抑えることはもう出来なかった。
「マリア・・・」
「ここに居るわ」
 彼の手を強く握りしめるマリア。しかし、彼の手は徐々に体温を失い始めていた。悲壮な絶望感に必死に耐えながら、マリアは賢明に笑顔を作り、彼に語りかけた。
「君とは、ずっと一緒にいたかった。だけど、それももう叶いそうにない」
「そんな事言わないで」
「だから、出来るだけ話しをしたいんだ、君と」
「ええ、たくさんお話ししましょう」
 そういって、二人はたわいもない話しを始めた。出会ってからのこと、お互いの知らない時期の事など、本当にたわいもない話を続けていた。しかし、徐々に彼の言葉は聞き取れないほどか細くなり、ついに終焉の時が訪れた。
「何だか、眠くなってきたよ・・・少し、休んでもいいかな?」
「ええ、ゆっくりお休みなさい。フェイト」
 堪えきれない涙がマリアの頬を伝う。あくまでも優しく微笑むフェイトの顔を、決してそらす事をせず見続ける。フェイトの瞳がゆっくりと閉ざされていく。それは、二度と開かれることのない終焉を告げていた。
「み・・んな。今・・・まで・・ありが・・・とう」
 そして、フェイトの瞳は二度と開かれず、いくら語りかけても返事は返ってこなかった。
「フェイト・・・フェイト!!」
 誰もが信じたくなかった現実が突きつけられる。全員が顔を覆って涙した。マリアは無言だった。あまりのショックに言葉が出なかったのかも知れない。そう思ったメンバーは、マリアの本当の心情を知ることが出来なかった。
「みんな。少しの間だけ、私とフェイトだけにしてくれないかしら。最後のお別れをしたいのよ」
 小さく言葉を紡ぐマリア。全員がそのマリアの心情をくみ取り、部屋を出ていった。
「フェイト。あの時私が演奏したオルガンの曲名を教えてくれたのは貴方よね。その曲目は、私にとって全てであり、真実なの …貴方だけを一人にしない。いつまでも一緒にいようって、約束したんだから」

 パンッ

 乾いた音が部屋に響く。その音に全員が部屋に飛び込むと、そこにはフェイトの遺体に縋るように倒れるマリアの姿があった。その片手には愛用のフェイズガンが握られていた。
「ばっ・・・ばっかやろう!!」
「そんな、どうして!」
「マリアちゃん!!」
 全員が駆け寄り、クリフがマリアを抱き起こすが、既に返事は返ってこなかった。マリアの表情もまた、フェイトと同じように穏やかであった。

 二つの棺が、同じ場所に埋められていく。偉大なる英雄の死を、エリクールの人々全員が悲しんだ。やがて葬儀の司教を務めていたシーハーツ女王は、終焉の曲を演奏し始めた。その曲は、かのマリアが奏でた曲であったという。

 その後、永遠にアペリスの教えと共に伝えていかれる事となる。たとえ死が二人を分かつ事になっても、別れを拒絶し、躊躇い無く愛する人の元へ逝く、フェイトとマリアの名が。
スポンサーサイト
2008.03.15 21:03 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。