トワイライトの怠惰な図書室

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 スターオーシャン3フェイマリ小説。許されざる力は、その力を持つ者の存在すら許さないのか…

破壊観念の果てにある、自我崩壊

「助けてくれ!もう二度とこんなまねはしないから!」
「許してくれ!許してくれぇ!!」

 フェイトの目の前にいる盗賊達が、地面に這い蹲りながら命乞いをしている。その盗賊達の周囲には、彼らの仲間と思われる数十人の男達の死体が転がっていた。どれもこれも、普通に切られたのではなく、どちらかといえば、嬲り殺された感じが見受けられる。
「命乞いするぐらいなら、始めからしなければいいんだよ」
 血塗られた剣を抜き身にしながら、返り血で汚れたその顔を向ける。フェイトの着ている白い服は、至る所が鮮血で赤く染まっている。その表情は憤慨とも嘲笑とも違う、哀れみを含んでいた。
「じゃ・・じゃあ!!」
 命乞いをする盗賊達の顔に、喜びの表情が走るが、フェイトの口から出た答えは、余りにも残酷なものであった。
「でもね。ここでお前たちを逃がしても、結局また同じ事を繰り返すだろう。所詮害虫は生かして置いても役には立たないだろうからさ」
「そ、そんなっ!!」
 既に逃げ腰になっている盗賊達を一別すると、再びフェイトは剣を構えた。その表情は、とても解放の英雄といわれる人物のものではなく、殺戮や破壊のみが、自分自身を生へと繋ぎ止めている者の様であった。
「じゃあね」
 一言そういうと、次々と命乞いをしていた盗賊達の首が宙を舞った。数人の盗賊達が、その斬撃の合間をかいくぐり、どうにかその惨劇の場から逃げだそうとしていた。
「た、助けてくれぇ!!」
 しかし、背を向けて逃げ出す盗賊数人に向かって、フェイトの右手が伸びた。そして数秒後、彼の手から白を越えた超発光の光が放たれた。その光は周囲にある木々を飲み込む・・・いや、消滅させながら盗賊達の後を追い、やがてその光が逃げ出す盗賊達に直撃すると、盗賊達の口から悲鳴が上がった。
「ギャアアアアアア!!」
「身体が・・・身体がぁ!!」
「やめてくれぇ!!!」
 そんな悲鳴を聞くが、フェイトは何の感慨も抱いていないようで、放たれる光をさらに強めた。そして数秒後、盗賊達の周辺全ての土や木を消し去った後、光は淡雪のように消えていった。
「ふぅ・・・少しは力の制御が出来るようになってきたかな」
 右の掌を握りしめると、誰に言うでもなく呟き、剣の血糊を落として鞘にしまい、先程まで宿泊していた宿へと戻っていった。

 フェイトの内に眠る、破壊紋章ディストラクション。
 対象の完全否定のみを目的として生み出された禁忌の紋章。その力を自分の自我に持っていることに気が付いたのは、エリクール二号星で起こった国家戦争の終り、第三勢力バンデーンの襲撃の最中であった。バンデーンの戦闘艦は、その圧倒的な力でアーリグリフ・シーハーツ両軍を壊滅寸前まで追いやったが、極度の興奮状態に陥ったフェイトは、ディストラクションを解放し、先程放ったのとは比べものにならないほどの光を戦闘艦に打ち込み、跡形も残らずに消滅させてしまった。そして、その後全精神力を使い果たし気を失ってしまった。
 それ以来、彼は自分自身の内に眠るその強大すぎる力に脅え、一時期は誰にも会うことさえしなくなってしまった程であった。そんなフェイトの心を癒し、前向きにしていったのは、同じ禁忌の紋章をうちにもつマリアの存在であった。彼はマリアのその優しさと気高さによって、少しづつ前向きに気持ちを持つようになり、やがてマリアの手ほどきで少しづつ力の制御を身につけていった。しかし、この時マリアは気づかなかった。破壊紋章ディストラクションを制御し、使用できるようになっていったフェイトの心は、少しづつ壊れていっていることに。

「ただいま」
「おかえりなさ・・・どうしたの、その姿は!」
 部屋に戻ると、そこにはソファに腰掛けて読書しているマリアの姿があった。マリアはフェイトの服についた幾つもの鮮血を見るやいなや、彼の元に駆け寄った。
「何でもないよ」
「何でもなくて、こんな姿になるはずないでしょ!」
「うるさいな!何でもないって言ってるだろ!!」
 強い口調で問いつめるマリアに、フェイトは思わずカッとなり、マリアをソファに突き飛ばすと、そのまま備え付けの浴室に向かった。
「フェイト・・・どうして」
 今まで、フェイトは隠し事が下手で、どんなに隠しても最後には話してしまうのである。ましてや相手がマリアならば尚更である。しかし、今のように強引に突き飛ばすような事は、今まで一度だってされた事はなかった。そんなフェイトの変貌に、マリアは目頭が熱くなってくるのを否めなかった。
 その以来、フェイトとマリアは一線引いたようなつき合い方になっていった。まるで、最初に会った時のような感じである。そして、フェイトは夜な夜な一人で何処かに出かけるようになり、決まって戻ってくると、先程の様に血塗られた姿になって戻ってくるのである。
 仲間達もその事実を知ると、彼に問いつめるが、どんなに問いつめられても彼は口を割らなかった。やがて仲間達も諦め、現在に至るのであるが、彼の瞳が澄んだ青ではなく、少しづつ濁っていっていることに、まだ誰も気づいてはいなかった。

「いったい、フェイトはどこへ行っているのかしら」
 連日続くフェイトの怪行動を疑問に思い、彼に問いつめることでは解決しないと結論したマリアは、彼の後を付けていた。念のために彼の手荷物には発信器をつけておいたので、万一姿を眩ませても、その後を付けていけば問題ないようにはしていた。
「ん? どうやらついたようね・・・あれは?」
 一つの薪を囲んで、50人ぐらいの荒くれそうな男達が酒盛りしている。フェイトはその男達の方へ向かうと、彼らの元へ割って入った。
「おう、なんでぇ兄ちゃん」
「こんな時間に、俺達の所へ来る何ざぁ、よっぽどバカだぜぇこいつは」
 手近にある酒瓶の中身を飲みながら、酒臭い息で息巻いてくる男の言葉に、周囲の男達も下卑た笑い声を上げた。フェイトはそんな笑い声など聞こえていないかの様であった。やがて、一人の男が短剣をフェイトの前でちらつかせながら、先程と変わらぬ酒臭い息で脅し始めてきた。
「まあ、兄ちゃんの心づもりがそれなりにあるならば… 見逃してやってもいいんだぜぇ」
 フェイトは隣の男のその言葉に、ちらりと一度だけ視線を流した後、腰にぶら下げていた小さな袋を手渡した。その袋の中には、かなりの額の金貨がはいっていた。
「うひょー!こいつはすげえぜ」
「さて、兄ちゃん。逃がしてやっから、早く返っ・・・てってててててててぇ!」
 しっしっと手を振って追い払おうとしていた男の手が、突然宙を舞った。あまりの出来事に、現状を把握できなかったその男は、妙な奇声を上げた。
「お、俺の手がぁぁぁぁ!」
「このガキャ!調子に乗りやがって!」
「ぶっ殺してやる!」
 さすがに周りの男達も、獲物を片手にフェイトに襲いかかってきた。しかし、マリアは信じられないものを見ているかのようだった。フェイトの剣が一降りする度に、男達は次々と切り裂かれては血しぶきを吹き出し、断末魔の悲鳴をあげて倒れていった。最初は50人近くいた男達も、最後の辺りには3人ぐらいしか残っていなかった。
「ば、バケモンだ・・・こいつ」
「た、助けて・・」
「き、金貨は返す!だから、命だけは・・・」
 獲物を放りだし、これ以上やりあうつもりは無いと言うことを示した後、生き残った盗賊達は、命乞いを始めた。しかし、フェイトの口から信じられない言葉が出た。
「僕は、もっと殺したいんだ・・・この内に眠る力の暴走を押さえるためにも。日に日に押さえきれなってきた、この破壊紋章の力を静めるためにも・・・」
 フェイトはそういうと、手近にいた男の胸に剣を突き立てた。断末魔の悲鳴を上げて地面に倒れると、胸からあふれ出す血が地面を染めていった。
「や、やめてくれ!助けてくれ!」
「御願いだ!やめてくれぇ!」
 尚も命乞いをするが、既に狂気に走るフェイトの耳には届かず、再び剣が振り下ろされた。二人の男の首がその瞬間、宙を舞った。そして頭を失った男の首から、夥しい血しぶきが吹きあがった。
「っ!!」
 マリアは急激な吐き気に、思わず手を覆った。今まで見ていたフェイトは、自分の知っていたフェイトとはまるで別人で、命乞いをするものさえ容赦なく手に掛ける殺戮者であった。マリアは何とか吐き気を押さえると、彼の前に姿を現した。その姿は今まで以上に血塗られており、周囲が夥しい死体に囲まれている中でも、彼の口元は笑みを浮かべていた。
「フェイト!」
「マリア・・・見ていたんだね」
 驚きもしないフェイトのその瞳は、完全に濁りきっていた。マリアは変わり果てた彼の姿に涙し、そして同時に知ってしまった。彼の心は、もう破壊紋章によって破壊され尽くしてしまったのだと。
「どうして・・・どうしてこんな事を!」
「耐えきれなくなったんだ、この内に眠る力の衝動に」
 フェイトは微笑みながらそう呟いた。虚ろな瞳には、もうマリアの姿は映っていないのかも知れない。
「日に日に高まるディストラクションの力は、少しづつ少しづつ僕の心に囁いていった。もっと破壊を、もっと殺戮を、もっと滅亡を・・・と」
「フェイト・・・」
「そしていつしか、この力の導くままに表に出て、盗賊達を見つけた瞬間、僕の中の何かが弾け、再び気が付いたときには、辺り一面は盗賊達の死骸だった。今と同じようにね。それから毎日、こうして殺戮を行わなければ、この衝動は静まらなくなってきた。彼らを手に掛けるとき、得も言えぬ快感が全身を貫いていったんだ。そしてその快感をもう一度、もう一度って求める・・・」
 マリアは涙を止めることなく彼の話を聞いていた。追いつめられた彼の心を、少しでも気づいていれば、もしかしたらフェイトは殺戮者になることはなかったかも知れない。そう思うと、さらに涙が溢れてきた。
「このままでは、僕はみんなを・・・君をも手に掛けてしまうかも知れない・・」
 遠い目で自分を見つめるフェイトの口から、そんな言葉が出てきた。私は驚きのあまり声が出なかった。
「だから、そうなる前に僕を殺してくれ。でなければ、僕はこの場で君を殺してしまう・・・だから!」
「そんな・・・そんなこと」
「押さえきれないんだ!この衝動を!人がいれば、それだけで僕はその人を殺してしまう!」
「でも・・でも!」
 必死に彼に呼びかけるマリア。しかし、とうとう限界が来たのか、フェイトの表情が一変した。その顔は破壊と殺戮の狂気にゆがみきっていた。
「うああ・・ハ・・・ヤ・・・ク・・・」
 もはや言葉さえまともに話せなくなってきたフェイトは、ついにその剣をマリアに振り下ろそうとした。しかしその瞬間、

 パンッ

 彼の胸を一条の光が貫いていった。

「マ・・リア・・・」
「あああ・・・フェイト・・・フェイト!!」
 マリアの放ったフェイズガンは、間違いなく彼の心臓を貫いていた。止めどなく溢れる鮮血が周囲の大地を染めていく。マリアは彼の元に駆け寄ると、既に先程の狂気にゆがんだ表情はきえ、いつもの優しいフェイトの顔になっていた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
 自分の頭を抱きかかえながら、マリアはただそれだけを繰り返していた。しかし、フェイトは力無く首を横に振っていた。
「謝らな・・いで・・・こうな・・る事・を望ん・・・だのは、僕・・・なん・・だから」
「でも・・・でも・・・」
 フェイトはマリアの髪を撫でた。今まで何度も撫でていたその髪は、とても滑らかであった。その感触をしっかり覚えるかのように、何度も何度も撫でていたが、やがて彼の声は消え入りそうになり始めていた。最後の言葉をマリアに聞こえるよう、出来る限りの声を絞っていく。
「き、みが・・僕を止・・・めてくれ・・・たのな・・ら本望だ・・・ありが、とう」
 そしてフェイトは、その命さえも破壊紋章ディストラクションが生み出した破壊衝動によって奪われた。マリアは何時までも彼の亡骸を抱きしめ涙していた。そんな時間がいつまでも続いていくと思われたその時、後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「フェイトー!マリアー!」
「フェイトちゃーん!!いるなら返事してー!!」
「あ!あそこにいるの、マリアさんじゃないですか!」
 ソフィアが指さした方向には、何時までもフェイトを抱きしめるマリアの後ろ姿があった。
「おいマリア!フェイトは・・・・」
「そんな・・・」
「いやぁぁぁぁ!!フェイト!フェイト!!」
 ソフィアの大絶叫が響き渡る。しかし、マリアの耳にはそんな声など全く聞こえていなかった。やがてマリアは立ち上がると、先程もっていたフェイズガンを手に取ると、徐に全員に向けた。
「な、なにを!」
「正気かい、マリア!」
「勘違いしないで。これから起こることを邪魔しないで欲しいだけよ」
 虚ろな目で全員を見回すと、徐に先程の話しを始めた。
「フェイトはディストラクションのよって心を食いつぶされ、挙げ句の果てに殺戮者へとなってしまっていたわ。この忌むべき紋章は、決してその人間を救い得ないのよ」
 そこまでいうと、マリアは向けていた銃口をこめかみに当てた。
「馬鹿な真似は止めるんだ、マリア!」
 しかしマリアは首を横に振った。
「私もフェイトと同じく忌むべき紋章を持つ者。いつかフェイトと同じくこうして殺戮に走ってしまうか解らない。だから、そうなる前に彼の元へ行くわ・・・彼を絶対、一人にさせない!」

 パンッ

 そういって、マリアは引き金を引いた。一条の光がマリアの頭を貫き、マリアは地面に倒れ伏した。もはや、その瞳には何も写していなかった。
「なんで・・・どうして・・・マリアちゃんまでも・・・」
 スフレは訳が分からなかった。どうして世界の為に尽くしているものたちが、こんなに非業の死を遂げなければならないのか。クリフとネルは黙っていた。ソフィアは二人の死に涙していた。

 世界を創造主の策謀から護る為、二人に与えられたその力は、皮肉にも自我崩壊と後追い自殺という形で幕を閉じた。人が持つには過ぎた力は、何ももたらさず、ただ親しい者達に悲しみを残すだけであった。
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2008.03.11 22:20 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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