トワイライトの怠惰な図書室

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 スターオーシャン3フェイマリ小説。彼の居ない世界など、彼女にとっては何の価値もない。

届かぬ手、届かぬ想い

 何で… どうして… こうなってしまったの…

 頭の中を流れるのは、疑問の言葉だけ。今、目の前にある現実を否定したい感情と思考だけが、頭の中を流れていく。

 そう、自らの血で作った海の中に倒れる、最も大切な人を見たその時から…

「マリア、その…」
 呆然と、倒れるその人… フェイトの前に座り込むマリアを見て、さすがのネルも声をかけるのを躊ま躇っていたが、何時までもそうしている訳にはいかなかったので、どうにかその一言だけ声をかける。その言葉を聞いたマリアは、がばっと起き上がると、問答無用にネルの胸ぐらをつかんだ。その瞳には今までで最も危険な色を持っていた。ネルも思わずごくりと喉を鳴らした。
「いったいどうしてこんな事になったの! 説明して!!」
「それは…」
「言いなさい! 言わないなら、いくら貴女でも容赦しないわよ!」
 マリアの言葉は本気だろう。あの瞳に宿った怒りの色を見れば、誰だったそう思う。マリアが容赦しないといえば、間違いなく自分は明日の日の目を見ることが出来ないと言うことと同義だ。
「言うから、その手を離してくれないかい?」
 その言葉に、ようやく手を離したマリア。ネルも一つ息を吐くと、ぽつぽつと説明を始めた。

「先日から現れ始めたエクスキューショナー達が、頻繁に暴れ始めたのは知ってるだろう? その事で地方の貴族達が女王陛下への対応に不満を抱き始めたのさ。そして、いつまで経っても手を拱いている女王陛下に、とうとう貴族達が保身のために反乱を起こし始めようとした矢先に、フェイトはその情報をあたしから聞いて、それで…」
 そこでいったん言葉を句切った。そこから先は言わなくても解る。自然と涙が流れ始める。そう、彼は単身その反乱を鎮めに行ったのだ。今、この星だけではなく銀河全体で大変な危機が迫っているのだ。みんなが協力し合って解決しなくてはいけないのに、自分たちのことしか考えない貴族達に、フェイトはきっと怒りと言うよりは、失望を感じたのだろう。だから、そんな無益で馬鹿馬鹿しい反乱などを起こさせないために向かったのだ… たった一人で。
「なんて、馬鹿な事をしたのよ… フェイトは」
 元からフェイトは交渉事などは苦手だ。せめて自分に一言言ってくれれば良かったのに。
「フェイトはどうして一人で行ったの? せめて私だけでも話してくれれば…」
「あたしもそういったんだよ。マリアに相談したらって… だけど、フェイトはこういったのさ」
 倒れる彼を一度だけ見ると、ネルは苦悶とも言える表情を浮かべて言葉をつなげた。

「大丈夫ですよ。マリアにはいつも迷惑をかけてるから、たまには自分でやります。それに、危険な目に遭わせたくないんです、マリアは。ようやく想いを告げた相手だから。 …ってね」

 その言葉を聞いたとたん。流れていた涙は更に止めどなく流れ出し、再び地面に座り込んでしまった。もう届かない… この手も、この想いも… 先日、彼に想いを告げられた。本当に嬉しかった。だけど、今のこの状況と、素直になれない自分が邪魔して、すぐにその手と想いを取ることが出来なかった。「戦いが終わったら、返事をする」そんな在り来たりな逃げ口上でその場を取り繕った。彼は少しだけ悲しそうに微笑むと、それでもいいと言ってくれた。それが、こんな形で二度と返事が出来なくなってしまった。何が蒼の賢者だ… 自分は、最も大切なことが何も解っていない、一番の愚者だ。
「フェイト… フェイト… 私も貴方が大好きよ、愛してる… だからお願い、目を開けてよぉ」
 彼の遺体にすがり、止めどなく流れる涙を拭うこともせず彼に呼びかける。側に立つネルは、そんな
マリアをただただ静かに見守るしかなかった。

 それから数日後、マリアは女王陛下からシーハーツ正規軍の軍師に任命され、ネルやクリフ達を前線指揮官として軍を率い、反乱軍の制圧に向かった。その時のマリアの指揮は、苛烈極まるものであったと、正規軍の誰もがそう感じた。最小の負担で、最大の効果を上げることは変わりなかったが、今回の戦いでは、マリアは一切の降伏を認めず、貴族達に荷担した兵士達を軒並み殲滅させ、捕らえた貴族達も中心となった者達以外は、女子供も含めてその場で全て処刑した。その余りに惨い処罰に、流石のネルやクリフもマリアに改善するよう進言したが、その時のマリアの言葉は余りにも冷たいものだった。
「愛する人を失う事が、どれだけ苦痛かあいつらにも判らせてやっただけよ。世界に対して大して責任も取れない分際で、反乱なんて馬鹿な事を考えなければ、こんな事にはならなかったのではなくて?」
 普段のマリアからは、到底信じられないようなその言葉と冷たい視線に、二人はそれ以上何も言えなかった。しかし僅か数日で鎮圧し、首謀者の一族をシランドへ連行したマリアの処断は、まだ終わっていなかった。

「女王陛下、地方貴族の反乱無事に鎮圧しました」
「ご苦労様でした。概ねのことは、先だって報告を聞いています」
 女王はそういうと、頭を垂れるマリアの前まで歩み、彼女の手を取る。
「フェイトさんの事、元をたどれば私の不徳の致すところ。本当に申し訳ありません」
「…その言葉を頂けたこと、フェイトも喜んでいることと思います」
 マリアはそういうと、謁見の間を出て、地下の牢へと向かった。まだ、最後の真実を自分は知らない。彼の最後の瞬間を、まだ知らない。

「ひいいっ! お、おまえは!」
 牢に閉じこめられていた中心人物の貴族達は、自分を見るなり牢の壁に張り付くぐらいの勢いで後ずさった。
「これから言う質問に答えなさい。黙秘は許さないわよ」
 冷たくそう言い放つと、マリアは自分が一番知りたいことを問いただした。すなわち、フェイトが貴族達に会って、何を話し、そしてどうしてあんな結末を迎えたのかを。
「あ、あの男は襲いかかってくるあの化け物達を、自分たちだけで何とかすると言いおった! そんな事、信じられるわけないだろう! 一軍がかかっても倒せない、あの化け物を数人の者達だけで何とかするなど!」
「だからといって、彼をどうして殺したの!」
 強い怒気を含んだ声に、さらに貴族達は悲鳴を上げる。
「し、仕方ないだろう! こちらの事を知られてしまった以上、あの男を帰せば、反乱が成功しな…ぶびゃら!」
 最後の言葉を言い終える前に、その貴族の頭は吹き飛んだ。そう、彼女の持つ銃によって。
「ひええ! た、助けてくれ!」
「もう女王陛下に刃向かったりしない! だから、命だけは!」
 床に額をこすりつけ、必死に懇願する貴族達の声。しかし、今のマリアにはそんな言葉などまったく聞こえていない。
「最低な奴らね。おまえ達は… 同じ空気を吸っていると思うだけで吐き気がする。こんな奴らにフェイトは… フェイトはぁ!!」
 こみ上げてくる怒りを止めるものは何もない。そして再び放たれる銃弾。青ざめ、嘆願する貴族達の胸や頭に、間違いなく打ち込まれていく。
「ぎゃあ!」
「ひげっ!」
「ぐばっ!」
 いくつかの悲鳴と銃弾の音が響き渡ると、再び沈黙が支配した。マリアは一つ息を吐くと、そのまま牢を後にした。向かう先は一つしかない。


「ねえ、フェイト。これからどうしたらいい?」
 かつて二人だけで話をしたシランド城下の外れに、彼の墓が建てられた。今でもそこには多くの花が献花されていた。それだけ、彼はここシランドの英雄であった証なのかも知れない。
「貴方がいない今、私は何をしたらいいか判らないのよ」
 自虐的にそういうと、何も答えてくれない彼の墓を見やった。やることはある。世界を作った現存する創造主を倒す。しかし、それをした所で彼はもうここにはいない。彼の居ない世界で、そんな事をした所で意味があるのか?今の自分が出す答えは、Noしかない。その考えに、マリアはふっと一つ微笑むと、さも当たり前と思えるような自然な動きで、銃口をこめかみに当てた。
「だから、今から貴方の側に行って、あの時言えなかった答えを言うわね。私は、貴方が居ないと駄目だから」

 パンッ

「こ…れで… や、っと… この手と、お、もいを… 彼、に…届け、ら…」
 献花された花束の中に、マリアは倒れ込んだ。舞い散る花びらの中、マリアの表情は全てを得たかの様に満足げに微笑んでいた。

 … 届かぬ手、届かぬ想いを彼に届けるため …
 
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2008.03.11 22:12 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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