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トワイライトの怠惰な図書室

ここは、トワイライトが書きつづった小説をメインに載せていくblogです。無断転用やお持ち帰り等は全て厳禁です!

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 ファイアーエムブレム聖魔の光石 カイル×ルーテSS第16弾。悔やむ賢者を救うのは、心許した騎士のみ。

ミス

「エフラム王子、宜しいですか?」
 エフラムがラーチェルと会話をしているところに、カイルを伴ってルーテが現れた。
「ああ、どうした」
「敵の掃討は終了しました。念のため船倉なども調べてみましたが、もう魔族はいないようです」
「そうか」
 簡素に頷くエフラム。
「今からこの船を火矢と魔法で焼き、海に沈めます。お戻り下さい」
「解った。ラーチェル、君はどうする? 自分の船に戻るか」
 その言葉に、ラーチェルは首を横に振った。
「いいえ。私たちも貴方の船に同乗させていただきますわ。あちらの船はベスロン港に戻る様、話しておきます」
 そういって、ラーチェルは船長に二、三話すと踵を返して戻ってきた。
「これで大丈夫ですわ」
 そういって歩き出したエフラムの後を付いていくが、不意に甲板の歪みに足を取られ、小さく悲鳴を上げる。
「きゃっ…」
「っと、大丈夫か?」
 慌てて気づいたエフラムが彼女を支えるが、ラーチェルは苦痛に顔をゆがめる。
「あ、足を捻ってしまったみたいですわ」
 座り込み、捻った場所を押さえながら答える。
「歩けるか?」
 その言葉にラーチェルは小さく首を振る。
「…ごめんなさい。すぐには無理ですわ」
 そういうラーチェルに、エフラムは困った様に首をかしげるが、やがて一つ頷くと、彼女の背と膝の下に手を添える。
「エフラム?」
 何を、と言おうとしたラーチェルだが、次の行動に驚きの声を上げた。
「ちょっと我慢してくれよ」
 そういって、エフラムはそのまま彼女をお姫様だっこで抱きかかえたのである。
「!? な… な… 何をなさいますの! 貴方は!」
「おい、暴れるなよ。危ないだろう?」
 腕の中で真っ赤になってもがくラーチェルを、どうにかなだめようとするエフラム。
「歩けないのなら仕方ないだろう?」
「だ、だからといっていきなりこんな事…(こ、これではまるで恋人同士みたいですわ)」
 ラーチェルは内心こんな事を考えていたが、どうやらエフラムは、彼女をお姫様だっこしていることに、特に何かを感じることはない様だ。その事に余計ラーチェルは怒りと羞恥で真っ赤になる。
「俺たちの船に付いたら、衛生兵に足の具合を見て貰おう。癒しの杖は自分自身を癒すことは出来ないんだろう?」
 そういって、エフラムはラーチェルを抱きかかえながら、ナターシャの所へ彼女を連れて行った。その間、幾多の兵士がその光景を目の当たりにし、ラーチェルは真っ赤になった顔を隠す様に顔を背け、黙っているしかなかった。

「…どうやらエフラム王子で最後の様ですね。ネイミー、いきますよ」
 兵士の引き上げを確認していたルーテは、エフラム王子の姿を確認すると、隣にいたネイミーに声をかける。ネイミーは頷くと、同じく手近の兵士達に合図を送る。
「火矢構え! 打て!」
「炎よ」
 火矢とファイアーの魔法が敵の船を炎で包み、数分後には船が完全に燃え上がり、海の中に沈んでいった。その光景を見て、満足に頷く。
「これでいいでしょう。後は今回の被害がどれくらいかで、作戦を立て直す必要があるかも知れません。カイル、軍議が必要と思われます」
「解った。伝令! 軍師の指示で各部隊長・副官に船の会議室に集まる様通達!」
「はっ!」
 手近の兵士はその声を聞くと、急ぎ各部隊長へ走っていった。ルーテとカイル、ネイミーも会議室へ向かっていった。

「しかし、ネイミーが部隊を率い、指揮する姿は優秀でした」
 会議室にいち早く付いた三人は、こんな話しをルーテが切り出してきた。
「そ、そうかな…」
 照れるネイミーに、カイルも頷きながら言葉をつなぐ。
「うむ。これでタイゼル港の戦いも、側にギリアム殿がいなくても大丈夫だろう」
「居てくれた方が安心なんですけど…」
「しかし、両翼の片方を指揮しなくてはならないのですから、今回の様にお願いします」
「が、がんばります…」
 自信なく頷くネイミーに、カイルとルーテは苦笑を浮かべる。戦闘中はあれほど的確に、かつ果敢に指揮をしていた彼女だが、平時では本来の泣き虫が表に出てしまう様である。
「そろってるか?」
 次に現れたのはエフラム王子とゼト将軍、それにラーチェルであった。
「いえ、まだです」
「そうか。じゃあ、先に三人に紹介しておくか」
 その言葉に、ラーチェルが一歩前に出る。
「ロストン王国聖王女、ラーチェルと申します。お見知りおきを」
 優雅な一礼に、三人もそれぞれ礼をする。
「第三騎馬部隊部隊長カイルと申します、ラーチェル様」
 カイルが王族に対する敬意を込めて、騎士らしい口調で自己を述べる。
「弓兵隊部隊長のネイミーです。宜しくお願いします」
 ネイミーはごくふつうの挨拶を交わす。
「カイルの副官兼軍師のルーテです」
 最後にルーテが淡々と挨拶を述べる。ラーチェルはルーテを見て驚いていた。
「まあ! では、先ほどの戦いの指揮は貴女ですの」
「はい」
 その返事と同時に、エフラムの声が響く。
「彼女は信頼できる優秀な軍師だ。ラーチェルも今後、彼女の指示に従って行動して貰うことになる」
「ええ、解りましたわ」
 そうこうしている間に、全員が会議室に顔をそろえた。しかし、ヴァネッサの姿が見えず、代わりにターナ王女の横にはクーガーの姿があった。
「ターナ王女、ヴァネッサはどうしたのですか?」
 あの真面目なヴァネッサが遅れてくるなど考えられない。
「それが、さっきの戦いで負傷しちゃって… 当面、私の副官はクーガーに努めて貰うわ」
「そうですか。解りました」
「宜しく頼む」
 クーガーの声に、一同が頷く。その後ラーチェルの紹介が再び行われ、軍議が始まった。
「それでは、各部隊の被害報告をお願いします。ゼト将軍」
「我が第一騎馬部隊は負傷者のみで、戦死者はありません」
 ルーテが報告を聞くと、手元の用紙にメモしていく。
「フォルデ将軍」
「第二騎馬部隊も同じく負傷者のみ。死者無し」
「デュッセル将軍」
「…半個小隊が戦死。負傷者多数となっている」
「…被害甚大ですね」
 ルーテの声に、無言で頷く。
「ガルシア殿」
「歩兵隊も同じく半個小隊がやられたが、負傷者に関しては比較的少なくて済んだ」
「解りました。ネイミー」
「弓兵隊は全員無事です。負傷者も今の所居ません」
「ターナ王女」
「天馬騎士部隊は負傷者のみ。死者は居ないよ」
 全員の報告をまとめると、ルーテの顔が渋り始めた。
「第四騎馬部隊と歩兵部隊が半個小隊戦死。しかも負傷者多数…痛いですね」
 幾分か考えた後、今度はナターシャに顔を向ける。
「ナターシャ、負傷兵の状況は?」
 その声に、ゼト将軍の隣に控えていたナターシャが、控えめに答える。
「現在、衛生兵総出で治療に当たってますが、タイゼル港到着の時点では、6割の方が動けるようになれば良い方かと思われます」
「6割… 厳しいですね。後軍の兵士を全て補充しても、兵力は恐らく当初の二割減です。敵は万全の体制でタイゼル港に布陣していると考えると」
 ルーテがタイゼル港の見取り図を見つめながら、懸命に頭を捻る。他の面子は黙ってそれを見ていた。
「…デュッセル将軍。この状況、本来の戦術に基づけば、撤退が定石ですか?」
 突然話を振られたデュッセル将軍は、その言葉にうむ、と声をあげる。
「戦に置いて、全軍の二割を失った時点で戦闘の継続は不可能と判断し、撤退するのが定石なのは間違いない」
「ルーテ、まさか…」
 カイルは慌てた声を上げるが、ルーテは再び首を振った。
「いえ、あくまで確認しただけです。ここで撤退すれば、再びベスロン港で迎え撃たなくてはならなくなります。それだけは避けなくては」
 そういってきつく瞳を閉じ、心の中で状況を整理する。
(撤退できない以上、第四騎馬部隊を前線に送るのは不可能。歩兵部隊も支援が精一杯となれば…)
 ルーテの瞳が開かれ、結論が上げられる。
「やはり、当初の予定通りに第四騎馬部隊を前線に投入するのは不可能ですね。歩兵部隊も先ほどの状況で負傷者が少ないとはいえ、半個小隊を失っているので、支援が手一杯と考えられます」
 その言葉に、全員が頷く。
「その為、第四騎馬部隊は船と港、衛生兵の警護をお願いします。歩兵部隊は前線には出ず、あくまで支援に徹してください」
 その言葉に、フォルデが声を上げる。
「デュッセル将軍に港の警護を任せるって事は… まさか、ルーテ嬢」
 フォルデの言わんとしていることに、ルーテは無言で頷く。
「はい。左翼のもう一つの部隊は、カイル率いる第三騎馬部隊にお願いします。もちろん私も同行します」
 その言葉に、カイルは無言で頷く。全員がその言葉に驚いた。
「待ってくれ! では全体の指揮はどうするんだ?」
「そうだよルーテ。軍師が前線に出るなんて…」
 口々にそういうが、ルーテは片手を上げて制する。
「今回のみ、全体の指揮は… デュッセル将軍、お願いできますか?」
「む… 儂にか?」
「はい。デュッセル将軍であれば、問題はないと考えています」
「…エフラム王子、どう思われる?」
 ルーテの提案に、デュッセル将軍は指揮官であるエフラムに訪ねる。
「ルーテがそこまでいうなら、問題ないと思う。どのみち、これ以外の策は無さそうだしな」
「…解った。では今回の戦いのみ、全軍の指揮をとろう」
「みなさんもそれで構いませんか?」
 ルーテの声に、全員は無言で頷く。
「よし、じゃあそれでいこう。各部隊、動けるものは負傷兵の手当などを手伝ってやるように。ナターシャ、その際には遠慮無く指示を飛ばして貰って構わない」
「はい、ありがとうございます」
「では、解散とします。デュッセル将軍、作戦の詰めをしたいので、残っていただけますか?」
「承知」
 全員が部屋を出た後、エフラムとルーテ、デュッセルは部屋に残り、作戦の詰めを打ち合わせていた。カイルは先に部隊に戻り、率先して負傷兵の治療の手伝いに当たった。

「カイル」
「ルーテ、話は終わったか?」
 負傷兵の手当が一段落し、甲板で一息ついていた所にルーテが上がってきた。
「はい。概ねは当初の作戦通りになりますが、状況によってデュッセル将軍の方で、都度指示をして貰うことになりました」
「デュッセル将軍ならば、我々より遙かに幾多の戦場を経験している。状況に応じて適切な指示を出して貰えるだろう」
「はい。その点においては信頼できます」
 カイルの横に腰を下ろし、海を眺める。真っ暗な海に、光源は月と星明かりだけ。波の音が静かに鳴り響いていた。
「今回の件も、私のミスですね」
「ん?」
 いつもより伏し目がちに海を眺めていたルーテは、呟くようにそういった。
「海上移動中におそってくるという可能性は、十二分に考慮できました。それを考えなかったのは、私のミスです」
「ルーテ…」
 常に自信に満ちあふれているルーテを、こんなにもか細く感じてしまったカイルは、そっと彼女の肩を抱き寄せた。ルーテも特に気にすることもなくその流れに身を任せ、彼の方に頭を添える。
「君はとても優秀だが、一つだけ悪い癖がある」
「なんでしょうか?」
「何でも自分の責任にしてしまうことだ。確かに君は軍師として、作戦の責任を持つ立場にある。しかし、完璧な人間などどこにも居ない。誰だったミスはする。むしろ、君が作戦を立ててくれなければ、我々がここにいることはなかった」
「……」
 ルーテは黙って聞いていた。カイルはそんなルーテに一つ微笑むと、最後の言葉をつないだ。
「私は君のパートナーだ。君の責任は私の責任、そうだろう?」
「カイル…」
「だから、一人で何でも背負わないで欲しい。全てを一緒に背負いたい」
「ありがとうございます、カイル… そうですね、私たちはパートナーでした。もっとしっかりしなくてはいけませんね」
 そういって、カイルにだけ見せる微笑みを浮かべる。彼女の微笑みといつもの強い眼差しに、カイルは安心したように息を吐く。
「さあ、今日はもう休もう… ああ、そうだ。今回は我々二人で一部屋となってしまった。許して欲しい」
 先ほどフォルデから士官用の部屋数が圧倒的に足りないので、今回はルーテと一緒に部屋を使って欲しいと話しがあった。女性と同じ部屋というのは抵抗があったが、「婚約者同士だろ?」という言葉を聞き、置かれている状況が状況故に仕方なく頷いた。実は気を利かせていると言うことには気づいていない。
「構いません」
「では、いこうか」
 そういって、船内の士官に宛がわれた部屋へ向かっていった。既に他の人たちは休んでいるのか、他の部屋からは明かりがない。
「ふう」
「お疲れのようですね、カイル」
 共に部屋に入り、備え付けの椅子に腰掛けると、思わずため息がでた。
「ああ、さすがに船上戦は初めてだったからな。ある意味、貴重な体験と言えば体験か」
「船上戦は退却出来ませんから、極力避けないといけないですね」
「まあ、そうだな」
 そういって、今回はルーテが紅茶をいれ、カップを差し出した。
「ああ、すまない。私がやろうと思ったのだが」
「いえ。しかし、貴方のいれてくれる紅茶はとても美味しいです。如何に優秀な私でもこうはいきません。何かコツがあるのですか?」
 互いにお茶を飲みながら、不思議そうにそう訪ねるルーテに、カイルは小さく首を振った。
「いや、特にコツと言うことはしていないが。まあ、私が幼少の頃、父や母が紅茶好きだったので、いつしか淹れ方を教えて貰ったというのはあるが」
「なるほど、経験ですか」
「そうなるのかな?」
「…そういえば、カイルは木彫りの人形などを集めるのが趣味だと言ってましたね。他には何かあるのですか?」
 珍しく色々と訪ねてくるルーテに、カイルは少し驚いていたが、別段困るような事ではないので、普通に答えていった。
「そうだな。後は…チェスだろうか?」
「チェス? あの白と黒の駒を交互に動かして遊ぶという」
「ああ、そうだ。ルーテは知っているのか?」
「本で読んだことがありますが、実際に遊んだ経験はないですね」
「ほう。では、今度機会があったら教えてあげよう。君ならきっとすぐ旨くなる」
「ありがとうございます」
 そういって、二人は残っていた紅茶を飲み干した。
「では、休むか。君はそこのベットを使ってくれ。私は床で寝るから」
 そういって床に寝転がろうとしたが、その前にルーテの声が響く。
「カイル、それでは疲れを取ることが出来ません」
「しかし、他に方法が…」
 そう言い終える前に、ルーテの手がカイルに添えられる。
「一緒に寝ればよいと思います。幸い、このベットであれば、二人が一緒に寝ても問題ない大きさです」
「る、ルーテ! しかし、それは…」
「?」
 いくら婚約をしたとはいえ、まさか女性と一緒のベットで寝るなどと言うことは、いくら何でも問題がある。しかし、それを話したところで、ルーテならきっと「構いません」というのは目に見えているし、なにより先ほどルーテが言っていたことは一理ある。彼女はやはり、こういった事に疎いなと思った。常に合理的かつ論理的に考えるが故に、男女の関係を初めとした、感情的な思考が苦手なようだ。
「…解った、そうしよう」
 そういって、カイルはベットに潜り込んだ。ルーテもその後カイルの隣で横になる。流石に意識しなくてもしてしまうこの状況に、カイルの眠気は吹っ飛びそうだった。そんな事を考えていると、ふいにルーテの手が胸に添えられ、顔を寄せられる。
「る、ルーテ…」
「貴方は暖かいですね。こうしていると、よく眠れそうです」
「う、うむ…そうか」
「はい、お休み… なさい…」
 すうすう すぐにルーテから寝息が上がった。しかし、カイルは添えられた手と顔、それに彼女が隣で寝ていると言うことに、眠ることさえままならなかったとか。
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2007.07.17 02:12 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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