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トワイライトの怠惰な図書室

ここは、トワイライトが書きつづった小説をメインに載せていくblogです。無断転用やお持ち帰り等は全て厳禁です!

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 ファイアーエムブレム聖魔の光石SS第13弾。激戦の合間の休暇は、何よりも代え難いもの。

一時の休暇

 ベスロン港で三日が経ち、ようやく軽傷者の治療が終わった。重傷者も次々とリグバルド要塞へ運ばれ、フレリアから派遣された治療部隊によって引き続き治癒を受けることになった。
「食料品や武器などの搬入はどうですか?」
 ルーテが、先ほどから帳票を片手に数を数えている輸送部隊長に声をかける。既に軍師として周知されているルーテの姿に、部隊長は敬礼で答える。
「は。食料品や医療品などに関しては搬入が終わりました。現在、武器の搬入を行っております」
「では、明後日の進軍までには間に合いそうですね」
「それは問題有りません」
「解りました。引き続きお願いします」
「はっ!」
 ルーテはそういって、港の方に歩いていった。しばらく歩いていると、後ろから声がかけられる。
「ルーテ」
「カイル。もう休んでいなくて良いのですか?」
 この三日間、二人とも休む暇無く働いていた。ルーテは重軽傷者達に治療の杖を振るい、手が空けば行軍準備や軍議などに参加していた。カイルも医療品の搬入や食料品の調達、はたまた軍議や重傷者の輸送指揮と大忙しであった。三日目の今日、ようやく一段落し、カイルは先ほどまで天幕で睡眠を取っており、先に目を覚ましたルーテは輸送部隊の状況を確認しに来たのである。
「うむ。しかし、出かけるのであれば声をかけて欲しかったな」
「すみません。良く休んでいたので、声をかけなかったのです」
「気遣い感謝する。しかし、君に何かあっては困るからな。次からは寝ていても構わないので、声をかけてほしい」
「はい、そのようにします。所で朝食は済ませたのですか?」
「いや、まだだが」
「では、この先にあるカフェで朝食にしましょう。私もまだ済ませていないのです」
 そういって、ルーテはカイルの腕に自分の腕を絡ませた。
「こういう事をするのも、恋人にとって当たり前だと書いてありました」
「う、うむ…」
 二人だけの時ならともかく、周囲の目があるときはやはり気恥ずかしさが出てしまう。等のルーテはさして気にしていないようだが。
「おやぁ、カイル。ずいぶん仲良さげじゃないか」
 そんな事を考えていると、後ろから一番見られたくなかった人物の声が響く。嫌な汗を額に流しながらも振り返ると、そこにいたのは予想を裏切らなかった親友の姿であった。
「フォ、フォルデ…」
「なんだ、ルーテ嬢と腕なんか組んじゃって…やっぱりこの前の事はそういう関係だったからか」
 にやにやと笑いながらいうフォルデの言葉に、カイルはどう答えるべきか悩んでいた。しかし、この現状を見られてしまったからには、どう言い訳しても仕方がないと諦め、本当のことを話そうとしたとき、意外にもルーテの声が先に上がった。
「この前の事とは、何のことですか?」
「君とカイルが、夜中にキスしてたことだよ」
 その言葉に、やっぱり見られていたかとショックを受けたカイルとは対照的に、ルーテの声はいつもの抑揚のない声であった。
「ああ、あれですか。あれは挨拶ですよ」
「挨拶? キスが」
「ええ。私たちはパートナーですから、いついかなる時でも互いのことを理解していなくては、戦闘にも支障をきたします。故に互いを理解すべく交わした挨拶です」
「ふーん… 挨拶ねぇ」
 まったく納得していないフォルデに、カイルはもう諦めたようにルーテに声をかける。
「ルーテ、これ以上隠していても仕方がない。フォルデにだけは、私たちの関係を話しておこうと思うが、構わないだろうか?」
「…そうですね。彼は貴方の親友ですし、彼はこういった事に対するカンはかなり良いと判断します」
 まるで相手の心理状態を計るかのような言葉だが、とりあえずその件はひとまず置いておくとして、フォルデはカイルの言葉を待った。
「フォルデ。私はリグバルド要塞で叙勲式を受ける前、彼女に婚約を申し入れ、彼女もそれを承諾してくれた。この戦いが終わったら、彼女を母や妹に紹介するつもりだ」
「やっぱり… なんだよ、もっと早く言ってくれればいいのに」
「こんな事態だからな。私事の件は一番後回しにしたいと思っていた。まずはこの戦いを終わらせることこそ第一だからな」
「ルーテ嬢、こんな堅いことを言う奴だがいいのかい? 君とのことは一番後回しって言ってるぜ?」
 フォルデの的を得た言葉に、カイルは青ざめた。確かにそう解釈されても仕方のない言葉だった。カイルはそっとルーテをのぞき見るが、彼女はいつもの抑揚のない言葉で答えた。
「カイルの言うことは至極当然だと思います。彼も貴方も軍人ですし、私も軍師という立場にいます。それにこの事態が落ち着かない限り、結婚など出来ないと思いますが?」
 ルーテの答えに、フォルデはくっくっと小さく笑うと、カイルの肩を一つたたく。
「…なるほど、君の言うとおりだ。カイル、良かったな理解のある恋人で」
「フォルデ」
「とりあえず二人のことは俺の心の中にだけ締まっておくよ。最も、そんな姿を見せてたんじゃ、誰でも疑うと思うぜ」
 そういうと、フォルデ一つ手を挙げてその場を離れていった。
「そんな姿とはどういう姿でしょうか?」
「…おそらく、こうして腕を組んでいることではないだろうか?」
「ああ、なるほど。恋人らしくしているのですから、そう見られても仕方有りませんね」
 そういうと、ルーテはあっさり彼の腕を放す。
「これからは、誰も見ていない場所でのみ、恋人として貴方に接することにします」
「うむ… そうだな、そうしよう」
 残念そうに言うカイルの声に、ルーテはカイルの顔をのぞき込む。
「残念ですか?」
「正直に言えば、な」
 その言葉に、ルーテは一つ微笑みながら答えた。
「私もです」

 それから二人は港に面したカフェに入り、朝食を頼んだ。店には他にも幾人かの兵士と市民がいるだけで、それほど騒がしい雰囲気はなかった。出てきた朝食は、戦時中とはいえそれなりに食料品に関しては備蓄があったのか、比較的まともであった。
「あれだけの戦闘の後ですから、食料に関してはもっと酷いかと思っていましたが、問題ないようですね」
「うむ。港町だけ有って、港の倉庫に備蓄があるのだろう。逃げた敵将も、食料庫に火を放つような馬鹿なまねだけはしなかったようだ」
「今後食糧を含め生活物資に関しては、グラドからではなくフレリアからの輸送に頼ることになりますね。幸いフレリアは麦や米などの穀物は大陸一の生産量を誇りますし、まもなく収穫の時期に入ります。この戦争が終わるまでは大丈夫だと思います」
「そうだな。だが、早く終わらせるに越したことはない。それが我々の仕事だからな」
「はい」
 そういって二人は手早く朝食を取り、食後の紅茶を飲みながら海を眺めていると、ふいにルーテの言葉が響いた。
「そういえば、私は村から余り出たことがないので、実際に海を見るのは初めてです」
「そうか。ルネスは確かに海に面した土地がないからな。私はフレリアへ任務で出向いたときに何度か見たことはあったが」
「本を読んで知った海と、こうして実際見る海というのは、やはり感じ方が違いますね」
「そうだな。知識は確かに大切だが、こうして実際に見て・触れて・感じる事はもっと大きな意味を持つと思う」
「そうですね… カイル、良かったら浜辺に行きませんか?」
「私は構わないが」
「もっと海というものを見てみたいです。行きましょう」
 そういうと、早足で浜辺に向かって歩き出した。カイルもテーブルに勘定を置くと、ルーテの後を追った。

「浜辺に来ると、先ほどの場所よりもっと潮風を感じます」
 ルーテはそういうと、手早くマントと靴を脱ぎ、スカートを少し持ち上げて打ち寄せる波に足を入れた。
「冷たいですね!」
「余り先に行っては危ないぞ」
「はい、解りました!」
 そう言いながらも、楽しげにはしゃぐルーテの姿に、カイルは初めて見る彼女のそんな姿に微笑んでいた。
「…こうしてのんびりと彼女と二人で過ごせる日を、早く実現したいな」
 小さくつぶやいたカイルの言葉に、ルーテは振り向きながら訪ねた。
「カイル、何か言いましたか?」
「いや、たまにはこうして息抜きをしないと、身が持たないと思ってな」
「そうですね」
 戦時下でのつかの間の休息。次はいつこんな時間をもてるのだろうかと、カイルははしゃぐルーテを見ながらぼんやり考えていた。
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2007.07.13 05:59 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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