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トワイライトの怠惰な図書室

ここは、トワイライトが書きつづった小説をメインに載せていくblogです。無断転用やお持ち帰り等は全て厳禁です!

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 ファイアーエムブレム聖魔の光石SS第12弾。魔を支配する異端の聖職者。

異端の司祭

 ベスロン港を制圧したルネス軍であったが、前回のように無傷とは行かず、港一体は野戦病院と化していた。杖を使える者は軒並みかり出され、懸命な治療が行われていた。ルーテも朝早くから杖を振るい、ゼトやカイルもまた傷薬を配ったり、水や包帯などを運び込む手伝いをしていた。
「ゼト様、カイル様。申し訳ありません。この様な事をして頂いて」
 ナターシャが杖を振るう傍ら、せわしなく動く二人に声をかける。ゼトは一つ微笑んで持ち込んだ傷薬の袋を脇におろす。
「いえ、構いません。これはエフラム王子の命令でもありますから。傷薬はここに置いておきます」
「ありがとうございます」
「ルーテ、水を運んできたがどこへおけばいい?」
「あちらにお願いします。ああ、それから包帯などもあるだけ持ってきて頂けますか?」
「了解した。いくぞ」
 無傷であったカイルの部隊は総動員で荷物の運び込みを行っていた。ベスロン港はグラドの管轄故に当初食料や医療品などの入手は困難かと思われていたが、デュッセル将軍のおかげで現在は申し分ない量を確保できた。

 初日の夜、ようやく負傷兵達の治療に目処が経った所で軍議が開かれた。
「みんな、今回は激戦であったがどうにか港を制圧できた。ありがとう」
 エフラム王子が全員に頭を下げる。全員はそれに対して敬礼を持って答える。
「さて、今回の軍議に先だって、みんなに紹介する人がいる。入ってくれ」
 そういって入ってきたのは、黒曜石のデュッセルと、あの竜騎士であった。竜騎士の姿を見たカイルとルーテはそれぞれ剣と魔導書を構え、即座に臨戦態勢を取る。
「貴方は…」
「お前は!」
「またれよ、御両名! クーガーはもう敵ではない! 剣を納められよ」
 デュッセル将軍の声に、視線だけエフラム王子に向けると、エフラム王子は無言で頷いた。それを確認し、二人は武器を納める。
「彼、クーガーもデュッセル将軍と同じく我々に味方してくれることになった。二人には色々思うところがあると思うが、ここは俺とデュッセルに免じてくれるか」
「はっ…」
「解りました」
「さて、今回はこの二人にも軍議に参加して貰い、現在のグラド情勢を説明して貰う。デュッセルとクーガーだ」
 エフラム王子の紹介に、二人は軽く会釈する。それからゼト将軍によって順番に部隊長の紹介していく。
「第一騎馬隊部隊長兼エフラム様の副官を務めるゼトです、宜しく」
「第二騎馬隊部隊長フォルデ並びに副官のフランツ。宜しく頼みます」
「弓兵隊部隊長のネイミーです。こちらはギリアムさんです。宜しくお願いします」
「歩兵部隊部隊長のガルシアだ。デュッセル殿の高名は聞いております」
「天馬騎士団部隊長のターナです。隣の子は副官のヴァネッサです」
 次々と挨拶が交わされ、最後に二人の番となった。
「第三騎馬隊部隊長のカイルです。先ほどはどうも」
「カイルの副官兼軍師を務めますルーテです。宜しくお願いします」
「…宜しく」
 さすがにクーガーと二人は気まずい挨拶を交わしていた。デュッセル将軍はルーテが軍師であるということに驚いていた。
「そなたが今回のルネス軍を指揮した者か。あのセライナを相手に、兵力が少ない上にも関わらず、互角以上の戦いをするとは、若いが相当な切れ者とお見受けする」
 デュッセル将軍の賞賛に、ルーテは表情を変えずにいつもの口癖で答える。
「私、優秀ですから」
「ふむ…そなたがいなければ、ルネス軍はリグバルド要塞を越えることはなかったのかも知れんな」
「さて、全員の紹介が済んだところで、現状の報告を頼む」
「は。今回の戦いでは前回のように無傷とはいかず、第一・第二騎馬部隊併せて二割の兵を失いました。歩兵部隊や天馬騎士団も一割を失っております。第三騎馬隊と弓兵部隊は負傷兵多数なれど、戦死者はいません」
「そうか、かなりの被害だな… さすが、セライナ将軍の指揮だったというべきか」
 深くため息をはき、現状を認識するエフラム王子。
「ナターシャ、負傷兵達の状況は?」
 衛生兵のまとめ役をしているナターシャも、今回の軍議に参加していた。
「はい。重傷者・軽傷者併せて全軍の半数近くに上ります。全員が動けるようになるのに、およそ一月以上はかかるかと…」
「一月か…さすがにそれだけの期間を空けては、敵が再度攻め込んでくる可能性があるな」
「軽傷者の治療だけならばどれくらいになる?」
 ゼトの声に、隣にいるナターシャが再度答える。
「軽傷者だけならば、三日もあればどうにか…」
「三日…食料や医療品の準備もいれると、出港に最短で五日か、ルーテ?」
 エフラム王子の声に、ルーテは無言で頷く。
「よし。五日なら敵も再度攻め込んでくることもないだろう。デュッセル、グラドの現状を説明してくれ。なぜヴィガルドはルネスや他の国に攻め込んできた?」
 エフラム王子の言葉に、デュッセル将軍は言いづらそうに話し出した。
「知っての通り、陛下は穏健帝と言われるほど民を思い、また全ての国の平和を考えている方だった。しかし、陛下が今回の戦いを下されたとき、その前後で変わったことと言えば、帝国の闇魔導師たちが魔石という聖石を上回る力を持つ石を完成させたと言うことがあった」
「魔石?」
「儂は武人故魔術のたぐいはよく分からぬが、そう呼んでいた」
「その石はいまどこにある?」
「リオン皇子が常に持っておられる」
「魔石か…聖石を上回る力というのは、いったい」
「ルーテは解るか?」
 カイルが隣で興味深そうに話を聞いていたルーテに問うが、首を横に振るだけであった。
「私が読んだ文献の中に、魔石というものはありません」
「そうか…しかし、エフラム様。現状は魔石の存在よりも、タイゼル港の攻略を優先して考えるべきかと思われます」
「まったくだな。さてルーテ嬢、次はどう攻めるんだい?」
 フォルデの声に、ルーテはタイゼル港の見取り図を広げる。
「今回はこちらから港に上陸するので、港の防衛は必至です。船を失っては退路を失います。その上、タイゼル港は停泊所から左右二つの道で玄関口へ向かう造りになっています」
 指揮棒で見取り図をなぞりながら説明していく。他のメンバーは黙って話を聞いている。
「そこで今回は、軍を二つに分け進軍を開始します。右翼はエフラム王子とゼト将軍、左翼はフォルデと今回より新しく加わったデュッセル将軍の第四騎馬隊でお願いします。歩兵隊と弓兵隊は今回二つに分け、ガルシア殿、歩兵隊副官、ネイミー、ギリアム殿の四部隊編成でそれぞれ右翼左翼について貰います」
「今回はギリアムさんじゃなく、私が直接指揮するのか…不安だなぁ」
 ネイミーの不安そうなぼやきを聞きながら、さらに詳しく進軍の説明をしていく。
「天馬騎士団には、今回と同じく遊撃部隊として、各部隊の支援をお願いします。港の防衛は、私とカイルの部隊で行います。今回の本陣は、船上という事になります」
「ルーテ、クーガーさんには私たちと来て貰うと言うことでいいのかな?」
 ターナ王女の声に、ルーテの視線がクーガーに向けられる。
「クーガー、貴方も私たちと来ると言うことになった以上、グラド軍と戦ってくれると認識して良いのですね?」
 ルーテの挑戦的な発言に、クーガーの目がすっと細められる。
「…俺が裏切ると?」
「貴方なら、先ほどまで命をかけて戦っていた相手を、すぐ味方になったからと言って、信用しますか?」
 ルーテの声に続き、クーガーはくっくっと小さく笑う。
「ま、たしかにあんたの言うとおりだ。俺だってさっきまで敵だった相手を、いきなり味方になったからって信用はしないさ。だが、今回の戦争はグラド内ではデュッセル将軍の方に義がある。デュッセル将軍がここにいる限り、少なくとも逃げるつもりはない」
「…では、天馬騎士団に所属し、ターナ王女と共に遊撃隊に加わってください。ターナ王女、彼の行動に目を光らせておいて下さい」
「そんな言い方しなくても…」
 ターナ王女の抗議の声が上がる前に、クーガーの手がターナ王女の肩をたたく。
「姫、ここはルーテの言い分が正しい。俺はさっきまでルーテと戦ってたんだから、信じろって言う方が無理だ」
「クーガーさん… ごめんなさい、ルーテは言い方がきついけど、悪い子じゃないのよ」
「解ってるよ。ああ、それとさんづけはいらない。部下をさん付けするのはおかしいだろ?」
「うん。宜しくねクーガー」
 一段落した後、ルーテは今度デュッセル将軍に視線を向ける。
「デュッセル将軍」
「…儂もすぐに信じてもらえるとは思っておらぬよ、ルーテ殿」
 先を見据えたように言葉をつなぐ。その発言に、エフラム王子の声が響く。
「ルーテ、デュッセルは信じられる。俺が保証する」
「…お二人の事は、タイゼル港での戦いで真偽を見極めさせて頂きます。それと、先ほどの進軍方針に、何か問題点はありますか?」
 その言葉を受けて、デュッセル将軍はもう一度見取り図におかれた駒を見回り、首を振る。
「いや、備えが解らない以上、これが一番手堅いと思う」
「では、この進軍方針で行きます。宜しいですか、エフラム王子?」
「ああ。みんな、次の進軍は五日後だ。それまでに各自部隊の負傷兵の手当や補給などを済ませてくれ。では、解散」

「ルーテ、今回はあの二人をずいぶんと疑っていたようだが?」
 カイルに宛がわれた天幕で、また遅めの夕食を二人で取っているとき、カイルが軍議の時に感じた事を口にした。
「概ねは先ほど発言したとおりですが、それ以上に私や貴方は殺されるかも知れなかった相手です。十二分に警戒をしなくては」
「そうか… 確かにそうかも知れない」
 そういってグラスの中身を一気に飲み干す。ルーテもそれにならって同じく飲み干す。
「明日からまた、全部隊の治療などを私たちは手伝うことになりますね」
「うむ。我々の部隊が一番被害が少なかったからな」
「カイル殿、ルーテ殿」
 呼ばれた声に顔を上げると、そこには先ほど話題になっていた二人の姿があった。二人の手にはそれぞれワインボトルが握られていた。
「デュッセル殿、クーガー殿」
「二人は俺たちに色々考える所があるだろうと思ってな。良ければ一杯やりながらその辺を話せたらと思ってよ」
「気遣い申し訳ない。ルーテ、構わないか?」
「はい。貴方が良いというのなら、私は構いません」
 そういって四人で酒を酌み交わし始めた。最初の乾杯でグラスの涼しげな音が響く。
「しかし、ルーテ殿の戦術眼はなかなかのもの。以前からルネス軍で作戦立案に関わっていたのですかな?」
 デュッセルがワインをルーテのグラスに注ぎながら訪ねる。
「いえ、軍に関わることになったのは、エイリーク王女がザッハの小森に来た時からです。それまでは村で魔道の研究をしていましたので」
「ほう。すると、戦術などはどうやって学んだのですかな?」
「戦術や戦略、用兵などはエフラム王子にリグバルド要塞攻略の作戦を話す少し前に、本を読んで学びました。魔族との戦いの参考になるのではないかと思いまして」
「なんと、それだけでここまでの策を考えるとは…まさしく鬼才ですな、ルーテ殿は」
「はい。私、優秀ですから」
「うーむ… この様な時でなければ、是非ともグラドに来ていただき、高説を賜りたいですな」
 感嘆しながら一気にグラスを空ける。ルーテも先ほどのお返しにとワインを注ぐ。
「あの魔力にこの知謀。なるほど、セライナ将軍も手を焼くわけだ、これじゃ」
「はい。我が軍自慢の軍師です、彼女は」
 ルーテに変わり、カイルが答える。いつもより口が回るのは、きっと飲み過ぎているのと、自分の恋人が褒められているからだと思われる。
「しかし、私の知識はあくまで本のものなので、今後良ければ作戦立案時に、実戦経験豊富なデュッセル将軍にも助言を請いたいと思います」
「うむ、儂で良ければ力になろう」
「ありがとうございます」
「カイルも宜しく頼むな」
 クーガーが空になっていたカイルのグラスにワインを注ぐ。
「承知した、クーガー殿」
「クーガーでいいって、そんな堅苦しい呼び方をしなくてもさ」
 そういって、互いにワインを飲み干した。
「さて、そろそろお開きにするか。また良かったら4人で飲みたいな」
「はい」
「うむ、では失礼する」
 そういって、デュッセルとクーガーは宛がわれた天幕に向かって歩いていった。
「そんなに悪い人ではなさそうですね」
 ルーテがつぶやいた言葉に、カイルは肩をすくめた。
「さっきまでは敵・味方の関係だったからな。今まで戦ってきた敵の兵士や将の中にも、こういった事態でなければ友好を深められたものもいたかも知れないな」
「そうですね」
「さあ、我々も休もうか…」
「おやすみなさい、カイル」
 互いの頬にキスを交わし、二人は深い眠りに落ちていった。

「ふう、ここまで逃げればとりあえず大丈夫か…」
 辺りが薄気味悪い霧で覆われた海面に、先ほどベスロン港から逃げ出したベルナの姿があった。ヴァルダーから港を任されていたが、形勢不利と見るや多くの兵士を残して船で脱出したのだ。辺りには数人の兵士しか残っていない。
「しかし、ベルナ様。これからどうするのですか?」
「グラドには戻れんな…とりあえず、カルチノにでも逃げるか」
 そういって舵を取ろうとしたとき、船首にいた兵士の声が響く。
「ベルナ様! 船が一隻こちらに向かってきます!」
「何!? 追っ手か…」
 ベルナも向かってくる船を見ると、その船は遠くから見ても既にぼろぼろで、人が乗っている気配がしない。
「なんだ、あの船は…」
 やがて霧の中でもはっきり見えるくらい接近してきた謎の船を改めて見ると、その船に乗っていたのは人なきもの、魔族の集団であった。
「ま、魔族だ!」
「う、うわぁぁぁ!」
 慌てて距離を離そうと舵を取るが、既に敵の船から渡し板が付けられ、大量の魔族が咆吼をあげて乗り込んできた。
「ぎゃあああ!」
「ひいい!」
「くそ… こんな所で俺は死ぬのか…」
 反撃もままならず、ベルナと同行した兵士達は魔族達によって殺された。
「ひっひっひ… 裏切り者には相応しい死に様よ」
 敵の船から人の声が響く。そこにいたのは、深紅の法衣をまとった司祭が一人。グラド六将の一人、血碧石のアーヴであった。
「それにしても忌々しいエフラムめ…まあよい。タイゼル港に渡る前に、こやつらによって海の藻屑となるがよいわ!ひっひっひっひっ…」
 狂気の笑い声を上げ、アーヴは虚空に消えた。
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2007.07.13 05:57 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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