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トワイライトの怠惰な図書室

ここは、トワイライトが書きつづった小説をメインに載せていくblogです。無断転用やお持ち帰り等は全て厳禁です!

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ファイアーエムブレム聖魔の光石 カイル×ルーテSS第七弾。全てを彼の者達は分かち合う。

身も心も

 リグバルド要塞内は、勝利の宴で賑わっていた。難攻不落と言われた要塞を、わずか一日で陥落させた事は、兵士達を大いに沸かせ、士気も大きく跳ね上がった。兵士達が口々にエフラム王子の名を上げながら、勝利の美酒に酔いしれていた。
「しかし、こんな短期間に落とせるとはな!」
「さすがはエフラム王子! こりゃ、グラド本城もあっという間だな!」

 しかし、エフラム王子達は勝利の美酒に酔う暇もなく、敗残兵の処理や今後の行動予定などをゼトと話し合っていた。
「今回はルーテの策が功を奏し、殆ど被害が出ることなく陥落できたが、次はどういう手で来るか解らない以上、余り時間をかけずに進軍する方がいいな」
「はい。敗残兵に関してはフレリアに任せ、我々はベスロン港からタイゼル港へ渡り、グラド本城を目指すことになります」
 ゼトが書類を手に、広げられた地図を指さしていた。そんな時、控えめにノックする音が響く。
「入れ」
「失礼します。カイル、ただいま戻りました」
「ご苦労… ん? ルーテ殿はどうした」
 最大の功労者の姿がないことに、ゼトは不審に思った。
「は。少し調べ物をしてから来るとのことです」
「そうか。しかし、今回はルーテのおかげで被害が最小限に抑えられ、なおかつこれほどの短時間で陥落することができた。これもカイル、お前が彼女を見いだしてくれたおかげだな」
「はっ! ありがとうございます」
 規律に厳しいカイルらしく、規則正しく敬礼を返す。
「失礼します」
 そんなやりとりの中、ルーテが静かに入室してきた。手にはいくつかの書類や本が握られていた。
「ルーテ。今回の最大の功労者は君だ、ありがとう」
 エフラム王子はそういうと、右手を差し出した。ルーテも特に警戒することなく握手を返す。
「私、優秀ですから」
「まったくだ。これからも宜しく頼む」
「はい、お任せ下さい」
「時にルーテ殿。その書類などは何か?」
 ゼトの言葉にルーテは書類を机の上に広げると、そこに書いてあったのは、ベスロン港やタイゼル港の見取り図だった。
「敵の要塞なら、グラド領内の港や施設などの見取り図があるのではないかと思い、先ほど資料室で探してきました。今後の作戦の参考になると思います」
「これはありがたい。ベスロン港やタイゼル港には民間人も多数いる。出来るだけ戦闘は避けたい。この見取り図を元に、最短で港だけを制圧し、早々に出航の準備に取りかかるべきだな」
「それが最善だと思います。最も、敵が民間人を無視して市街戦を前提に備えをしていた場合、それは無理だと判断すべきではありますが」
 ルーテの言葉に、エフラム王子やゼトがうなずく。
「また今回も、何か策はあるか?」
「ベスロン港は港という特性上、敵が後退するには船しか有りません。その為、やはり港を制圧し、その上で必要が有れば掃討戦を行うべきです。今回は策など必要ないかと」
「そうか… では、準備の期間を考えて、明後日にはベスロン港へ向けて進軍する。ゼト、補給物資や食料などの手配を頼む」
「はっ!」
 ゼトは一つ礼を返すと、そのまま早足で部屋を後にした。
「さて… ルーテ、カイル。さっきも言ったが、二人が今回の最大の功労者だ」
「恐れながらエフラム様。ルーテが功労者であることは言わずもがなですが、私は何もしておりません」
 恐縮しながらカイルが答えるが、エフラム王子は首を横に振る。
「違うな。お前がルーテの才能を見いださなければ、リグバルド要塞攻略の策は出なかったし、もっと時間がかかり、犠牲も出ていた。ルーテも一介の魔術師でしかなかった。違うか?」
「それは、そうかもしれませんが… しかし」
「カイル」
 言いよどむカイルに、ルーテはいつもの抑揚のない声で呼びかける。
「貴方は優秀です。優秀な私を見いだしたのですから。だから、貴方も今回の作戦の功労者であることは間違い有りません」
「ルーテ…」
「そういう事だ。ルーテには今後も軍師として軍議に参加して貰うし、お前にも彼女の護衛を今後も頼むつもりだ。彼女を失うことは、戦力に劣る我々に取って大きな損失になる。お前が彼女の護衛をすることは、最優先事項と考えておけ」
「はっ!」
 カイルの返事にうなずくと、エフラム王子は懐から何かを取り出し、カイルの手に渡した。渡されたものは勲章と指輪であった。
「これは… まさか、エフラム様!」
「これが今回の報奨だ。同時に、二人には今以上に活躍して貰うと言うことでもある」
「なるほど。これが導きの指輪というものですか」
 ルーテはまじまじと指輪を見ながらつぶやいた。
「知っていたか、ルーテ」
「私、優秀ですから。そしてこの勲章は、確か上級騎士へ叙勲する事を認めるものですね」
「本来叙勲式は国王と大司祭が正式な場で執り行うものだが、今はそんな状況ではないからな。明日、簡単ではあるがここで叙勲式を行う。二人とも、明日までにどの称号を叙勲するか考えておいてくれ」
 エフラム王子はそういうと、部屋を出てまだまだ盛り上がっている兵士達の酒宴に向かっていった。残された二人は、何ともいえない雰囲気のまま、とりあえず部屋を出た。

「どうしたのですか、カイル?」
 隣を歩いていたルーテは、先ほどから何かを考え込んでいたカイルに話しかけた。
「うむ… 先ほどの叙勲のことなのだが」
「カイルはどの叙勲を受けるつもりなのですか?」
 その言葉に、カイルはルーテの叙勲が気になった。
「ルーテはどうするのだ? 確か、高位魔術師の称号は、賢者か魔法騎士であったと思うが」
「はい。私はより上位の魔道を目指すため、賢者の称号を受けるつもりです。賢者になれば、優秀な私がより優秀になれると思います」
 迷うことなくそう答えるルーテが、カイルはうらやましかった。騎士にとって、上級騎士の叙勲を受けることはこれ以上ない名誉である。しかし、自分自身の今までの活躍を振り返ってみても、際だった功績を挙げた覚えはない。先ほどルーテを見いだしたことは功績だとエフラム王子は言っていたが、騎士として戦場以外の場所であげた功績で叙勲を受けることに、いささか抵抗があった。
「カイル?」
「あ、ああすまない。そうか、賢者か。君らしいな」
「それで、カイルはどうするのですか?」
 再度の質問に、再び頭を悩ませた。
「うむ…私は今回の叙勲を辞退しようと思っている」
「なぜですか?」
 驚きの様子もなく、ルーテは聞き返す。
「私は騎士だ。戦場で功績を挙げた事で叙勲を受けるならまだしも、今回は違う形で叙勲を受けることになった。だから、辞退し私よりもふさわしい人物に叙勲をして貰うつもりだ」
「なら、私も辞退します」
 きっぱりそういったルーテの言葉に、カイルは驚いた。
「何を言うんだ。君は叙勲を受けるにふさわしい功績を今回挙げたではないか」
「貴方が騎士として、戦場であげた功績で叙勲を受けるべきだというのなら、私は魔術師として、魔術の功績で叙勲を受けるのが筋だと思います。今回の策略で功績を認められ、叙勲を受けるのは魔術師として違うと判断します。それに…」
「それに?」
 少しだけ言いよどむ感じのルーテに、カイルは場違いながらも言いよどむことが彼女にもあるんだなと思った。
「私は貴方のパートナーです。私のあげた功績は、パートナーである貴方の功績でもあります。しかし、貴方が功績を挙げていないというならば、それは私にとっても同じです」
「ルーテ…」
「よって、私も今回の叙勲を辞退します。貴方が叙勲するその時まで、私も高位魔術師への叙勲は受けません」
 ルーテのその言葉に、カイルは自分の心の狭さを感じた。ルーテは自分をちゃんとパートナーとして見てくれている。自分もそう思っていたが、彼女はもっと大きな意味で自分をパートナーとして見ていたのだ。そんな彼女を見て、カイルは思わずルーテを抱きしめていた。ルーテは突然のことに、あのとき以来収まっていた顔の火照りと心拍数の上昇を感じていた。
「カ、カイル… あの、その」
「私は小さい人間だな。君の言葉を聞いて、そのことを実感した」
 ルーテはカイルの腕の中で、彼の言葉を黙って聞いていた。
「カイル…」
「私も君の隣にいるにふさわしいパートナーである為に、今回の叙勲を受ける。エフラム王子の信頼と、君を守るためのもっと大きな力を得るためにも」
 そこで言葉を句切ると、カイルはルーテの抱擁を解こうとしたが、ルーテはカイルの胸に顔を埋めたまま動かなかった。
「ルーテ?」
「こうしていると、どうしてか解りませんけど、とても落ち着くのです。出来れば、もう少しこのままで居させてください」
「…これからも、宜しく頼む」
 カイルの小さなつぶやきに、ルーテは少しだけ顔を上げると、小さくうなずいた。カイルは彼女の左手を取り、薬指に先ほどの導きの指輪をはめた。それから部屋に戻り、二人だけで今日の戦勝を祝いはじめた。しかし、あのときの状況を見ていたものが居たことが、明日大きな反響を生むことになる。

「フォルデの兄貴、あれって」
「ああ。あの奥手があそこまでやったということは、これは間違いないな」
 二人は今回最大の功労者がいつまでも現れないため、探していたところで先ほどの場面に出くわした。最も物陰から見ていただけなので、何を言っているかまでは聞き取れなかったが、カイルがルーテを抱きしめ、やがて彼女に指輪をはめたところはばっちり見ていた。
「なかなか変わった彼女だが、カイルにはお似合いかもなぁ」
 そういうと、二人は静かに酒宴会場に戻っていった。最高の酒の肴を手にして。
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2007.07.11 06:35 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(0) |












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