トワイライトの怠惰な図書室

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スターオーシャン3フェイマリ小説第二弾。勉強家なマリアさんと、心配するフェイト君。まだまだ仲間以上恋人未満です
書を棄てよ、街へ出よう

 マリアは乱読家である。暇さえあれば自室や休憩中でも本を読んでいる。その本の中身は実に多種多様な範囲に及んでおり、政治学・経済学・兵法、はたまた心理学などとクォークのリーダーとして、日々自ら努力をしているのが解る。
 今日も今日で日中の戦闘が終わり、全員がシランドの宿に戻った後も、彼女は夕食を済ませた後、一人お茶の用意を済ませて部屋へと向かった。
「何かあったら声をかけて」
「ああ。だけど読書もほどほどにしておけよ。夕べもずいぶんと遅くまで読んでたそうじゃねぇか」
 酒杯を傾けながらも、一言付け加えるクリフに、マリアは一つ頷くと部屋に向かった。

「さてと、昨日はどこまで読んでいたかしら…」
 お茶を一口含んだ後、おもむろに本を開くマリア。ちなみに同室のスフレやソフィアにとって、文字ばかりの本は睡眠薬にしか成らず、ネルやミラージュも本を読まないわけではないが、マリアほど読書を好むわけでもない。男性陣にしては誰も読まないのが現状だったりする。
「…なるほど、野戦での側面攻撃において、最も友好的な方法は遠距離からの砲撃と。でも、艦隊戦術では果たしてどうかしら…」
 気になるページの内容を、ノートに細かく記載していく。しばらくそんな時間が過ぎていったとき、部屋のドアが叩かれる。
「ん? 空いてるわよ」
「お邪魔するよ、マリア」
 そういって入ってきたのは、自分と同じ髪色を持つ少年、フェイトであった。フェイトはマリアの周囲に積まれた本の山に、うわっという顔をした。
「凄い本の量だね… これ、全部読んだのかい?」
「いえ、まだ半分ぐらいかしら。昨日、半分ぐらいの本をシランド城へ返しに行ったけど」
 半分返したとはいえ、残っている本の量も半端ではない。ゆうに百冊はあるんじゃないだろうか。宿屋の部屋も当面自分たちで貸し切りになっているとはいえ、掃除の時などは大変そうだ。
「さっきクリフも言ってたけど、あんまり遅くまで読んでいると疲れも抜けないよ」
「あら、心配してくれるの?」
 いたずらっぽく笑いながらそういうマリアに、フェイトは一つため息を吐く。
「当たり前だろ。大切な仲間なんだから」
 その言葉に、ほんの少しだけ心が痛むマリア。確かに自分とフェイトの関係は仲間でしかない。自分はスクリーンに写された彼を見ては、昔からそれ以上の関係になりたいとずーっと考えてきたが、彼はまだ自分にそれ以上の感情を持ってないだろう。
「…リア、マリア!」
「えっ! あ、何かしら…」
 そんな事をぼーっと考えているとき、再び彼の声で引き戻される。
「本当に大丈夫? やっぱり疲れてるんだから、今日は早く休んだ方が良いよ」
「ええ、ありがとう… でも、もう少しだけ…」
 そういって再び閉じた本に視線を移そうとしたとき、ふいに彼の手が自分の手をつかんだ。
「え、ちょっと…」
「やすまないなら、ちょっと出かけよう」
 そういうと、彼は無理矢理自分を立たせ、外へと向かった。

「フェイト、もう部屋に戻ったりしないから放して」
 その言葉に、フェイトは繋いでいた手を放した。すんなり放された手を少しだけ名残惜しそうに見つめる。
「それで、どこにいくのよ? もう遅い時間だから、余り遠くに離れるとみんなが心配するわ」
 しかし、フェイトは何も言わずに自分の前を歩いていく。仕方なくその後をついて行くと、ふいに彼は立ち止まった。そこは、シランドの入り口であるムーンリットの橋であった。
「ここ?」
「ほら、あれを見て欲しかったんだよ」
 そういって彼が示した先にあったのは、満天の星空と月であった。地球のように汚れた空ではないこの星から見る夜空は、まさしく自然の芸術であった。
「わぁ…」
 マリアもそんな星空を見て、子供のような無邪気な笑顔で見ていた。そんなマリアの表情を、フェイトは穏やかな笑顔で見ていた。
「書を棄てよ、街に出よう」
「えっ?」
 一時、空を眺めていたフェイトは、隣で未だに眺めるマリアに優しく語りかける。
「本から学べる知識も大切だと思うけど… それ以上に、世界から学べることはもっと沢山あるんだと、僕は思う…父さんの受け売りだけどね」
「受け売り?」
 マリアのその言葉に、フェイトは小さく頷く。
「昔、父さんの息子と言うことでずいぶんと周囲から比較されてた。それに負けないようにと勉強ばっかりしてた時、父さんがやっぱり僕を外に連れ出したんだ」
 マリアは黙って話を聞いている。彼の過去はずいぶんと調べたけど、それはあくまでデータベースに載っているような内容ばかりで、日常というものは余り知らない。自分がソフィアに抱く劣等感の一つであったりする。
「そして近くの公園で、同じように星空を見せてくれた。そして君に今話した事を教えてくれた…「書を棄てよ、街へ出よう」ってね」
 その言葉が何より自分の中に染みこんでいく。クォークのリーダーとして全員の期待に応えなくてはいけないと重圧が、いつしか本からの知識を得ると言うことしか考えなくなっていた。だけど、こうして星空を見ていると、世界は自分にもっともっと大切なことを教えてくれる気がする。
「ありがとう、フェイト」
 その言葉に、フェイトは振り向き彼女の笑顔を見ると、思わず見取れてしまった。月の光に照らされた彼女の笑顔は、本当に綺麗な笑顔だと、フェイトは思った。
「? どうしたの、フェイト」
 不思議そうな顔で自分を見るフェイトに声をかけると、彼は赤くなった顔を見られないように視線を反らした。
「あ、いや…なんでもないよ」
「? 変なフェイト」
 ふふっと小さく笑うその声さえも、今のフェイトには心拍数を上げる材料になってしまっている。
「さ、さあ。そろそろ宿に戻ろう」
「ええ」
 帰り際、マリアは誰も周囲にいないことを確認すると、彼の腕に自分の腕を絡めた。
「えっ!」
「さ、帰りましょうフェイト」
「う、うん」
 フェイトも真っ赤であったが、マリアも負けじと顔が真っ赤であった。

 それからというもの、マリアの乱読ぶりは少しだけ改善され、代わりに夜二人で星空を見に行くようになったとか。
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2006.11.11 07:28 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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