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トワイライトの怠惰な図書室

ここは、トワイライトが書きつづった小説をメインに載せていくblogです。無断転用やお持ち帰り等は全て厳禁です!

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スターオーシャン3フェイマリ小説。最後に奏でる曲は、絶望というものの終焉。

禁じられた最終楽章

 シランド城の礼拝堂に、美しきパイプオルガンの音色が響き渡る。普段は礼拝などに興味さえ無い人たちでさえ、この音色に惹かれて礼拝堂に集まってきていた。音色は元より、何より全員が視線を向けるのは、奏者である世界を救う英雄の一人、銀河最高の英知を持つと言われる蒼き髪の少女。
 しかし、その奏者の心中は穏やかではなかった。普段はもっと余裕を持って奏でる旋律も、今日は激しさを感じる。第二章から第三楽章へと向かう際、マリアの頭には義母から教えられた一つの言葉が浮かんでいた。

「お母さん、どうして最後の曲を弾かないの?」
 義母は第三楽章でいつも曲を止めていた。第三楽章は実は最終楽章の様な締めくくりをする為に、マリアもその後の章があるという事を知らなかった。マリアは幼いながらも、その事を教えてくれた義母にそう訪ねた。その言葉を聞いた義母は、少し寂しげな笑顔を向け、マリアを抱きしめた。
「それはね、最後の曲は決して弾いては行けないの。この曲を弾く時は、お別れの時だから」
「お別れ?」
「そうよ。大好きな人とお別れする時に弾く曲なの。だから弾けないの」
「じゃあ、お母さんは一度も弾いた事無いの?」
「ええ。だからマリアにも聞かせてあげられないの。マリアの事を愛してるから」
「うん!」
 義母の胸に強く抱かれ、嬉しそうにマリアは笑っていた。しかし、皮肉にもその後アールディオンによる攻撃で義父が戦死し、マリアはその曲を義母から聴く事になった。たった一度だけ、深く胸に刻み込まれた、決して奏でてはいけない最終楽章「終焉の刻」を。

「最終楽章は禁じられた章。だけど、今弾かなくていつ弾くのよ…」
 音色にかき消されてしまいそうな程か細い声でそう呟きながらも、いよいよ第三楽章もラストに向かっていた。ムーンベースで知った驚愕の真実。0と1で作られた架空の世界、創造主の実在、そして何よりもマリアの心に傷を付けたのは、フェイトと自分に同じ血が流れているという事。あの日以来、もう何もかもが嫌になっていた。世界を救うなんて言う大義名分も、突き詰めれば彼と一緒にいる為の口実に過ぎなかった。しかし、これで決定的な事実を突きつけられた。今頃彼の幼なじみは、舌なめずりをして私に向いていた彼の心を、自分に向ける段取りをしているに違いない。認めたくなかったけど、もうどうしようもない事実に、マリアは全てをぶつける様に演奏を続けていた。
「…さようなら、フェイト。ただ一人愛した人」
 そういって、遂に彼女は禁断の最終楽章を演奏し始めた。誰もがここで終わりだと思っていただけに、この曲が流れ始めた時、多くの観客が足音や咳払い、あげくには息を吸う音さえ止めてこの曲に聴き入った。美しくも悲しい、全てを拒絶するかの様な旋律。観客は元より、奏者であるマリアさえも涙が頬を伝い初めていた。ただ一人、この曲を聴いていて得もいえぬ不安に駆られている人物が観客の中にいた。そう、彼女のただ一人の想い人が。
「なんで、こんな悲しい曲を弾くんだ… マリア」
 音楽に疎いと思っている自分でさえ、この曲を聴いただけで涙が止まらない。そして曲が終焉に向かうにつれ、先程から感じていた不安が加速的に高まっていく。そしてクライマックスと共に、マリアの声が高らかに礼拝堂に響き渡る。
「今ここに、終焉の刻を!」
 その声と共に最後の楽節が響き渡る。曲が収まると同時に、怒濤の如く拍手喝采がわき起こる。マリアは観客に振り返ると、深く頭を下げてそれに答えた。そして観客の中に、想い人の姿をみかけると、彼女は足早にその場を立ち去った。

「はぁ… はぁ… まさか、あそこにフェイトがいたなんて」
 無我夢中で城内を走りたどり着いた先は、皮肉にも彼と最初に出会った場所、白露の庭園であった。マリアは荒い息を沈める為に、手すりを背にして座り込んだ。
「でも、これで良かった… この後に言おうとしてたんだから…」
「何を、言おうとしてたんだい?」
 自分以外の声が聞こえた事に、マリアはおもわず振り返った。そこには、想い人の姿があった。
「フェイト! どうして」
「君が僕を見た後、急に走り出したから気になってね」
 屈託無く笑う彼の笑顔が、今の自分には辛かった。しかし、マリアはそれをわざと見ない様に顔を反らすと、先程の曲の意味を彼に話し始めた。
「最後に弾いたあの章の曲の意味、あなたは知ってる?」
「いや… 初めて聞いた。第三楽章で終わりかと思ってたから」
「ホントは第四楽章、つまり今日初めて弾いた曲が最終楽章なのよ。そして、最終楽章の名前は、終焉の刻…」
「え…」
 驚いた彼の声に、マリアは反らしていた顔を向け、真っ直ぐに彼を見つめた。
「あの章を弾く時は、終わりやお別れを意味する時なの。そしてその曲を今日私は弾いた。この意味、解る?」
「まさか、僕たちから別れるっていうんじゃ…」
 その言葉に、マリアは静かに首を横に振った。
「違うわ。私がお別れするのは、あなたよフェイト」
「なっ」
 そういうと、マリアは後ろを向いて言葉を繋いでいく。再び涙が頬を伝っていく。本当は別れなど言いたくない、何時までも一緒にいたいという気持ちが心を支配している。しかしその気持ちとは裏腹に、言葉は残酷な意味を吐いていく。
「ムーンベースで真実を知ってしまった。今更だけど知らない方が良かったと思う事があるわ。だけど、その事実を知ってしまった今、あなたと一緒にいる事も、あなたを愛する事も出来ない」
「なんで、そんな事言うんだ!」
 強くその言葉を否定しようとフェイトは叫ぶが、マリアの声はあくまでも静かだった。
「あなたと私には、同じ血が流れている。近親同士の恋愛が、どれだけ侮蔑の目で見られるか、あなたなら解るでしょう?」
 その言葉に、フェイトは言葉が出なかった。尚もマリアの言葉は彼を追い詰めていく。
「私だけならまだいい。だけど、あなたまでも侮蔑の目で見られる事が私には耐えられない。だから、さようなら…」
 そういうと、マリアは彼の横を通り過ぎる様に立ち去ろうとしたが、急に後ろからフェイトに抱き締められた。マリアはその事にさして驚きはせず、静かに拒否の言葉を告げる。
「離して、フェイト」
「いやだ」
「フェイト、お願い。離して」
「いやだ、絶対離さない」
 尚も強くフェイトはマリアを抱きしめる。マリアもだんだんと悲しみが心を支配していく。
「そんなに抱きしめられたら、あなたを忘れる事が出来ないじゃない」
「忘れなくていい。僕には君しか居ないんだから」
 フェイトのその言葉に、マリアは再び収まった涙が零れ初め、彼の胸を濡らしていく。
「でも、でも…私は」
「まだ、本当に自分達が兄妹だなんていう証拠が無いじゃないか。それに喩えそうだとしても、僕は君を、マリア・トレイターという女の子を愛したんだ。これは絶対に間違いない真実じゃないか」
「私だって、私だってあなたを兄だなんて思いたくないし、思えない。私が愛したのは、兄としてのフェイトではなく、フェイト・ラインゴットという人を愛したんだから」
 二人は強く互いを抱きしめ、自然に顔を寄せ合いキスを交わす。何度も何度も、自分達が感じた想いが間違いではないと確かめ合う様に。

「今日弾いた終焉の刻、それは兄妹かも知れないという事実に対する終わりの意味で弾いたのかも知れないわね」
 既に満天の星が天空を覆う中、二人は寄り添いあいながらその星空をみていた。
「マリア」
「これからは、絶対にあなたと別れ様なんて考えない。たとえどんな答えであろうとも」
 二人は再び互いを見つめ合うと、もう幾度と無く繰り返してきたキスをした。愛を確かめ合うかの様な極上の愛情が込められたキス。この気持ちがある限り、自分達は大丈夫だと、心の底からその事を感じていた。
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2007.07.01 17:15 | 二次小説 | トラックバック(-) | コメント(0) |












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